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B面トライアングル<5>

B面トライアングル<5>【初めてのライブハウス2~屋上~】

しばらくして私は楽屋から出た通路にある、正面の入口が見える扉を少しだけ開いて外の様子を眺めていた。だんだんと日が落ちてきて、夕方という時間が実感できるくらいの暗さになってきた。今は9月の終わり。あと数日で10月になろうとしている。

そろそろライブを聴きにに来る人たちが集まってきているようだ。

なぜか私はここで肩身の狭い思いをしている。理由は分かっいて、でもどうすることもできないから複雑な気持ちになる。理由は、私がここにいてもいいと言える年齢じゃないこと。藤崎は実力でこの場にいるけれど、私にはそういう特別な理由がない。

そして今、こういう所に親から怒られることもなく居てしまうことができるけれど、周りの人たちは違和感なく許される状態でここにいる。中学生の私から見たら、高校生はどう考えてもオトナっぽい。大学生なんて、完全にオトナだ。

お化粧して、かっこいい服を着て、スタイルも良くて、オトナに近い人達ばかりのこの空間に、私だけぜんぜん足りてないものがあるから、イライラしてしまう。早くオトナになりたいと思ってもこればかりはどんな人にも平等に訪れる時の流れをいうものを待つしか方法がないから悔しい。こんな分かり切ったことでイライラする自分にも腹が立つ。

新しい世界に憧れてここに連れてきてもらったけれど、不相応な子供として楽屋にかくまわれているようで、なんとも言えない気持ちになった。そして彰人さんに対してもそういうコンプレックスのような感情がある。私は勝手に彰人さんにドキドキしてしまうのに、彰人さんは私を子供だと思って勝手に可愛がる。どんなに「この人に恋してもムダ」と自分に言い聞かせても、感情はついていかない。事実、かまわれればイライラしつつも心臓は踊るように跳ね上がる。どこかで嬉しいと思ってしまうからなのだろうと認めることさえもイラ立ちの一つだ。堂々と恋する資格さえない子供なのが悔しい。勝負ができるような位置に立っていない自分が悲しすぎる。

演奏が始まる前からテンションが落ちてしまった私は、一人トボトボと誰にも会わないでいられるような場所を探した。疲れる藤崎兄弟には会いたくなかったし、それに楽屋には吉貴くんたちのバンド意外にも出演するバンドのメンバーの人達がいる。そんなところで「妹です。」なんて吉貴くんや彰人さんに言われたくないと思った。

いろいろ考えながら歩いているといつの間にか裏口のようなところにたどり着いた。私はそこにあった安っぽい木の扉を開けた。すると目の前に、まるでツタの葉っぱみたいに建物にくっついているような小さな階段があった。

おもちゃの階段みたいだ…。

私はその階段を登って屋上に上がった。辺りはすっかり暗くなっている。ふと下を見ると赤や黒や黄色やピンクと、派手な服を着た人たちが建物の入口付近にたむろっているのが見えた。マーブルチョコが蠢いているように思えて、少しだけいいものを発見した気がした。私がそんなことを思いながら周りの景色を眺めていると、下のほうから私を呼ぶ声がする。

「かずみーかずみー。かずみぃー。」

彰人さんだ。また、彰人さんだ…。

登ってきた階段へ戻って、何段か降り、楽屋の裏口の扉の方を確認すると彰人さんがいる。ここで返事をしてしまったら疲れることは分かり切ったことだ。それなのに私は無視できないことを自分で知っている。たぶん返事をしてしまうだろう自分をどうやって許せばいいのかを考えつつも、口を開いた。

「…彰人さん?ナンデスカ…。」

敬語をやめろと言われたのに、なかなか切り替えできない。そう思いながら階段をあと2段ゆっくり降りた。

「そんなとこにいたのかよ。何やってんの?探したよ。」

「え?なんで…?」

「…ん?ホラ、変なお兄さんたちに絡まれてないかなーとかさ。」

一番困った変なお兄さんは彰人さんだと思う。そう思ったら少し可笑しくなった。

「ふふ、大丈夫、お兄さんたちはこんな子供に興味ないよ。」

敬語を使わないように頭を使って話す。普通反対だ。敬語を使う方が面倒なのにな。

「でも、子供好きな変なお兄さんもいるんだよ、世の中。」

「なるほど、変態ってヤツだ。ああ、それなら今、変なお兄さんに絡まれてるかも。」

「おまえなぁー。オレが変態かよ。」

こんな憎まれ口叩くくらいしか脳はない。ドキドキして赤くならないための精一杯の防御なんだから、これくらいは許してもらいたいと思いつつ、ゆるやかに遠ざかって欲しいと願った。

「彰人さん、楽屋で準備しなくていいの?
私は大丈夫。ここにもう少しいたいから先に戻ってて。」

「かずみは、すぐ一人になりたがるね…。」

それは、彰人さんといて緊張するのが疲れるからなんだけどな。根暗で孤独なかわいそうな子だと思われているのだろうか。もしかしたらそういう同情から気にかけてくれているのだろうか。

「私は一人が好きなの。一人でいたいの。」

「そういえばこの間、慶太が言ってたな、友達いらない変人って。」

「まぁ、変人には変わりないけど、誰かみたいな変態じゃないから。」

「降りて来いよ、じゃないと変態お兄さんがそっちに行くよ?」

まただ…。だから、そういうのをやめて欲しいのに。近くには来てもらいたくない。遠ざけようとしても遠ざかってくれない。彰人さんを遠ざける説得力のある言葉も見つからない。側に来られると、私はどんどん苦しくなって、ドキドキしたくもないのにドキドキして、切なくなるだけじゃなくイライラするからもう嫌なのに。

彰人さんは長い足でひょいひょいと階段を登ってきてしまった。私は階段を降り途中だったから、階段の真ん中より少し上のあたりで二人、風に吹かれている状態になった。

風が彰人さんにあたると、彰人さんの柔らかそうな髪がフワリと揺れる。至近距離で見る彰人さんの横顔がまた、なんてカッコイイんだろうと思ってしまった。ドキドキしないではいられない。私はなんてバカなんだろうと思いながら、風を感じていた。

「おまえ、階段好きだなぁ、下に下がったり上に上がったり。」

「平らなところにいるよりは、違うこと考えられるかもしれないでしょ?」

「へぇ…じゃ、今はどんなこと考えてる?」

彰人さんの、覗き込むような目に魅了されてしまって、目を逸らすことに意識をもっていかれたから、つい本当に思ってたことを言ってしまった。

「え?今?…今は…早くオトナになりたいなって。」

「ははっ、可愛いな、かずみ。」

腹が立つ。完全にお子様扱いだ。分かっていても腹が立つ。中坊で子供なのは仕方がないことなんだ。努力でどうこうできるものでもないんだし、頑張ったってどうにもならないんだから。

彰人さんの言葉に腹を立てながら不機嫌そうに彰人さんを見ると、彰人さんはさっきからずっと私を見たままだから、困るくらいに目が合ってしまった。

「…かずみ…」

もうヤダ。切なげな目でそうやって突然名前を呼ぶなんてどんな高度な技だ。私は、そういうのがものすごく負担で精神的にとっても厳しいので本気でやめて欲しいと、なぜ言えないんだ。ものすごいストレスだ。

沈黙状態で数秒見つめあってしまった。ザコキャラと魔王の対戦のように、ザコキャラは「にげる」を選んでもまず成功しないという嫌なパターンだ。いや魔王というよりはメデューサかもしれない。動けない。いっそのこと石にでもしてくれた方が楽だ。石であったならば感情はないはずだ。石になりたい。不格好なお地蔵様でも何でもいいから。だってもう次に言う言葉が見つからない。助けて誰か、勇者、戦士、魔法使い!

私のドキドキがMAXを超えて完全に思考がおかしくなり始めた時、楽屋の裏口がバタンと開いた音がしたと思ったら、女の人の声が聞こえてきた。

「彰くん?彰くーん。ここにもいない?」

彰人さんを探してる。なんだか分からないけれど助かった。彼女は勇者か戦士か魔法使いに違いない。私は彰人さんに話しかけられる言葉が見つかってホッとした。

「彰くんって、彰人さん?呼んでるよ?」

「しっ!」

彰人さんは返事をする気がないみたいだけど、私はなんだか気がついた。だって、普通、何事も事情がなければ返事をして当然。でも返事をしたくないということは「事情」があるのだろう。そしてそんなのは男の人と女の人の事情に決まっている。そう思っただけで、急に苦しくなってしまった。もう相当重症かもしれない。

女の人は階段にいる私と彰人さんに気付かずに扉を閉めて行ってしまった。彰人さんは、にっこりと笑って、見つからなかったことを喜んでいるようだった。

「彰人さん、カッコイイかもしれないけどヤなヤツっぽい。」

「今カッコイイって言った?」

「一般的な話。普通に考えて私は彰人さんにブサイクと言うほどバカじゃないよ。そりゃカッコイイでしょ、私は好みじゃないけど!」

可愛くないことを言ってしまった。でもこんなのでヤキモチ焼いてると思われるのもしゃくに障る。

「ははっ、キッツいなぁーおまえ。」

「私はね、身の丈にあった恋がしたいの。高度な恋じゃなくて。最初から苦労するって分かってるカッコイイ人は、好みじゃないってこと。彰人さんが個人的に好みじゃないって言ってるんじゃなくて。」

「へぇ…。オトナ。そして、おまえの中で、オレそんなにカッコイイんだ。」

墓穴掘ったかな。冷静なふりしようと試みたんだけどダメか。

「だから、カッコイイと思うよ、普通に!」

あえて、否定しない戦法に出た。動揺がバレないように頭を使う。もう疲れてきた。どうにか一人になりたい。

「彰人さん、そろそろ行かなくていいの?」

「あ、そろそろ行っとかないとヤバいね。行こ、一緒に。」

「……………………。」

私は彰人さんと楽屋へ戻った。

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