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B面トライアングル<2>

B面トライアングル<2> 【出会いトライアングル】


転校初日をどうにか終え、精神的に疲れ果てた私は、家に帰ると着替えてすぐにケイちゃんの部屋へと向かった。私は放課後、職員室で担任と話をしていたから、真っ直ぐ帰っていればケイちゃんの方が早く家に着いているはずだ。ケイちゃんの家のチャイムを鳴らしたらおばさんが出て「慶太なら二階にいるわよ、どうぞぉ。」と、朗らかな笑顔で迎えてくれので、おばさんに挨拶をしてからすぐにニ階にあがり、ケイちゃんの部屋に駆け込んだ。

「ケイちゃん。」

バァンとドアを開けていきなり駆け込む私に、びっくりした様子のケイちゃんは、

「わぁ、かずちゃん、声くらい掛けてから入れよな、びっくりするだろ。」

と、ゲームのコントローラーを持ったまま後ろを振り返ってそう言った。

「あ ゴメン。それにしても、もうゲーム?あっ勝手に進んでないでしょうね、立河くん。」

「え、なんだそれ、立河くんって。気持ちワル。」

そう、今さら名字で呼び合うのが私たちには気持ち悪い。違和感があってワザとらしくて痒くて恥ずかしい。でも恥ずかしくたって学校ではそう呼ばなければいけないから、今のうちにおちゃらけつつも練習しておきたかった。

「練習。だってクラス一緒になっちゃったじゃん。ケイちゃん祈った?同じクラスになりませんようにって。」

ケイちゃんはゲームのコントローラーを置いてから私の方をきちんと向いて、ちょっと真顔で聞いてきた。

「かずちゃんのアレ、なんなの?怖いくらいしゃべらないのって何?」

ケイちゃんには根暗人間計画のことを話していなかったから学校での私の様子に驚いたようだった。私は自分の考えをケイちゃんに話した。友達も欲しくないという私に、難しそうな顔をしながら聞いていたけど、ケイちゃんは真っすぐに私を見て、

「じゃぁ、オレは何なの?」

と言った。私は少し考えて、「たぶん、友達…?」と答えた。

なぜか少しの間沈黙の時間ができた。欲しくないのは学校でこれから知り合う友達なんだっていうことをちゃんと説明できてなかったかもしれない。不思議な空気が流れたような気がしたけど私は私の進みたい道を変える気はない。

「学校では話しかけないし、ケイちゃんに迷惑はかけないよ?」

「いや、そうじゃなくて…」

ケイちゃんが何かを言いかけた時、男の人の話し声と共にバタバタと階段を上ってくる音がした。そして話声と足音は向かいの部屋に入って行った様だった。

「あ、もしかして吉貴くん?」

吉貴くんはケイちゃんのお兄さんだ。小さい頃、ケイちゃんと私はよく吉貴くんの後をついてまわった。私にとっても兄のような存在だった吉貴くんに会えるのもちょっと楽しみにしていたのだ。この数日間ケイちゃんの部屋にいる時に吉貴くんは留守だったので会えずにいたけれど、今帰ってきたのなら会える。

「うん、兄貴帰ってきたみたい。」

ケイちゃんは、邪魔そうな前髪をざっくりと掻き上げてから立ち上がると、部屋のドアを少し開けて、

「吉貴ぁー。おーい。兄貴ー。」

と向かいのドアに向かって言った。ケイちゃんが呼んだ直後、ガチャリと音がして、男の人の声が聞こえた。吉貴くんの声。学年が3つ上だから、今は高校生2年生のはず。高校生のお兄さんだと思うとなんかやっぱり緊張する。

「兄ちゃん、かずちゃん来てる。」

「お?、かずみ?」

という声が聞こえるのとほぼ同時に、少しだけ開いていたドアが全開。そこにはケイちゃんよりも背の高い、すごく大人の人っぽい高校生の吉貴くんが立っていた。

「おー、かずみ、なにそれ、女の子っぽいじゃん、髪の毛長いしなぁー。何、可愛くなったんじゃん。びっくりだ。」

でも、私の方がびっくりしたと思う。高校2年生というのはそんなにおじさんみたいな感じがするとは思っていなかった。背が高いしゴツイし、何よりも驚くのはヒゲの後があることだ。ぜんぜん昔の面影がない。お父さんみたいだ。だから思わず素直に表現してしまった。

「吉貴くん、オッサンになったね。」

「わはっ相変わらずだな、おい、かずみ、中身は変わってないな。」

ケイちゃんにも言われた「変わってない」という言葉。わりと辛口なお子様だったことはたしかだけど、そんなに変わってないだろうか。でもそういう部分を知っている知り合いにはやっぱり心が開けると思った。

「慶太から聞いてて、オレも会いたかったんだ。」

にこにこしながらそう言った吉貴くんの部屋からはギターのような音がしていた。誰か友達が来ているのだろうかと思ったとき、ケイちゃんが言った。

「彰人さんきてるの?」

「ああ、そうだ彰人にも見せてやろっと、オレの幼なじみが可愛くなって新登場ってね。」

吉貴くんはそう言いながら、私の方をニヤリと見たかと思うと、自分の部屋へ友人を呼びに行った。ギターを弾くらしい吉貴くんの友人。私は幼稚園の頃からピアノを習っているけれど、最近になってギターやベースというものの存在を知った。興味はあっても周りにギターを弾く人なんていなかったし、そういうのはもっと大人になってから覗くことのできる世界だと思ってたから、突然こんなに近くで新しい世界が覗けるような気がしてとてもワクワクした。

そして、現れた彰人さんという人は、息を飲むほどカッコイイ人だった。

「彰人、彼女がオレのラブリーな幼なじみ。8年ぶりに帰ってきたんだ。可愛いだろ?慶太と同じ年。慶太がさぁ、さんざん振り回されてたんだよ、昔。」

やけにテンションの高い吉貴くんはもうどうでもいいと思うほど、彰人さんという人が一瞬で目に焼き付いてしまった。悔しいことに心臓までドキドキする。

彰人さんという人は、私が今まで実際に見た男の人の中で断突に一番カッコよかった。スラリと伸びた長い足、細い腰、だけど肩幅はけっこうあって、骨格が美しい逆三角形だと分かる。そして妙な色気を感じる首筋に、整ったとしか言いようのない顔立ちの顔。薄めの唇に、二重でくっきりしている目。なんだろう、言い表せないくらいカッコイイ。こんなにステキな人を初めて見た。

「どうも、かずみちゃん。はじめまして、彰人です。
ホントだ可愛いね。何?、もう慶太とラブなの?」

大変だ。ありえないくらいにステキな声だ。ハスキーな色っぽい声。声までカッコイイなんてそんなことってあるんだ。芸能人みたいだと思った。美形という言葉はきっとこういう人に使っていいんだ。笑顔を向けて話しかける彰人さんが眩しすぎる。

呆然と見とれてしまっている私は、問いかけられていることの意味なんてぜんぜん考えられないくらい気が動転していた。身体が勝手に緊張しまくっている。緊張しすぎて声にならないくらいステキな人を見たのが初めてだったので、どうしていいのか分からずに黙りこんでしまった。

するとケイちゃんが、

「何言ってんの、彰人さん、そんなワケないよ。あるワケないから、ラブとか。
かずちゃん、友達もいらないとか言ってる変人だし。」

ケイちゃんとラブ?こっちだってあるワケない。だけどこんなカッコイイ人の前で「変人」呼ばわりはやめて欲しい。意味はなくてもそんなことを思う自分がちょっと恥ずかしいけど、思ってしまったのは事実だ。

「友達はいらない?
じゃあやっぱ慶太は友達じゃなくて、彼氏ってことだろ?いいなぁ~青春!」

「なっ、彰人さん、何言って…」

顔を赤くして困っているケイちゃんがとても子供っぽく見えるなんて、ケイちゃんに言ったら怒るだろうけど、そう思った。でも思いつつ、緊張状態が解けない私は、ただただ大人しくケイちゃんの部屋の片隅に座っているだけで、動けもしない。そんな様子を見て吉貴くんは、

「おーい、彰人、そんなイジメんなって。慶太可愛いけどなぁ。
かずみ大人しくなっちゃって、彰人に見とれちゃった?カッコイイだろ?
でも彰人にだけはホレんなよ。コイツ悪魔だぞ、マジで。彼女もいるからホレないでね。
お兄ちゃん、かずみが泣くとこ見たくしなぁ。ヒャハハハハ。」

ああ、なんだかチンピラな空間だ。私とケイちゃんなんて高校生にかかったらまだまだ子供だと思い知らされる。見とれてしまったのがバレたのは恥ずかしいけど、だけどこんなにバカにしきった態度に何も言い返せないのは耐えられない。腹からイラつきが込み上げてくる。

彰人さんがカッコイイからちょっとびっくりしたけど、別に好きになったりなんかしない。ステキ過ぎるコウコウセイのお兄さんに勝手に一目惚れする中学生なんて、そんな身の程知らずなことを恥ずかしげもなくできるバカだと思われるのもしゃくにさわる。子供なのは仕方ないけど、バカな中坊だと思ってのその上から目線が私をキレさせるのには充分な素材だった。

私はいきなりすっくと立ち上がって、キツめの声ではっきりと彰人さんに向かって言ってやった。

「すいません、私達は別に付き合っていませんからそうやってからかうのやめて下さい。面白くもなんともないです。」

一瞬シーンとした部屋の中、雰囲気なんてどんなに険悪になったってかまうものか、言いたいことは全部言ってやれと、そのまま続けた。

「それからケイちゃん、そんなにムキになってはお兄様方の思うツボ、遊ばれてるのをわかれ! 
それに吉貴くん、このお兄さんは確かに美形でびっくりしたけど、すべての女の子が簡単に美形にホレると思うな!そんなことを思っているようじゃまだまだ甘いと年上の女にはバカにされるのが落ちなんじゃないの?ちなみに私はカッコよすぎる男は嫌いなの。ナルシストに決まってる。ぜんぜん好みじゃねーんだよっ!
それから最後に中坊からかって楽しむんじゃねぇっ!自分たちも楽しく青春しとけばいいだろ、コーコーセイッ!」

シーンと静まり返る部屋の中、ケイちゃんと吉貴くんと彰人さんはびっくりしている様子だった。

やってしまった…とも思ったけれど、言いたいことをいってスッキリした。

そして少しの沈黙の後…

「あっははははははははは。スゲーなに彼女、カッケー。
すごいねホント、なにソレ、マジで?」

と、なぜかものすごくウケている彰人さん。ケイちゃんと吉貴くんは、なんとなく私の基質を分かってる。この二人は絶対このくらいのことは気にしないということは分かる。だけど彰人さんはなぜそんなにウケている?

「かずみちゃん、いいね。オレ、そういうの大好き。パンクだなぁ~。」

パンクって何だろう。たぶん車関係とはまた違うんだろう。私には分からない用語を使う彰人さんだったけど、まさか「パンクって何ですか。」とはカッコ悪すぎて聞けない。

「それから、かずみちゃん、彰人だよ、オレの名前、
このお兄さんじゃなくて、「彰人」ね。ア・キ・トって呼んでみて?」

ものすごく余裕そうな上に、軽い。それになんて切り返したらいいのか全くわからない。したくもないのにこの人に緊張させられていることは確かだから、彰人さんのからかうような発言に、また固まってしまった。

悔しいけど勝てる気がしない。でも最初から負けを認めてうつむいてしまうのはカッコ悪すぎる。心臓はかなりドキドキしてしまうけど全神経を集中して冷静を装った。

「わかりました、彰人さん…ですね。とってもカッコいいと思います。だけど、カッコつけてからかうような態度が嫌いです。中坊だと思ってナメてんじゃねーよって感じです。カンに触るのでやめて下さい。」

破裂しそうな心臓でどうにかそう言った私に、彰人さんは、

「慶太と同じ2年生?14歳?可愛いっ。可愛いね?可愛いい~。」と極上笑顔で私を見た。

なんとなくこの発言で分かったことがある。この人は人の話を聞かない系。絶対苦手なタイプであることは間違いない。隣の席の藤崎に感じ取ったのと同じような波長だと思った。でも藤崎以上にぶっ飛んでいることは確かだ。

それにその「可愛い」はどう考えても腹の立つ「可愛い」だ。こんなカッコイイ人に「可愛い」と言われて素直に喜べるほど脳天気にはなれない。お姫様が子ブタでも可愛がるかのようなこの「可愛い」にどう反応しろって言うんだ。ふざけるのも大概にしろと思う私はおかしいのか?

「だから、からかわないで下さい。14歳ですが何か文句がありますか!」

頑張ってもろくなことは言えず、悲しくなってくる私にはおかまいなしに、彰人さんはまたぜんぜん関係ないことを言う。

「吉貴っ、オレにチョウダイ!かずみちゃんっ!」

ムカツク。カッコイイのはひとまず置いといて、その態度がものすごくムカつく。それなのにカッコイイからってドキドキしている自分がバカすぎて嫌だ。

「彰人さん、だからそういうのをヤメテ下さいって言ってんの!」

ああ、もうダメだと思う。これではバカ丸出しの、好きな男子にからかわれて喜んでいるたいして可愛くもないわざとらしい女子以下だ。気の利いた事が言えないのはどうしても目を奪われるからで、これがものすごく不細工な男だったらこんなふうにはなっていないと言い切れる。

「慶太とつきあってないんでしょ?友達いらないなんて言わないでオレと友達になろうね。前のガッコでは彼氏いた?」

ダメだ、限界だ。これ以上ここにはいられない。

「私は友達なんてイラナイし、彼氏はもっとイラナイの!も、帰るっ!」

これ以上緊張とムカつきを与えられ続けると身がもたないと思い、彰人さんと私の会話を茫然と見ている立河兄妹に八つ当たりするように、ツンと横を向き、ケイちゃんの部屋の出て、私は家に帰った。真っ直ぐ自分の部屋に行き、バタっとベットに倒れこんで、出てきた一言が、「…疲れた。」だった。

彰人さんという人があまりにもカッコよくて、インパクトがありすぎて、緊張しすぎてものすごく疲れた。あんなにカッコイイ人に憧れたり、ドキドキしたりは絶対したくない。普通に考えて私があまりにも惨めすぎる。でもその後は考えたくなくても彰人さんのことを考えてしまっていて、頼むから恋心とかに発展しないでくれ…と自分に願うくらい弱気になっていた。顔がいいだけの男に惚れるようなおバカさんにだけは自分はならないと信じていたから、自分の心の揺れ動きやドキドキがとてもショックだった。

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| 【恋愛】B面トライアングル | 00:00 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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