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B面トライアングル<19>

B面トライアングル<19>【純愛と無邪気と闘志と変態の交差点】

「慣れ」ってコワイかもしれないと思う。私が彰人さんに会っていることを知っているはずなのに、ケイちゃんはそのことに触れない。もっと泥沼のような空気になるのかと思っていたけれどわりとそうでもない。もちろん悩んではいるんだろう。でもその悩みを私は聞いてあげることができない。それもなんだか悲しいような気がする。少し前までは何でも言えた仲だったのに、今は気を使って普通な空間を作り上げているような気がする。それが息苦しいとも感じる。

だから私にはフタマタなんてできる頭もなければ、センスもないんだと心から思う。こうやって苦しくなるくらいなら、失った方がマシ。だぁれも居なくなれ。すぐにそんな気持ちになってわざわざ地雷を探して踏みつける。

「ねぇ、ケイちゃん。外国のどっかの国には、多夫一妻制っていうのがあって、1人の女の人にダンナさんがたくさんいるんだって。」

「え?ホント?それ複雑だろうなぁ、今のオレみたいに。」

ケイちゃんが私の方を見るから、目が合う。とたんにニヤっとしてしまった。私は嘘が苦手だ。

「えへ、嘘。」

「…バカっ!」

学校からの帰り道、シャレにならない言葉を選ぶ私をどうして真剣に怒らずにいられるんだろう。ケイちゃんにも不思議なところは多々ある。

工事中の砂利道にさしかかると、砂利を踏む音がジャシジャシと2人分響くのが少し面白い。リズムがあるようで無くて、無いようである。ジャシジャシの合間に私は素直な疑問をぶつける。

「ケイちゃん、やっぱ複雑……?」

ケイちゃんはちょっと不機嫌そうに答える。

「そりゃ複雑でしょ。どう考えてもおかしいし。」

そうだ、おかしいんだ。絶対おかしいはずだ。おかしいのにこのおかしさの中から脱出できない。脱出するにはどちらかと別れなくてはいけないのにできない。つまりおかしいのは私だ。

「なんか…私が言うのも何だけど、普通嫌いにならない?だってケイちゃんにもう一人彼女がいたら、私だったらすごくヤダ。」

我ながらなんと勝手なことを言うのだろうと思うけど、今更キレイゴトを言っても仕方ない。ケイちゃんに他の女の子がいたらこれは耐えられないくらいイヤで、でも自分はそれを棚に上げて彰人さんに会っているワケだから、嫌われないのが不思議だ。あれ?でもじゃあ彰人さんは?彰人さんに他の女の子がいても耐えられないほどイヤだろうか。そういえば聞いてないけれど、もともとそんなに好きじゃない彼女はどうしたんだろう。

突然1人分のジャシジャシが止まる。ケイちゃんは歩くのを止めて私を見た。少し遅れて私も止まる。静かになるとケイちゃんはゆっくりと話した。

「…かずちゃんは一体何なんだろうね、嫌いになれたら楽だよホント。
だって結局、かずちゃんを失うくらいなら彰人さんがいてもいいから失いたくないって思うんだもん。これじゃ彰人さんと言ってること同じでヤダけど。」

そしてそう言うとケイちゃんはまた歩き出す。私はまた少し遅れて歩きだした。ケイちゃんの背中を見ながら言う。

「なんか、みんなオトナだなぁ。高度すぎるよね、不倫のメロメロドラマみたい。」

「いや、けっこう辛いよ?でも辛い辛い言っててもかずちゃんもヤでしょ?
あと、そんな他人事みたいに言うけどさぁ、自分が中心人物なんだからね?」

「…うん、わかってる。」

帰り道の途中にある小さな商店を眺めながら返事をした。
でも頭の中ではチョコレートが食べたいと思っていた。

「かずちゃん…あんまわかってないよね、チョコ食いてーとか思ってない?」

「えっ?どうしてわかったの!?」

ケイちゃんの方を見て驚く私に、ケイちゃんは溜息をつきながら黙ってその小さな商店へ向かった。お説教モードがオンなケイちゃんだけど、ケイちゃんは私に甘すぎる。だから文句を言いながら私にチョコレートを与える。

「部屋に持ってくるチョコ、ここで買ってたんでしょ?」

ケイちゃんは私のことをよく見てる。私はケイちゃんとこうやって一緒に帰るようになる前は、1人でこの道を通り、よくここでチョコレートを買ってケイちゃんの部屋に持って行っていた。

「うん、ありがと。チョコレート食べたかった。」

「かずちゃんチョコ好きだね。だから、甘いんだよ。」

「何が?」

「別にっ、何でもないよ。早く帰ろ。」

私に甘いのはケイちゃんだと思っていたけど、ケイちゃんは部屋に着いてからチョコレートを食べた私にキスをして、

「これが甘いってこと。」と、教えてくれた。

それから私を抱きしめて、

「甘くて苦しい。でもいい、明日会えなくても明後日会えなくてもその次の日に会えるなら、それでいいんだ。」と言った。私はなんだか切なくなる。このまま手をつないで逃げてしまいたいような気持ちになった。

ケイちゃんはたまに壊れるけれど、基本的に私の嫌がることはしない。いつも触れる手は優しくて、大事なものを扱うように触れてくれる。でもそれはなんだか反省させられるというか、申し訳なくなる時がある。心のどこかで、そんなに優しくしなくていいんだよ、と思ってしまう。

思いやりの心を大切に…とバカの一つ覚えみたいにどこでもここでもそんなセリフを聞く。優しさには優しさで返すのが正しいとわかっているのに、私は優しさで返せないからあんまり優しくされても困る。優しく出来なかったり、故意にしたくない場合もあって、どうすればいいのかわからなくなる。

「あの…ごめんね?」と、意味もなく謝りたくなってそう言った。

「何がごめん…なの?」

たしかに、何が「ごめん」なのか私にもわからない。もう全てにおいて「ごめんなさい」という気分だ。私がケイちゃんを好きなのも、それから彰人さんを好きなのも、ケイちゃんに苦しい思いをさせているのも、根暗人間なのも、ヤリマンと言われているのも、同じクラスなのも、家が目の前なのも、触りがいがあるとは思えないこの胸の小ささも、みんなみんなケイちゃんに申し訳なさすぎるような気がする。

どれを取り上げていいのかわからないくらい申し訳なくて、困った私は、

「あの…胸が小さくて、ごめん?」と、私の頭の中を知らないケイちゃんが突然言われたらちょっとびっくりしてしまうようなことを言ってしまった。

案の定ケイちゃんは少し驚きながら照れたように

「な、何で?別にそんな、大きいからっていいわけじゃ…ないよ。」

でも今まで聞いたことがないけれど、これも素朴な疑問の一つだ。胸がないのはどうしようもないことだけど、どう思ってるのか聞いてみたい。

「でもさぁ、ないよりあった方がいいんでしょ?普通。」

「えっ、そ、それは…そう?なのかも知れないけど…、」

ケイちゃんが困っている。困っているということは、やっぱり胸は大きい方がいいんだろう。これも大変申し訳ない事項であることが発覚した。でも申し訳ないとも思うけれど、なんか少し腹立たしくもある。だってよく考えたら私はもう少し待ってくれと言ったはずだ。

「だから私は16歳とかになってからって思ってたのにっ。
ケイちゃんだって残念かもしれないけどね、私だってもっと大きくなってから堂々と見せたかったよ。」

「ちょ、ちょっと、そんな残念とか思ってないから。ぜんぜん大丈夫だから。」

ぜんぜん大丈夫…と言われても、素直にそう思えない。だって私の胸は絶対残念領域であることは確かだ。どの辺が大丈夫なのか言ってみろという気分だ。

「だって、小さい胸が好きなわけじゃないんでしょ?
私だって男だったらきっとデッカイ方が好きだよ。エロ本だってみぃんなデッカイもんなんでしょ、私なんてね、ブラなくたっていいくらいのハナシなんだから、だから見られるのもヤなんじゃん。」

「いや、それとこれとはいろいろ違うんだって、かずちゃん…。」

あ、すごく困ってる。私はこの困っている時のケイちゃんが妙に好きだ。それとこれとが違う意味はわからないけど、別に私に文句はないらしいことはわかる。だけどもっと困らせたくなるからつい意地悪を言いたくなってしまう。

「もっと大きくなるまで見るのも触るのも禁止。
だって大きいのがいいと思ってるんだもん。
そんなの私が悪くないのになんか申し訳ない気分になるじゃん。」

「えっ、そんな、大きいのがいいとは思ってないよ。」

ケイちゃんはどうしてこんなに面白いくらいすぐ困るんだろう。
もっともっと困ってくれたら抱きしめたくなっちゃうのかもしれない。

「じゃぁ、大きいのと小さいのはどっちが好きなの?」

「だから小さくても別に…、」

「そうじゃなくて!
小さくてもいいとかじゃなくて、大きいのと比べたらどっちがいいかって聞いてんの!」

「そ…れは…まぁあればあった方が…、」

「ホラ!やっぱりそうなんでしょ、だったら私の胸が残念じゃないワケがない!」

「もぉ、かずちゃん、違うんだって…」

可愛い…。ドキドキしてしまった。ケイちゃんが切なそうにしているのがたまらないのはなぜだろう。人はそれぞれたまらないツボを持っていて、彰人さんみたいに理解しがたいツボの人から、すごくわかりやすいツボの人までいるんだろう。そして私はどこら辺に位置するツボの持ち主なのかが問題だ。それからケイちゃんのツボはぜんぜんわからなかったりする。

「ねぇ、ケイちゃんていつたまらなくなるの?」

「はぁ?え?何ソレ?え?たまってるかってこと?」

ケイちゃんはすごく驚いたような顔をしたかと思ったら、私と目が合うと視線を逸らしてそう言った。私は意味不明部分の言葉を聞き返す。

「たまってる???」

”たまらなくなる”のはいつだと聞いたのに”たまってる”とは何だろう?疑問を抱える私にケイちゃんはちょっと不機嫌そうに答えた。

「だってそれは普通にたまるもんだから男はさ、仕方ないの!」

「え?何がたまるの?」

「え????」


私たちの会話がかみ合っていないことに気づき、お互いの言う事の意味を細かく説明し合ったけれど、ケイちゃんはものすごく困りながらぎこちなく説明してくれた。私自身は「たまる」経験がないからあまりその感覚はわからなかったけれど、また一つ人体の不思議に関しての情報を得てしまった。

男の子の「したい」理由は「たまる」から。私は完全にいろいろ知識不足だと思う。気持ちよく「イキタイ」だけでなく「たまる」から出したいわけだ。でも、そんなことをする相手がいる人なんてこの年では少ないような気がする。どうしても出したいのに相手がいない人はどうするんだろう。そう思った私はケイちゃんに聞いた。

「そ、それはね、その…出すしかないというか、病気になっちゃうから、ホラ、そういうのは仕方ないというか、別に異常じゃないっていうか…。」

なんともびっくりするくらい煮え切らない答えが返ってきたから、意味がわからない。まだ何か秘密が隠されているのだろうか。

「どうやって出すの?勝手に出るの?」

私がそう言ったらケイちゃんは、カッと一瞬で顔を赤くした。そして顔を覗き込んだ私から大胆に目を逸らして、

「…だから、自分で…出すけど、でもそれ普通だからね。」

「ええっ、自分で?どうやって?」

「やめよう…かずちゃん、あのね、男には男の事情があるんだ。かずちゃんホントに何にも知らなすぎだよ、珍しいよきっと。」

自分で出すのが普通だとは知らなかった。じゃあ男の子はみんな自分で出す?どうやって?専用の機械とかあるのだろうか。それとも自分の手とか?で、気持ちよくなるものなのだろうか…。

もう疑問の嵐でどうしようもなくなった私は、嫌がるケイちゃんにしつこく食い下がってどうにかその内容を聞きだした。でもすごくショックで聞かない方が良かったかもしれないと思った。まさか世の中の男の子がそんなことになっていたなんて想像もしていなかったからびっくりしたし、明日から男の子を見る目が変わりそうで怖い。というりも、ゾッとしてしまう部分もある。まだ信じられない。

「あのね、かずちゃん…こういうハナシをされると完全にタマラナクなるんだけど、責任とってくれるワケ?」

「えっ…、」

ケイちゃんは私の手を握ってそう言った。思わす握られている手を見る。

「違うから!手とかじゃないよ。」

私の視線に何かを感じ取ったケイちゃんは慌ててそう言った。

「でも…吉貴くん帰ってくるんじゃないかな、そろそろ。」

ふとそう答えてから、吉貴くんも自分の手で…と考えてしまった。彰人さんも?藤崎も?まさか担任のセンセー?まさかお父さん?

私の頭が勝手に恐ろしいことを考える。こんなことを知っていたらそう簡単に男の子を好きになんてならなかったかもしれない。ケイちゃんは別として、違和感なしに許せるのは彰人さんくらいだ。あの人はもう最初からおかしいからそんなことくらいやってても何とも思わない。でも他の人はヤダ、考えたくない。

「兄貴は今日バイトで遅いはず……ダメ?」

「…ダメだったら自分でするの?」

「…かずちゃん、どうしてそんなはっきりと答えにくいことばっかり聞くかなぁ。自分で…するかもだけど、できればかずちゃんとしたいよ。ダメ?」

衝撃事実を知って、考えたくなくてもても脳裏をよぎることがたくさんある。でもここでケイちゃんに「ダメ!」と言い張るのもかわいそうな気もする。それにやっぱりケイちゃんはこうやって聞いてくれるだけいい。そう思うのに、またもや意地悪をしたくなってきた私はいいことを思いついてしまった。

「ダメじゃないけど…ちょっとだけ見たい。自分でするとこ。」

ニヤリとしながらそんなことを言ってしまう自分もどうかと思うけれど、私を見るケイちゃんの表情には少し恐怖の色が混じっていて、それが私の心をグッと捕える。

「…かずちゃん、マジ、カンベンして。それは無理。普通じゃない。」

「なんで?恥ずかしいの?でも私だっていつも胸なくて恥ずかしいの我慢してるんだから、ケイちゃんだってたまには我慢するべきじゃない?」

「もう、ぜんぜんレベルが違うよそんなの、とにかくそういうのはダメなの。」

ケイちゃんはそう言って私の手を自分の方に引っ張った。私はケイちゃんの腕の中に倒れ込む形で密着したけれど、このまま流されても頭の中がごちゃごちゃで集中できない。唇を奪われてもまだ、それは一体どんな絵だろうか…とそんなことばかりを考えてしまう。

「ん…うんん…み、見た…いっ。」

キスをしながら無理矢理しゃべる私に、もうしゃべらせまいと力技で乗り切ろうとするケイちゃん。その時、玄関の開く音がした。唇を離して2人で聞き耳を立てる。階段を登ってくる音が聞こえる。どうやら吉貴くんが帰ってきたようだ。

「もー兄貴バイトって言ったのにっ!」

心から残念そうなケイちゃんがかわいそうで可愛い。だから可愛いと意地悪になる私は、

「じゃ、今日は自分で出すしかないね、夜中にそっこり見に来ていい?」と、またケイちゃんの顔を覗き込むようにニヤリと笑いながら言った。

「ヤダよ、バカっ。かずちゃん変態!」

「えーっっっ!?」

衝撃的な言葉を貰ってしまった。まさか私がそんなことを言われるとは。ハイレベルな変態、彰人さんと比べると、自分の行動なんて足元にも及んでいないからぜんぜん大丈夫だと思い込んでいた。最近の私は危ないかもしれない。でもこれくらいで変態呼ばわりなんてケイちゃんは相当繊細だ。変態と呼んでいいのは彰人さんクラスだと説明してあげたいけれどさすがにそれはできない。

「あ、そういえば昨日、新しいソフト買ったんだ。
予約入れておいたヤツ。やりたいでしょ、コレ。」

ガサゴソと紺色の袋の中から、ゲーム雑誌で散々特集が組まれていた興味深いソフトを取り出しながらケイちゃんは言った。

このケイちゃんの切り替えの速さは、ちょっと寂しくもあるけれどなんか好きだったり。置き去り感があるからこそ、追いかけたくもなる。

「うん、やろ。」

こうやって一瞬にして子供同士のような空間を作り上げてしまう私たちは、ゲームが楽しくて無邪気に遊ぶ。吉貴くんが私たち2人も見ても、まさか肉体関係があるとは思えないのはこういうところを見ているからだろう。

そして夕方、自分の家に戻って1人きりになると、やっぱり衝撃的なあの事実のことを考えてしまっていた。ケイちゃんは今日やっぱり自分で出すのだろうか…と。そんな変なことを考えての眠れない夜は初めてで、もしかしたらこれが本物の思春期かもしれないと考えたりした。


――――――――――――


次の日、学校に登校した私はすれ違う男子に対してどうしても何も思わずにはいられない。今まで衝撃的なことがある度に勝手に変な想像をして1人で気持ちが悪くなったりしていたけれど、今回のはキツイ。彼女がいるとかいないに関わらず、男であれば誰にでもその可能性がある事柄なだけにゾッとしてしまう。ケイちゃん以外の男の子になんて近寄りたくもないと思った。

自分の席に座り、ふと隣を見るといつもと変わらぬ藤崎がいる。藤崎は?藤崎は男の子の身体をしているけれど中身が少し違う。そういう場合でもやっぱり「たまる」から「自分で出す」行為はしているのだろうか。これはぜひ聞きたい。

でもそういうことを聞くのは普通恥ずかしいのだろう。誰にだって立場がある。でもここでは私にはもう何も失うものはない。すでにヤリマンのレッテルを貼られ、地に落ちた状態と言えるのだから、私がどんなことを口走っても私に対する見方は地に落ちようがないと言える。藤崎のせいで。

そうだ、全てはコイツのせいだった。私が答え辛い質問をしたら藤崎は一体どんな顔で、何と言うのだろうか。そう思ったらもう止まらなくなって、私は声を小さくもしないで堂々と藤崎に言っていた。

「ねぇ、藤崎。
藤崎もたまった時って、自分の手を使って出してるの?気持ちよく?」

「はぁあああ?!?!」

ギョッとして私を見る藤崎の顔が面白かったし、その後の慌てようが楽しすぎた。はっきりと「NO」とは言えない男の子の事情、他の男の子や女の子も聞き耳を立てて聞いている状況。そんな中で余裕をなくして慌てる藤崎に、これが仕返しだと言わんばかりに私は無表情で答え辛いことを淡々と聞き続けてやった。これだけ慌てると言う事は、やっぱり自分で出さないといけないんだろうと思いながら。

目の端に、ケイちゃんの頭を抱える姿が映っている。後できっと怒られると思ったけれど、どうせ怒られるならスッキリとやり通してから怒られようと思っていた。



授業が始まると藤崎は小声で、

「おい園田、今日放課後どっちかと約束してんの?」と聞いてきた。

今日は、彰人さんとも約束していないし、ケイちゃんとも約束をしていない日で、私はフリーだったので、

「今日は誰とも約束してないよ。」と返事をすると藤崎は、

「帰りうちでちょっと話し合おう。朝からヤな汗かかされた件について。
…やっぱおまえすげー変態。」と、私を睨みながら言った。

彰人さんとは明日会う約束をしているけれど、今日藤崎の部屋にいることがバレたらそれなりに面倒なことにはならないだろうか。

「でも彰人さんが帰ってきたらなんか言われるかもよ?」

「兄貴が帰ってきたら兄貴に差し出すよ。喜ぶだろ。」

「えー、それはちょっと困るかも。」

彰人さんと会う場合はいろいろと覚悟が必要だから、そんなに気軽に会えるわけでもない。

「なんで?好きなんだろ?」

「いろいろとオトナっぽい事情があるの。」

そう言った私を、不思議そうな顔で私を見る藤崎には、きっとまだ知らない世界がたくさんあるんだろうと思った。


――――――――――――


放課後、藤崎の家に行くと運の悪いことに彰人さんがもう帰って来ていた。高等学校、もっとちゃんと遅くまで授業をしろ、と思った。藤崎と適当な話をして、彰人さんが帰ってくる前に素知らぬふりをして帰ろうかと思っていた私は、一瞬でまたいろんな覚悟をしなければならない。決して死ぬほどイヤなわけじゃないけれど、全てにおいて全く抵抗がないかと言われたらやっぱりまだそうでもなかったりするのだ。

そして彰人さんは私と藤崎の姿を見つけると、不思議そうな表情で

「ホント、仲いいなぁ、おまえら。どーしちゃったの?」

と、呟くように言った。

それからその後は、私にとって最悪の時間となった。

藤崎は今日の出来事、学校で私にされたことを彰人さんに事細かく説明したのだ。それは敵わない相手に告げ口されているようでなんとも言えない気分だ。センセーに言いつけるとか親に言いつけるなら正しい道に導かれるような気もするけど、変態大魔王にそんな告げ口をされたら私は助からない。直感的にそう思った。これが悪循環の始まりなのかもしれないけれど、私はまた今度はコレの仕返しを絶対にしてやるんだという気持ちで藤崎に闘志を燃やしていた。

そして私は彰人さんに差し出されて結局、彰人さんの部屋へと行く羽目になる。


――――――――――――


「さて、かずみ、何でそんな面白すぎることを?」

そんな問いかけと同時に、彰人さんはもうすでに私をベットに座らせて制服に手をかける。どのみち助からないのはわかるけど何の前触れもなく普通に服を脱がせようとすること自体が絶対おかしいし、気に入らない。不機嫌になりたくなくても不機嫌にしかなれない要素が多すぎる。

「いきなり脱ぐのヤダ!」

「明日もかずみに会えるのに、今日も会えるなんて嬉しいなぁ。
陽一から面白い話も聞けたし。」

話を聞け!と、最近では殴りたくなる瞬間がある。そしてジタバタしても彰人さんは手を止めない。もうどうにでもなれという気持ちから、全ての疑問と思っていることを包み隠さず話そうと思った。

それがものすごく後悔する結果を生み出すとも知らずに…。

「彰人さん…彰人さんも「たまる」と自分で…自分の手を使って出すの?」

「ん?」

と、首を少し傾けて答えた彰人さんの笑顔はとても眩しくて、美しかった。いつもいつもステキな笑顔だ。この笑顔の収まった写真が欲しいと思うくらい。そんなステキだと思える人にこんな質問を投げかけられる私の方がどうかしているんじゃないかと錯覚するくらい。だけどすぐに恐ろしい目に会うから、ステキだと思えば思うほど怖くもなる。

彰人さんが私に向けるにこやかな笑顔が、熱すぎる視線に変わる瞬間がわかった。次の瞬間彰人さんは私をグッと抱き寄せて、信じられないことにおでこにキスをした。こんな甘い展開が今までなかったからとてもびっくりした。

そして私に「ちょっと待っててね。」と言うと部屋を出て廊下で藤崎に「洋服を貸せ」と言っている。

何が起きようとしているのか全く想像がつかなくて恐ろしい。

その後戻ってきた彰人さんは藤崎から借りてきたと思われるズボンと長袖のシャツを手に持っていた。私は制服を脱がされてその服を着せられた。途中何度も「なんで?どうして?」と聞いたけれど、彰人さんは「内緒。」と言うばかりで答えてくれない。裾の長いズボンを折り、彰人さんの薄手の上着を上から着せられた。

「オレの服じゃ大きすぎるから、陽一ので我慢してね。さ、行こ。」

私はこれからどこかへ連れて行かれるらしいけど、行き先は一体何処なんだと思いつつ、彰人さんに手を引かれるままに歩くしかなかった。繋いだ手はまるで恋人同士のように全ての指を絡ませている。彰人さんがカッコイイから私が少し変な格好をしているのが気になる。変な格好じゃなかったとしてもこちら側にコンプレックスのような感情が生まれるのは絶対だけど、それでも極力一緒に歩いて私がかわいそうに見えないように努力はしたいものだ。

この時間は制服を着た高校生も中学生もまだうろうろしているから、どうしても恥ずかしくて下を向いてしまう。

「かずみ、なんでそんな下向いて歩くの?オレと歩くのヤダ?」

「…別にっ。」

見た目で彰人さんには釣り合わないからだとは言いたくない。

「オレはみんなに言って歩きたいくらいだけどなぁ、もちろんセックスもしてるよってね。」

「彰人さん、変態がバレちゃうよ。」

「あはは、ぜんぜんOK、変態は罪じゃない。」

彰人さんに付き合っていると何が正しいのかはよくわからなくなる。小さいことを気にするのがバカらしくなってくる。そう思うと上を向いて歩けるような気もしてきて、下を向くのをやめた。風は少し冷たいけれど、空はわりといい色をしていてキレイだった。

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| 【恋愛】B面トライアングル | 03:09 | comments:2 | trackbacks(-) | TOP↑

COMMENT

チョコレートのように甘いかずみちゃん可愛いですね。
ケイちゃんの「自分で出す」に異常反応するとこも可愛いです。
しかし彰人さんは相変わらずのサイコバス。
クールなサイコパス。
そんな彰人さんはいったい何を企んでいるのでしょう・・・
次回も楽しみにしてます!!

| 愚人 | 2011/08/14 23:02 | URI |

>愚人様

◆コメントありがとうございます◆
自分で出すもののない女の子にとって、それはそれは未知の世界なのです。今の時代は情報があふれていますからそんなことはないのかもしれませんが、私自身も初めて聞いた時はそれはそれはびっくりしました。クラスの男子を気持ち悪いと思ってしまう繊細な少女でしたよw こればかりは勝手な話ですが、不細工な男子を見てそういうことを考えると真面目に吐き気がしてきたりしてイライラしました。勝手すぎてごめんねと、謝りたいくらいですw 

さて、次回、サイコな彰人さんはかずみを何処へ連れていくのか。
次回は変態度数がちょっと高めですw

しかし、忙しすぎて作業がちっとも進みません。
スローペースでノロノロ更新になりそうです~(涙

| 玉蟲 | 2011/08/19 02:34 | URI |















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