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B面トライアングル<18>

B面トライアングル<18>【それぞれの変態定義】

「悩む」という行為が長く続けられない病気は存在するだろうか。

私は今、真剣に悩まなくてはいけないのに、どうしても長時間悩めない。悩んだつもりでもだんだんとその普通で考えたら苦しいと思われる状況に慣れ、馴染んでしまう。好きな人が2人いたって何も2人同時に何かするわけじゃないんだから、ほら、こんなふうに毎日がどうにかなっているじゃないか。だから明日もどうにかなるんだろう。

そんなふうに考える気楽な私は、最近はもうすっかり開きなおってギターの練習に没頭する。そしてなぜか、かなりの確率で私の隣には藤崎がいた。

「なぁ、おまえ変態?」

いきなりそういう質問を真顔でする人が変態だと思うと言って返してやりたくなるようなことを藤崎は突然言った。

ここは藤崎の部屋で、私たちは一緒にギターを弾いていた。なぜこんなことになるのかと言うと、彰人さんとの約束で、学校の帰りに藤崎の家に行かなくてはならないけれど、中学生の私たちの方が明らかに早くお家に帰れてしまうというバカらしい理由で、ヒマすぎる私たちはこうやって一緒に過ごすハメになる。

「あのねぇ、私は変態じゃない。でも彰人さんは変態じゃないかな。」

どこかで聞いたことのあるような「本音を言えるのが親友」という言葉が不本意でも頭をよぎる。だって藤崎に感情を隠す必要は一切なくて、気を使う必要も一切なくて、おまけに恋心も一切ないから言いたいことを平常心で言いたいだけ言える。腹も立つけど、嫌われたって痛くもかゆくもないからびっくりするほど楽だ。心地いいのとは別で、楽。私はもしかしたらこういうのが友人と呼べる人間なのではないかと思い始めている。

「そんでも兄貴が好きなんだろ?変態なのに。」

藤崎の質問は、純粋に謎に対しての質問だと私にはなぜかわかる。そのわかるのがなぜだかわからないけれど。

「そこがね、問題なんだけど…好きなんだよ、変態なのに。」

「じゃ、やっぱおまえも変態なんじゃね?」

そう言われるとそんなような気もするけど、一体私のどこが変態なんだ?と思ってしまう。普通に生きてるだけなのに。

「でも、私は変態じゃないと思う、求めてないもん変なことを。」

「あーココ、このソロの音がイマイチ拾えない箇所あんだよ、すげービミョーで。」

「ん?ドコ?もっかい頭にして。」

「おまえ耳いいよな、気合で拾ってくれ。」

「ん、わかった。ちと静かにして。
たぶん、音はこれかな?でもコード的に無視してるなぁ。」

「だろ?ビミョーだよなー。」

いつの間にか私と藤崎はこうやって音を介して仲が良くなった。学校でチャラチャラしてるのは何か理由があるのだろうかと思うほど、普段はそうでもない。ただ彰人さんと兄弟だと思わせるような突飛な発言は多い。変わり者であることは確かだ。

「今日、彰人さん遅いね。勝手に帰ったら怒るかな。」

「そりゃ怒るだろう、兄貴おまえにすごい執着してるもん。」

「そう、ソレ、なんで?」

「いや、それはオレにはわかんねーよ。なんでだろな。
ホントは立河のことだって面白くはねーんだよ。」

「うん、それはわかる。」

「ここ、小指とどかねー、オレ小指動き悪いんだよ。」

「藤崎って小指私より小さい。」

「あ、ホントだ。」

前から藤崎の手だけは好きだった。この手が目の前にあるのがなんだか不思議な気持ちにはなる。大嫌いだった藤崎のこの指を見て、いつか追いつくと悔しい思いをした日のことが思い浮かんだ。私はあの時よりは確実に進んだはずだと思うと少し嬉しくて、でもまだ手の動きは藤崎には負けることが少し悔しい。

「立河は平気なのかよ、おまえのこの異常事態。」

「さぁ?、あんまり触れないようにはしてる。微妙かな…あ、
それよりさぁ、おまえのせいで私いまだに学校でヤリマンとか言われてんじゃん、それ許してないからね。」

「だってヤリマンだろ?やりまくってる、ウーマン。」

「ちょっと、そんなやりまくってないし、そもそもヤリマンって言うのは不特定多数っていうか、誰とでもみたいな意味じゃないの?特定してるし、私!」

「2人だけどな。」

「そう、2人だけどって、ただ1人多いだけのハナシじゃん。」

「…オレは正直言って…園田、おまえは変態だと思う。
だから兄貴がハマってんだろ、きっと。」

なんとなく納得できるようなできないような。藤崎はさっきから私が変態なのにこだわっているようだけど、なんでそんなに私を変態にしておきたいんだろう。どうでもいいとは思うけれど漠然とした疑問を抱き、ジャカジャカとエレキギターの生音が響きわたるこの部屋で、ボケっと考えてしまっていた。すると、藤崎が真面目な顔でこちらを見ていることに気がつく。どうしたんだろうと思い、無言で首をかしげる私に藤崎は言った。

「あのさ、前に…やらせろとかって言ったの、アレ、本気で嘘だから。」

「え?あ、ああ、気にしてないよ。」

「……ホントはオレ、別の意味で多分そういうことできない。」

「んーまぁ普通はそういうのは、何て言うか合意のもとでないとできないよね。」

君のお兄さんはぜんぜん違うけど…、と思いながらも一般常識的なことを言ってる自分が可笑しいと思った。

「…違う。そうじゃなくて、オレは女の子とそういうことできない。」

「…はぁあ? え? えと? ええ?」

女の子とできない?落ち着いて考えよう。じゃぁどんな子とするんだ?女の子じゃなかったら何?もしかして男の子?まさかドーブツ?まさか犬とか?え?ホントに?ホントか?ホントなのか?

なんだか心臓がドキドキしてしまった。とりあえず何か言わなくちゃ。

「え…と…女の子とできない…となると、誰と?何と?」

「たぶん男?」と藤崎は自信なさげに言う。

これは大変だ。どうしよう。真面目な話なんだろうけど、信じられない。だけど男でまだ良かった。犬だったらもっと大変だ。

「男………でよかった。犬だったらどうしようかと思った。」

「園田、おまえ変だよな、やっぱ。犬は酷過ぎる。」

「いや、だって前にメス犬探してきてやるなんて言ったから、実はそういう性癖があって図星だったのかと思ったら悪いことしたのかなぁ…と、一瞬考えた。」

「もう、おまえバカすぎて本気で笑える。」と、藤崎は笑う。

でも、よくよく考えるとこれは大事件だ。それに藤崎がこんなトップシークレットを私に告白するというのはどういうわけなんだろう。

「えと、その、なんで私に…そんなこと言っていいの?」

「だって、おまえもその、何ていうか変態じゃん。」

なるほど、そういう括りで変態にこだわっていたワケか。でも括られても意味はない。私には男を好きになる男の気持ちなんてわかるはずもないんだから。変態の括りなら彰人さんも知っているのだろうか。

「あ、彰人さんは知ってんの?」

「家族も、兄貴にも誰にも言ってない。」

大変だ。これは大変なことなのではないだろうか。彰人さんもこの事実を知らない?私は絶対に誰にも言ってはいけないということになる。責任重大だ。藤崎は一体何で私にこんなことを言うんだろう。

「藤崎自身は、中身というか、気持ちみないなのって男?女?」

「男?なのかな。でも本当は違うのかも知れない。よく分からないんだけど、好きなヤツが男だし、普段、女みたいな思考を見抜かれたくなくて無茶してるっていうか、無理して軽い男演じてるっていうか…。」

ああ、分かった。なんとなく藤崎の気持ちを一瞬で理解できたような気がする。私は根暗人間を演じていたけど、藤崎は軽い男を演じていたんだ。

「そっか。あれ演技ね…。」

それにしても私はこんな重要な話を聞いてしまって一体どうしたらいいんだろう。どんなふうに声をかけていいのか全く浮かばない。藤崎がこれから歩むであろう人生に関して、私は今、すごい重要な人物として関わってしまったような気がする。そして、ふと何かが頭をよぎった。女のカンとしかいいようのないものだけど、多分当たっているはずだと思う。

少しの沈黙の後、私は緊張しつつも思い切って言葉にした。

「藤崎の好きなヤツって…ケイちゃん…?」

「……うん、まぁ、そう。」

繋がった、藤崎の妙な違和感。私を嫌いなのもよくわかった。というよりそれはとんでもなく嫌いなはずた。好きな人の彼女が自分の兄と浮気してる現場を目撃するなんて、考えなくても腹が立つ。好きな人にそんな女はヤメロと大声で叫びたくなって当たり前だ。しかも席が隣だなんて神様の意地悪もここまで来ると許せなくもなるだろう。あげくにその女は変な根暗人間で、「あんたが嫌い」とまで言う。藤崎くん、よく耐えてましたねと言いたくなってしまう。犬だった方がまだましだったかもしれない。

「なんか…ゴメン。」

知らなかったとはいえ、藤崎の気持ちを考えると私はとんでもなくダメージを与えていたことになる。勝手に闘志も燃やしていたし。

「いや、仕方ないというかなんというか…。でもおまえは悪くないとは言えないもんなぁ、実際酷いし、嫌いだった。」

それは嫌うなという方が難しいハナシだ。でもこんな事実を知ってしまってそれから一体私はどうすればいいんだろう。相手がケイちゃんでは頑張れとは言えない。

「なんで嫌いなヤツにそんな大事なことをサラッと言うんだ。
応援はできないよ、もちろん…。」

「もう嫌いじゃないよ。あと別に応援とかいらない。だって応援されてもどうにもならないじゃん。立河は女が好きなんだろうから。何で園田に言うのかはよくわからない。変態なのとあと、何だろな。オレもある意味本当の気持ちを言える人間なんて一人もいない。こうやって言うのにすげー心臓がドキドキしててさ、でもなんか気分はいいんだ。」

「えー、私なんかすんごい重たいんだけど。誰にも言えないじゃん、コレ。」

「でもおまえ友達いないじゃん。」

「いや、そうだけど、彰人さんとケイちゃんに死んでも言えないっていうのがまたこれ苦しいんじゃない?私としては。」

「じゃー苦しめ。なんか憎たらしいから教えてやろうみないなトコあるかもな。」

「わぁ…いい性格してんね。」

これもなるようにしかならないから、私には黙っとくことしかできないけれど、頭はそれなりに混乱する。そもそも男の子なのに中身がそうじゃない人の気持ちなんてぜんぜんわからない。普通に同性だと思っていいものなのだろうか。そう思うのも難しい。見た目は普通に男の子なんだから。

「立河も趣味悪いよなぁ…。」

恨めしそうに横目で私を見ながら藤崎は呟く。

「あ、やっぱりケイちゃんと別れさせたかったんだ、だから彰人さんにしろみたいな?」

「まぁそれもあるけど、兄貴と合ってる思ったのはホント。
兄貴の部屋に来た女の子でぐずぐず泣いてないのおまえくらいだから。」

「………いや、普通泣くだろうなぁ…とか、何度も思ったけどね。
だって最初無理矢理を通り越してヒモで縛ろうとしたからね、彰人さん。
…殺されて埋められると思ったよ。」

「あはははは、マジ?笑える。」

「いや、笑えないよ、スゴイ怖かったんだから。」

そう言いながら私も笑っていた。なぜか私たちは抱えている秘密をサラリと言いあえるような仲になっている。藤崎のことは誰も知らないなら私は絶対に言わない。そして藤崎も私のことを誰にも言わないんだろう。そのことは確認しなくてもわかる。恋愛とは全く別のところで魂のようなものが魅かれあっているような気はした。そして2人でエレキギターをガチャガチャと生音で掻き鳴らしてヒマすぎる時間を過ごしていると、階段を登ってくる足音が聞こえてきた。

「あ、兄貴帰ってきたよ。」

「ホントだ。」

「じゃーオレは、ピエロにでも行って練習するわ。
どうぞ心おきなくやってくれ。」

「………心おきなく、ね。」


―――――――――――



「かずみ、最近陽一と仲良しだね。」

彰人さんは制服のシャツを脱ぎ、クローゼットの洋服を選びながらそう言った。私はベットに制服のままゴロリと寝転んでいる。

彰人さんがいなくても彰人さんの部屋で待つように言われている私は、ここのところいつも藤崎の部屋にいた。おまけに今日は藤崎の重大な秘密まで聞かされて。でもまさか私と藤崎の仲は疑ったりはしないだろう。それに藤崎は…なんだろうあれはホモ?オカマ?何て言うんだろう?だから絶対にどうにかなることはない。

「かずみ?陽一と兄弟対決とかカンベンしてね?」

「ないないないないっ、ない!」

そうか、彰人さんは藤崎が女の子を好きにならないことを知らないから、性別だけで見れば怪しくも映るのか。でも藤崎のことは説明できない。

「かずみはしっかりしてそうで、フラフラだもんなぁ、逃げて行っちゃいそうな野生ドーブツ。苦労するよホント。」

彰人さんはそう言ってこちらを見た。私は当然、彰人さんに「苦労する」と言う資格はあるか?と思う。そんな気持ちを目で訴えながら寝転んでいる私と目が合うと、

「どうせ脱ぐから、このままでいいか。
かずみも脱がないと制服シワになるよ?」とにこやかに言った。

もうどうだっていいんだけど、私は今は藤崎のあの重大秘密が頭の中を占めていて、あまり他のことが考えられない。だって、男なのに男が好きだったら一体どうすればいいのかなんて想像もつかない。私が女を好きになるようなもんだ。例えばこういうヤラシーことはどうするんだろう?藤崎はそういうことも知っているのだろうか。

「かずみ…?どーした?脱がして欲しい?」

「………。」

男女は基本的にコレ抜きではいられないのだろうか。特に彰人さんは会ってしないことがない。生理中でも構わないどころか喜んでいたのがまたこの人のヤバさを実感できるところだ。「赤は最高にいい色だ」と呟く彰人さんが不気味だったし、生理中にそんなことをして身体は大丈夫なのだろうかという不安もあった。でもこれも誰にも聞けない。血みどろにも慣れなければいけないと思うと先が思いやられる。よくよく考えれば考えるほど、彰人さんを好きでいられる自分が変に思える、なるほど、私も変態なのかもしれない。でもそう認めるのもしゃくに触る。そんな面白くない気分を口にした。

「…今日はしたくない。」

受け入れられるとは思わないけれど、こういう我がままを聞いて欲しい時だってあるんだから、という気持ちで言ってみた。

彰人さんはニコッと笑って私を見る。これでマトモだったら私は幸せだっただろうかと思いながら、ちょっとヤバかったかもしれないと思った。

「それは無理ってまだわからない?」

わかってるけど、そんなバカにした言い方に対しては100%反抗してしまう。

「ぜんぜんわかんない、わかる気もしない。」

そう言ってしまう自分がバカだといつも思うし、だいたいどんなことになるかも想像がつくけどオトナになれなくて困ってしまう。

結局制服を脱がされて好き勝手に舐めまわされる羽目になる。それでも感情とは裏腹に身体の方は別の意味で順調に発展を遂げてくれるもんだからたちが悪い。そんな具合を彰人さんはいつも楽しんでいるようでそれがまた悔しいと思えた。

「かずみの「ヤダ」は聞き飽きたから、たまには違う事言えよ。」

彰人さんは私を上から覗きこんでそう言った。

ホント、私も言い飽きたと思う。
だからワザと生意気そうに言ってやった。

「くたばれ、ヘンタイ野郎…。」

どこら辺が彰人さんのツボかがわからないから困る。彰人さんは私のその言葉にクツクツ笑いながら、ものすごく嬉しそうに激しく腰を振った。私は思い知る。ホラネ、何を言っても無駄なんだ…と。

そして、一度目のその行為が終わって、しばらく経つと裸でいることがどうにも落ち着かない。私は服を着ようとするけれど、彰人さんはお互いが裸でいることを好む。私としては目のやり場に困るから、せめて下着くらい履いてほしいし履かせてほしい。それなのに彰人さんの鎖骨やアバラ、肩甲骨や骨盤のくっきりしたラインがキレイ過ぎてついつい見てしまう。その辺に感情は奪われるのも確かだ。これではエロオヤジのようだと勝手に反省したりもする。

終われば少しは緩やかな空気になるから、彰人さんが私の手を取り指先を優しく撫でる中、なんとなく空中を眺めながらまた藤崎のことを考えたりしていた。男なのに男を好きななるのも変態だろうか。彰人さんといい、藤崎といい、この兄弟の根底には一体何があるんだろう。藤崎はいつか女の人になるのだろうか。彰人さんはこれ以上おかしなことをしでかさないだろうか。いろいろ想像がつかなくて思考の迷宮に入りそうになる。

すると突然、彰人さんがまたおかしなことを言い出した。

「かずみ…爪、切ってあげる。」

「え?」

何で?何でだろう。爪を切るとは一体何だ。爪はそんなには伸びていないはず。ギターを弾くのに邪魔にならないようにかなり深爪になっていると思う。切るところなんてあるだろうか。

「かずみの爪はこれからオレが切るから、もう自分で切るなよ。」

「はぁあああ?」

なぜ?わからない。彰人さんのしたいことがわからない。人の爪を切りたい人なんてこの世にいるんだ。考えたこともなかった。

理由を聞いても多分「切りたいから」とかいう答えが返ってくるんだろう。理由は語られず…と言うよりも語れないんだろうと思う。語っても仕方ない、そうしたいからとしか言いようがないのかもしれない。でも一応聞いてみよう。

「何で?」

「爪が好きだから。」

予測した答えよりもダイレクト過ぎて可笑しかった。でもきっと私は自分で爪を切らないおかしな人になるしかない。どこまで行っても変態には変わりない彰人さんの危なさには驚くばかりだ。

「かずみ専用の爪切りも買ってあるからね。はい、手貸して。」

やっぱり怖すぎる、ナンダ、専用の爪切りって。それに服を着てからにしてほしい。

「彰人さん、爪はわかったから、服を着させて。」

「それはダメ。爪を切る時は裸じゃないと意味がない。」

神様…おばあちゃん…どーしてこんなことを真面目に言う人が世の中には存在するんですか…私はなぜ、全裸で爪を切られないとイケナイのかがぜんぜんわかりません。私の指先を美味しそうに見つめ、丁寧且つ真剣に爪を整えているこの人はおかしくありませんか…どうしたら私は助かりますか、もう手遅れですか、もうダメなんでしょうか、この全裸の17歳男子が全裸の14歳女子の爪を切っている姿は、究極におかしいと言えますよね…誰か、誰かにわかってもらいたい。あ、そうだ、後で藤崎に愚痴ろう。

私はもう、神様と死んだおばあちゃんと会話するくらいどうにかなってしまいそうだったけど、なんにも隠す必要のない藤崎に愚痴ろうと思ったら少しは気分が晴れた。でもそんな私には全く構わずに彰人さんは手の指の爪を切り終わると、今度は足に手をかけた。

「えっ、足も?」

「当然。」

誰かに爪を切られるなんて、記憶にないくらい遠いハナシだ。子供の頃はきっと親に切ってもらったんだろうけど、その後は人に切ってもらったことなんて一度もない。なんだかおかしな気分だったし、楽しそうな彰人さんがまた別の世界の人に見えた。

そして彰人さんはふいにまた、私の足の甲にキスをする。この部屋はこんな恐ろしい儀式を行う部屋で、私は生贄だ。彰人さんがゆっくりと私の足の爪を切る間、誰かがこのシーンを見たら何と言うだろうとそんなことを考えた。

そして、足の爪を切り終わると彰人さんは机の引き出しから小さな薄紫色の箱を取り出す。その箱を私に差し出し、「開けて。」と言った。

私は恐る恐る箱を受け取り、静かに箱を開ける。中には細い金の鎖に何か所か飾りのついたアクセサリーのようなものが入っていた。ブレスレットのように見えた。

「可愛いだろ?これはね、アンクレットって言うんだ。」

初めて聞いた言葉だった。なんだろうと思ったけれど、すぐにどんなものなのかはわかった。彰人さんが箱の中のアンクレットを取り出し、私の左足につけたから。足につける鎖があるとは知らなかった。

…一般的な乙女のドリーマーな意見だとは思うけれど、例えば彼氏ができて初めてアクセサリーを貰うなら、ネックレスとか指輪に憧れを持っていてはイケマセンか!と、思ってしまう。突然足に輪っかをはめられても何とも言えない気分だ。

そして彰人さんは、留め金部分にペンチのようなもので何かしている。

「外れないようにペンチで留め金潰しとくからね。水にぬれても大丈夫だからこのまま風呂入ってもいいよ。靴下履くから学校も大丈夫だろ?」

「えっ、外せないの?」

「そう、外せない。」

何ということをするんだろう。信じられない。いきなり外すことのできない足輪をくっつけられるなんて、誰が想像するだろうか。これも藤崎に愚痴ってやる。

そして彰人さんは、嬉しそうに外せない金の足輪のついた私の足を愛しそうに撫で始めた。

「たまんないよ、もう、どうにかなりそうだ。」

そう言う彰人さんは、もう確実にどうにかなってるし、別の意味でたまんないのはコッチの方だと思った。

「彰人さん、彰人さんはね、もうどうにかなってるよ。」

いつかは怖くて彰人さんのおかしさに突っ込めなかったことがあるけど、今なら言える。そう言えるのもまた可笑しかった。

「じゃあ、かずみもどうにかなるようにしてやるよ。」

カッコよくてステキなセリフを投げかける、最高にカッコイイ人。でもやってることが変態だから、いつでも私には葛藤が生まれて、だけどそんな葛藤は快感という恐ろしい麻薬に消される。狂わされていく中、それでも私は私を見失ってはいけない。彰人さんが強さを求める意味が最近なんとなくわかったような気がした。

丁寧過ぎるほど身体を触られて、自分がどうにかなっていくのがわかる。また落ちて行く。何度も何度も落ちて行く。今眠らせてくれたら最高なのに…と何度か思った。こういうのが続けばいつかは中毒のように彰人さんを求めるようになるのだろうか。気持ちにおいて何が大切かがわからなくなりそうなくらい、与えられる快感が心とリンクしているようだと思った。

触れあう肌の体温は暖かくて、汗ばむほどに上昇する。これで夏だったら死んじゃうよ…と思いながら一つの塊のように溶け込んでいった。明日のことは明日にならないと考えないから、できることだと知りながら。

たしかこういうのが「刹那的ナントカ」って言うんだろうと思った。

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| 【恋愛】B面トライアングル | 02:23 | comments:2 | trackbacks(-) | TOP↑

COMMENT

想定外な藤崎の発言に「そう来たか!」と、現在激しいニヤニヤが止まりません。
さすがです。
この展開も然ることながら、彰人が不意に爪を切りながら足輪を嵌めるシーンは絶妙です。
このシーンのかずみちゃん、無性に大好きです。

「…今日はしたくない。」と言いながらもいつもヤっちゃうかずみちゃん。
この不安定さが堪らなく可愛く、そして心配です。
変態藤崎も心配になって来ました。
サイコな彰人も心配すぎる程に心配です。
もう心配だらけで、ドキドキです。

とってもおもしろかったです。
次回も楽しみにしてます!!

| 愚人 | 2011/08/06 23:18 | URI |

>愚人様

そう、藤崎はこうきましたw 藤崎兄弟はヤバイですw
サイコな彰人ww いや彰人はもうサイコな領域なのかもしれません。
かずみがこれはオカシイのでは?と思いつつも彰人を嫌いにならないのは、恋愛において他を知らないからだとも言えます。ほとんど初めての人がこれだけオカシイなんてかずみは運が悪いのかもしれません。だから慶太のマトモさに心をうたれて手放したくないと思ってしまうのです。

切ない恋のトライアングルは今後、どのように発展していくのか、見守っていてください~。

| 玉蟲 | 2011/08/07 18:59 | URI |















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