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B面トライアングル<17>

B面トライアングル<17>【本格トライアングル、スタート】

こうやってケイちゃんを黙って待っている間に、答えのようなものをきっちりと出さなければいけないのに、出ない。考えても答えが出ない。二つあるもののどちらかを選ぶという簡単は行為ができない。なぜなんだろう。

ケイちゃんを前にすればこのままケイちゃんと一緒に居たいと思うし居られると思う。でも彰人さんを目の前にすればどんなに嫌な目にあっても引き込まれてしまう。やっぱり選べない。

そして今はとにかく時間がない。休み時間は10分。10分の間に答えを出さないとケイちゃんがここに戻って来てコトが進んでしまう。流されているだけでは悩みの種は増える一方で、このままでは絶対泥沼と呼べる状況になることだけはわかる。どう考えてもきっちり決めるべきだ。

私は真剣に考えた。時間がなくても絶対に答えを出さなくてはいけないことで、自分の意思では決められないことをきっちり決めるには、どうすればいいのか。真剣すぎて極限状態と言ってもいいのかもしれない。

そして思いついたのは、自分の意思に関係なくすぐに決まる究極の方法だった。

賭け。ギャンブラーになろうと思った。

どちらを選んでも選ばなくてもおそらくダメージは大きい。大事なことだとしても「差」がないのだったらどちらを選んでもどちらを失っても後悔も悩みも付きまとう。でも一方に決めなくてはいけないのなら、運を天に任せ、決まったことに従うのもまた青春であり、きっと人生だ。

コインの表が出たらケイちゃん、裏が出たら彰人さんに決める。決まったことに何が何でも従うと誓えば、選べないという悩みは一つ消える。もうこれしかないと思った。確率は2分の1で公平だし、文句もないはずだ。10円玉では失礼かもしれないから、せめて100円玉にするべきだろうと、そこまで考えた。

ケイちゃんが来たらこの提案を話し、私自身がどんなに切なくなってもコインの表が出なかったら別れてくれと言おう。あとのことは結果が出てから悩むことにして、とにかく進むべき道だけははっきり決めておかなくてはいけない。

そろそろ10分が経とうとしている。カバンを持ったケイちゃんがこの扉を開けるのもすぐだろう。

そんな究極の考えに至った私がシルバーの扉を正面にたたずんでいると、バタバタという足音と話し声がした。それらが聞こえたと同時くらいに扉は突然開いて、そして、息を切らせたケイちゃんとその後ろにはなぜか藤崎がいてびっくりしてしまった。

「えっ、なんで?藤崎?」と、間抜けであろう表情で私は聞いた。

私の問いには答えるヒマもなさそうに、会話を続けてきたらしいケイちゃんと藤崎がなにやらもめている。なぜだろう。

「もういいからっ、オレら帰るから!」

「ちょっと待てってだから!」

「かずちゃん、帰ろう!」

「ヤバイだろ、今2人で消えたら!」

どうやらこのまま帰ろうとするケイちゃんを藤崎が止めているようだった。なんで藤崎が止めるのかはよくわからないけど、止めてくれるならそれはありがたいような気もする。私は2人の話し合いがよく見えないのもあって、ボケっと2人を見ているしかなかった。

するとそんな私の方を見て突然藤崎が、

「園田、おまえ別れるんじゃなかったのかよ。」と言う。

なぜ藤崎にそんなことを言われるのかは知らないけど、彰人さん関係者でもある藤崎にそう言われると言い訳をしたくなってしまうのが不思議な気分だ。

「えと、別れようと思ったケド、ケイちゃん別れたくないって。」

藤崎はなぜか眉間にしわを寄せて私を睨む。そしてケイちゃんは、

「絶対別れないし、今日は帰る!」と藤崎に断言した。

一体私たちはここで何をしているんだろうという気分になってしまう。私がそんな第三者的な気分になってもいけないとは思うけど、自分が何をしていいのかさっぱりわからないからこんな気分になるんだと思う。でもそうだ、決めたことがあったんだ。今ここでそれを決行すれば事態は進む。方向が見えないからもめるのであって、方向さえ見えてくればきちんと話しあって解決することができるはずだ。

私は、もめる2人に向かって大きな声で言った。

「聞いて!私、決めたから!」

藤崎は「何を決めたんだよ。」と偉そうに言い、ケイちゃんは黙って私の顔を見る。

「私だってフタマタはヤダから、決めた。決め方を決めたの。たぶんケイちゃんも彰人さんも好きなの。どうしても今決められない。だから自分の意思で決められないなら、もう運を天にまかせようと思って。」

「はぁ?何言ってんの。」とまた偉そうに藤崎が言う。さっきからコイツは一体何なんだと思ってムカつくけれどここは我慢して通り過ぎよう。

「だから、ギャンブラーになって、コインの表が出たらケイちゃん、裏がでたら彰人さんを選ぶ。100円玉で。」

私は真剣に言った。

「おまえなぁっ、それはヤバイだろ、いくら何でも!」

すかさずそう言ったのは藤崎だった。さっきからいちいちムカつくから私もついムキになってしまう。

「何で!確率は一緒だし、これで一人に決められるじゃん。」

「いや、どー考えてもふざけてんだろ。」

「だって決められないものを決めろって言うんだよ?それも今すぐ。」

「なんか兄貴も立河もかわいそうになってきた。
それで決められて選ばれても喜べねーよ、バカだなおまえも。」

「じゃぁ、どうしろって言うんだ!」

「オレに言うなよ、自分で決めんだろ、そんなの!」

「だから究極に決められないからそうしようと思ったんじゃん。
悩んだ末の答えだ!」

「おまえはそれでホントにいいのかよ。コインってそんな一瞬で。」

コインは本当に一瞬だから、ドキドキがMAXになって息も吸えなくなるかもしれないから、あみだくじとかでじっくり決める方がいいだろうかと思ったけれど、それを言ったら怒られるだろうか。でも藤崎だからいいや。

「あみだくじの方がいいかな。」

「…立河、おまえホント、コイツ好き?
オレだったら絶対ヤダ、こんな変な女。」

「私だっておまえなんかヤだ。」

私と藤崎の言いあいを黙って聞いていたケイちゃんに、藤崎がふいに問いかけたから、私と藤崎はケイちゃんの方を見た。ケイちゃんはうつむきながら少し震える声で、

「かずちゃん…そんなワケのわからないやり方で彰人さんのところに行かれたらオレは一生立ち直ってやらないからな!」と言った。

よく見ると、怒り心頭でうっすらと涙目だ。ヤバイ、傷つけてしまった。大変だ。

コトの重大さに気づき、思わず藤崎の顔を見た。藤崎は、

「だから普通そんなこと言われたら誰だって泣きたくもなんだろ、オレだって泣くわ。おまえ酷過ぎ。」

と、小声で私を責める。そして私も小声で返した。

「だってじゃあホントにどうすればいいのっ。」

「うちの兄貴も一体なんでおまえなんか好きなの?
…周りに美人いっぱいいるのに。」

「知らないよ、そんなの彰人さんに聞け。
私だってそんな疑問は腐るほど抱えてるわ。」

「だろーなぁー。」

「うわ、なんかムカつくところが兄弟そっくり。」

「さっきは大違いとか言ってたクセに。」

小声と言ってもこんな狭い空間だからケイちゃんには丸聞こえなんだろう。目の端にうつむいてショックを受けているケイちゃんが映る。ギャンブラー作戦は失敗だ。もっと気楽に考えてくれるのかと思ったけれど、ケイちゃんは私とは違うんだ。やっぱりケイちゃんを悲しませないためにも私はケイちゃんを選ぶしかないんだろう。

私は少し声のトーンをあげて、ケイちゃんによく聞こえるように藤崎に言った。

「じゃぁ、もうわかった。藤崎、彰人さんにもう会わないって伝えて。
ケイちゃんが好きだからって。」

「え、マジで?……いいけど…、おまえもう兄貴と会うなよ。
オレ、園田は立河を選んだって言うからな。ちゃんとしろよ。」

「…うん。」



その後、とりあえずこのまま帰っては学校生活においてかなり大変なことになることを冷静に考えろという藤崎のアドバイスを聞き入れ、ケイちゃんは帰ってしまうのをやめると言ってくれた。そして藤崎は先に教室に戻り、私とケイちゃんはもう少し話をしてから教室に戻ることにした。私はギャンブラーにならずして勢いでケイちゃんを選ぶことに決めてしまったけれど、ケイちゃんはやっぱり少し怒っているようだ。気まずい雰囲気の中、一応謝っておこうと思い私から話しかける。

「あの…ごめん。」

ケイちゃんはうつむいたまま溜息をついた。それからゆっくりと私を見て、

「かずちゃんといたらこの先絶対疲れそう。」と言った。

私も自分でケイちゃんのマトモな神経をズタズタにしてしまうのかもしれないと思うところはあったので、疲れると言われて少しショックを受けた。ケイちゃんを選んだらもしかしてケイちゃんが酷い目に合うのだろうか。考え込む私に向かってケイちゃんはまた静かに話す。

「だけど、嫌いになれなくて苦しい。かずちゃんはいつも自由で自分のペースだ。どんなに傍にいたってオレだけのものにならない。どこら辺に羽生えてんだろうね。」

と、悲しそうな顔をして微笑んだ。

ケイちゃんの言ったことは、私が彰人さんに対して感じていることに似ていてびっくりした。私が彰人さんを好きになりたくない理由そのままのように思えた。ここで私は本当にケイちゃんを選んでしまっていいのだろうか。ケイちゃんに言われて自分の属性のようなものを意識すると、それはきっと彰人さんに近いのかもしれないと思った。

選択した結果に妙な不安を覚えた瞬間だった。

「でも、毎日同じクラスで顔を合わせないわけにはいかないんだから、苦しくたって諦めるわけにはいかないよ。かずちゃんが彰人さんに魅かれてるのもわかるけど、絶対渡さない。」

急にまとわりついた不安に気を取られ、そう言いながらのケイちゃんの急な動きに対応できなかった。ケイちゃんは私を入り口のドアの脇の壁に押し付けて強引に唇を奪った。私は少しびっくりしたけれどここで嫌がるのは気が引けたので、抵抗はせずに大人しくしていた。

ここは学校だからこの先に進むことはまずない。ケイちゃんが納得してくれたら教室に戻ってセンセーに言いわけをしなくてはいけないと、そんなことをぼんやり考えながら唇を重ねていた。

そしてケイちゃんはゆっくりと唇を離し、私の目を見ながら首の包帯に手をかける。その包帯だけはどうしても取られるわけにはいかないからビクリをしてしまった。事実はバレてもそんな彰人さんのつけた印を実際に見られるのはやっぱり嫌だ。

「それはダメ、取らないで。」

そう言った私をじっと睨みつけるように見入るケイちゃんの瞳が真っ黒で、思わず手で触りたくなるくらいだった。

「見せて。でも見たらショックなんだろうなぁ。怒るかもしれない。」

「じゃ、じゃぁ、見ない方がいいよっ。」

真っ黒な瞳はいつもの優しいケイちゃんじゃないみたいに、何かを主張しているように見える。

「見るよ、ショックでも。」

ケイちゃんは包帯を解こうと両手で包帯の留め具部分を探すように輪を作る。彰人さんに首輪を作られてびっくりしてしまった時のことがチラと頭に浮かんだけど、そんなことを考えている場合ではない。

「ヤ、ヤダ。やめた方がいいよっ、ケイちゃんってば!」

「静かにしないと。学校だから。ここ。
見つかったら2人ともただじゃすまないよ。」

これはまずい展開と言える。ケイちゃんもいろんな限界値を超えているのかもしれない。ケイちゃんは限界値を超えると妙な行動力がある。でもやっぱりそういう証拠は見せたらいけないものだと思うからどうにかしないと…。

考える間はあまりなかった。巻かれている包帯は、取り去るのではなく下にずらすだけで簡単にその部分が現れた。彰人さんのつけた赤い印がとても鮮やかなことは朝、鏡の前で確認したばかりだからそれが今ケイちゃんの目に映っていると思ったら悲しい気持ちになった。

明らかにショックを受けている表情のケイちゃんをしっかりと見る。それはすごく私も苦しくなるように何かが込み上げてきたけれど、私は少しおかしな感情に気がついた。一瞬、ゾクっとお腹のあたりから指先にかけていいようのない不快ではないもの、もしかしたら快感と呼べるかもしれないものが走った。こんなに苦しそうな表情をさせているのに。私が好きだから苦しんでいるのに。こんなに好きで悲しませたくないのに。それなのに、おかしい感情が生まれる。

私はおかしい。そう思った直後、ケイちゃんはなんの躊躇もなくグラウンドの砂だらけの床に私を倒すように押し付けた。制服が汚れる。こんな土のようなところに寝かされたりしたら、手で払ってもキレイにならないよケイちゃん、とスローモーションのような一瞬の出来事に、やけに冷静なことを思った。これはヤバイ、ケイちゃんがキレた。

制服のブラウスの上から胸を触られると、昨日の今日では胸の突起が痛む。布にこすれただけで痛いその場所は、昨日の彰人さんとの出来事を思い出させる。このままそこに触られるなんていうことになったら、すごく困ることに気がついて、今日は4回どころか1回もできないだろうと思った。

「痛っケイちゃん、痛くてヤダ。せ、せめて明日。」

「…何で…痛いの?痛いほど彰人さんと何したの?」

張りつめた空気が流れた。

見たら怒るかもしれないと言ったケイちゃんは今、絶対怒っていると思う。そしてこの学校の制服のブラウスのボタンの穴はちょっと大きめではないかと思った。すらすらと簡単に取れ過ぎだ。

ケイちゃんは乱暴でもなく落ち着いているように見せかけているけれど、目つきから尋常でない怒りが伝わってくる。それにこの場所ではヘタに騒げない。こんなところを誰かに見つかったら2人ともただではすまない。開かれた制服のブラウスの中身にケイちゃんはてをかける。下着を上にずらす時に、力の加減ができないようで少し怖かった。

ヤバすぎるけどもうダメかもしれない。

あらわになってしまった胸に唇をあてられると、傷口を舐められているような痛みを感じる。

「はぁっい、いたぁっいっ、ヤメテ、そこは触らないでぇっ。」

「腫れあがってる味がする…。」

「あっ…い、痛いから、ダメ、ケイちゃん」

「なんだろうね、もう、すごく許せな過ぎてどうしていいのかわからない。」

「あああぅっあっ痛ぁぃいいっやめてっやめてえぇ。」

「許さないし、別れない。彰人さんにはもう会わせないから、絶対。」

「お願いっもう、そこはヤダ、ケイちゃん、お願い。」

「ダメ、やめたくない、もうずっとココ。」

「ひあぁあっ、あうぅっあっいたぁいぃあっやめっっ、うぅうううっ、」

突然口はケイちゃんの手でふさがれた。

「静かにしないと。」

そして口は塞がれたまま、優しくだけれど痛い部分を舌で転がし続けられた。

「ううぅうっ、んぅうううっ。」

「オレが好きだから我慢してるの?かずちゃん…?」

どことなく悲しそうにそう言うケイちゃんに、塞がれた口から小さな声で、

「好きだから我慢したから、痛いからもうヤメテ、お願い。」

と、言ったらケイちゃんは、

「かずちゃんの「痛いとヤメテ」はもう絶対きかないからね。」と言って、そのまましばらく私にそれなりの地獄を見せてくれた。

なんで彰人さんもケイちゃんも、かわいそうな発展途上のこの胸をそんなに痛ぶるのかと思うと頭にくるけど、とりあえずは目の前の痛みとその先にある何かに思考は奪われていって何も考えられなくなっていった。

そしてそのままこの場所で、ケイちゃんが一つだけ持ち歩いているというゴムを使用してしまったけれど、最初の痛がりようを知っているケイちゃんにとっては、それなりに受け入れられる私の態勢が更にカンに触ったらしく、

「帰ったらあと3回だから。」

と、絶頂をむかえる前の激しい腰の動きの最中にそう言った。

2011-08-01-01.jpg

とんでもなく汚れてしまった制服がまるで自分自身のようだと思ったけれど、終わった後に優しく出来なかったと落ち込むケイちゃんの方が深刻そうな顔をしていた。

「落ち込むなら優しくすればいいじゃん。」と、慰めとも言えない言葉をかける私に、

「かずちゃんが言うな。」と、ケイちゃんは反発する。

心にどうしようもない負い目のある私は気を使ったつもりで明るく、

「ケイちゃん、イケてよかったね。」と言ったのに、これに対しても、

「だからそういうことも言うな。」と若干怒っていた。

こんな時に2人とも黙り込んでいたら私は耐えられない。優しくできないくらいで落ち込むな、落ち込むなら優しくしろと思う私は間違っているだろうか。とにかくこんな空気は耐えられないから思ったことを言うしかない。

「私だって痛いの我慢したんだからねっ、あと今日3回とか無理だから。」

「うん、わかってる、痛くしてごめん…。」

だけど、優しくできなくて落ち込むケイちゃんが妙に可愛いとも思ってしまった。少し異常なのではと思いながらも、つい意地悪を言いたくなってしまう。

「制服が汚くなったし、髪が砂だらけだし、このまま教室に行ったらさぞかし酷い目にあったと思われるかもね。あと、股が痛くてもう歩けないからお姫様だっことかして連れてけ。」

「…ごめん…そんなに痛い?」

そう言って私を見つめるケイちゃんの真っ黒な瞳に胸がキュンとなってしまい、もっとその悲しそうに落ち込む顔を見たくなってしまう。

「死にそうに痛い。」

そう言ってしまう自分は彰人さんを変態呼ばわり出来ないのではないかと思いつつ、切なそうに「ごめん」と呟くケイちゃんをいつまでも見ていたいと思った。

結局授業は4時間目から受けることになり、教室に入る時の好奇の目は異様だったけれど、基本的にこのクラスの人々は藤崎にはむかうようなことをしないから助かる。藤崎は私たちのことを、どのようにクラスに伝えたのか知らないけれど、先生にも私たちが校内にいることは伝わっていなかった。

ケイちゃんは友人何人かに話しかけられて困ったような顔をしていて、私は藤崎に「ずいぶん遅いじゃん。」と嫌味を言われた。そういえば藤崎は何を考えているんだろう。藤崎は何をしたいのいまいちよくかわからない。でも私はこの時、前ほどには藤崎を嫌いではなくなっていた。腹を割って話せばそれなりには話ができる相手であるのかもしれないと思い始めた。

でも藤崎のせいで、この日を境に私は「根暗人間」でも「変人」でもなく、「ヤリマン」となったことについては許さない。この年ではそういういかがわしいのは全部ヤリマン。バカじゃないのかと思うけど、イイ気分なんてするわけない。全部受け入れても絶対平然と学校に通ってやると決意し、いつか藤崎にはこの仕返しをしてやると硬く心に誓った。

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好奇の目の中、午後の授業が終わり私とケイちゃんはまっすぐ家に帰った。帰り道でもまだ落ち込んでいるケイちゃんに私は一体どんな言葉をかけるべきなのか悩む。私が悪いんだろうけど、許せないなら許せないできっぱり別れてもらう方が楽なのかもしれないなんて、また酷いことも考えてしまった。やっぱり私はこの辺が腐ってる。

彰人さんの言っていた「結局許せなくて別れる」というのも充分ありえる話なのかもしれない。「結局、許せない」はただ「許せない」じゃなくて「結局」だ。その「結局」をむかえるまでにはいろいろゴタゴタがあるのかもしれない。

こんな時に会話が弾むはずはないから、私は考えごとをしながら道を歩く。木枯らしのような風が冷たく感じた。

家に着くと私は着替えてケイちゃんの部屋で過ごす。2人きりでいたけれど、ケイちゃんは私に触れなかった。そして何事もなかったかのように、ケイちゃんは本を読み、私は吉貴くんの部屋からギターを持ってきて弾いていた。ライブはダメでもギターまで取り上げられなくてよかったと思いながら、それなりに自在に押さえられるようになったコードを好きなように鳴らして、寂しそうな音色を作って楽しんでいた。

こんな日が続けば、きっとケイちゃんも私も彰人さんのことは忘れていくはずだと思いながら弾いていた。音を作りながら彰人さんを想う。そんなふうに誰かを思って弾く音色がステキだと思った。

そしてその後、「噂をすれば影」のように、むやみに誰かを思ってメロディを奏でると、もしかしたらろくな目に合わないのかもしれないと思うことになった。

ケイちゃんの家のチャイムが鳴る。しばらくすると「慶太、お友達よー。」とケイちゃんのおばさんの声が階段の下から聞こえた。

こんな日だから、少し嫌な予感がしたけれどケイちゃんに友達が来たのなら私は家に帰ろうと思い、ケイちゃんと一緒に階段を降りて行く。

階段を降り切る前に嫌な予感は見事に当たったことがわかる。彰人さんのフワリとした髪が見えた。心臓は跳ね、動悸に変わる。でも今この場所には逃げ道はない。出口は彰人さんのいる玄関だ。

彰人さんと会うことで私はまた何を思うだろう。すごく不安になった。でももうここまできて会わないわけにはいかないと思い、そのまま進んだ。玄関へ降りると、そこには藤崎と彰人さんが立っていて、さっきからうるさい心臓はもう止まった方がいいと思った。まず目に入るのは彰人さんの隠していない赤い印。これもケイちゃんには見せたくなかった。

怖くてケイちゃんの顔が見れない。そして恐ろしくて彰人さんの顔も見れない。だから見るとしたら藤崎しかいないけれど、藤崎は私と目が合うと申し訳なさそうに口パクで「ごめん」と言った。

恐ろしい時間を過ごす覚悟を決めておいた方がいいと思ったけれど、この3人を置いてここから脱走したいとしか考えられなかった。

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「かずみ、あみだくじで決めようとしたんだって?」

彰人さんの独特などうでもいいような気だるい言い方で会話は始った。ケイちゃんの部屋がまるで地獄のような空間になっていた。私は彰人さんのそんな質問に対して、とりあえず余計なことを言いやがって、という目で藤崎を睨んでやった。でももう開き直って本当のことを言うしかない。

「違うよ。コインだよ。」

ぶっきらぼうにそう言った私に、彰人さんは突然ケラケラと笑いだし、

「いいね、ソレ。そんな扱いされてるオレらが楽しすぎるじゃん。
かずみはやっぱり最高に面白いよ。」

ああ、何となく彰人さんだったらそう言うのかもしれないとは思った。だからこの彰人さんのセリフにはあまり驚かない。そして彰人さんは賭けの結果で選ばれなくても言う事もきかないんだろう。

「ケイちゃんと別れない。だから彰人さんにはもう会わない。
もともと彼氏はケイちゃんだし…。」

ケイちゃんも藤崎もいるこんな空間でなら少しは強気になれるから、胸はそれなりに痛むけれどはっきり言った。でも彰人さんはやっぱり上手なんだと思い知る。

「だけどかずみはコインで決めようと思うほど迷ったんだろ?
賭けた結果がオレだったらそれも受け入れるんだろ?
慶太とそう変わらずオレを好きってことなんだろ?」

そこは突かれると痛いところでもある。でもここは引いたらダメだ。

「でも、もう決めたんだもん。」

彰人さんを好きだというところは無視してとにかく結果を伝える。

「勝手に決めないで欲しいなぁ、ソレ。」

勝手に決めるな?一番勝手なことしてる彰人さんにそんなことは言われたくないと思わずにはいられない、最高に勝手なセリフだ。でも冷静になろう。ムキになったら負ける。

「自分の気持ちくらい、自分で考えて勝手に決めるでしょ、そんなの。」

「あははは、あみだくじで?」

「違うっ、考えたの!」

たいして考えてもいないくせに、考えたと言う自分がまたバカっぽい。そしてこんな時であるにも関わらず、じっと彰人さんを睨みつけると、カッコよくてステキだと思ってしまう私はもう完全に病気だ。こんなに憎たらしいのにどうしてこんなに彰人さんが好きなんだろう、それはもう不思議とも言える。睨みつける私に笑顔な彰人さんは唐突に理解しがたい言葉を言った。

「そんなに無理して決めなくたって、別にいいんじゃねーの、今まで通りで。」

私とケイちゃんと藤崎はなぜか「え?」という顔でお互いの顔を見合わせる。たぶん言葉の意味をそのまま受け取っていいのかどうか一瞬迷ったからだ。

今まで通りということは、ケイちゃんとつきあいながら彰人さんとも関係を続けるということになる。そんなのは絶対に普通じゃないし、もう人としてダメだと思う。正に泥沼と呼べるんじゃないかと思うし、私は中学2年で男2人を抱えられるほどの体力ももノーミソもない。

「だからさ、耐えられなくなった方が負け、でいいじゃん。
かずみを失わないなら慶太がおまけについて来たってオレはぜんぜん構わないけど?」

あたりまえのことのような顔でそういう彰人さんに向かって、

「ヤダよ!何言ってんの、彰人さん、そんなのおかしいよ!」

と、ケイちゃんが言った。

空気が見えたなら今はそこは火花だろう。こんな時はどちらの顔も見れなくて、助けを求めるように藤崎を見てしまう。さすがに藤崎も戸惑いを隠せない表情だった。

「じゃぁ、慶太が諦めろ。おまえが思ってるほどかずみはマトモじゃないよ。
コインで決めようとするくらいだから。」

「なにソレ!私はマトモだよっ!」

彰人さんの強引な意見には私の変なトコロに関する微妙なキーワード。思うところが多少あるからつい否定したくなった。そして藤崎は余計なことしか言わない。

「いや、おかしいぞ、園田。」と、小さな声で私に言った。

なんともいえない嫌な空気と沈黙。こういうのはすごく苦手でどうしていいのかわからなくなる。人の想いが交差するようなこんな場面が苦手だ。こういうのが嫌いで誰とも関わり合いたくなくなった。それなのに性別が変わってもこんなことは起きる。ある意味お友達関係よりもハイレベルだ。お友達には肉体関係がない。根暗人間になりたければ男女の区別なく誰とも関わってはいけないのが正解だと思った。

私はそんなことを考え始め、わりとどうでもよくなって彰人さんとケイちゃんの話し合いでカタがつけばそれでいいやという気分だった。どうせもともとコインで決めようと本気で思っていたんだから、決まるなら何でもいいのかもしれない。そして結局彰人さんのありえない意見をケイちゃんは絶対におかしいと言い張りながらも、彰人さんに断言されて終わった。彰人さんのあの普通じゃない感じにはやっぱり誰も逆らえないし、私たちなんて何と言っても可愛い中学生だ。そもそも高校生の彰人さんに敵うワケもない。

「信じられないよ、ホントにそれでいいの、かずちゃんは!」

やっぱり最終的に解答をふられるのはこっちだ。でもヤダって言っても本当にコインで決めるくらいしか私の気持ちは自分で決められない。ケイちゃんに決めても、もうこんなにグラグラだ。

「どうしていいかわかんない。もう誰ともつきあわなくていいかも。」

面倒になってそんなことを言う私に彰人さんは、

「だから、今までどーりでいいんだよ、今選べなくたって、そのうち選ぶ時が来るって。」

と、悪魔の誘いは優しく、そしてだまくらかすように、なだめるように、でも結局自分の好きな方向に持っていく。

そうしてスッキリとはしないまま、結局今まで通りでしばらくいることになった。もともとつき合っているのは私とケイちゃんなので、彰人さんとのことは表沙汰にしないことした。それでも公認なフタマタなんてこの世に存在するとは思っていなかったから私は混乱しているし、藤崎が彰人さんとのことを堂々をクラスで公表してしまった件についてはもう手遅れなんじゃないかと思ったけど、そんなことはもうどうでもよかった。ただ、私はこれからどうやって毎日を進んで行けばいいんだろうと、そればかりを考えていた。
もうすぐ冬が来る。そんなことを頭の片隅で思いながら。

彰人さんは帰り際、「オレ、愛人かぁ。なかなか切ないね。」とふざけた態度で言いながら、私を見た。ドキリとしたけどケイちゃんがいるからすぐに目を逸らす。

本当にこの先、大丈夫なのだろうか…。

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| 【恋愛】B面トライアングル | 00:00 | comments:2 | trackbacks(-) | TOP↑

COMMENT

コインで男を決めようとするかずみちゃん。
とっても素敵です。
まさに野良猫ロックの世界です。

それにしても、「かずちゃんの「痛いとヤメテ」はもう絶対きかないからね。」とかずみに地獄を見せるケイちゃん。その後、かずみにちょっと強く言われ、「うん、わかってる、痛くしてごめん…。」と謝るところが少年っぽくてイイ味出てますね。
そんな純なケイちゃんと、遊び人の彰人。
そんな対照的な二人に翻弄される女子中学生。
が、しかしそれは全然乙女チックじゃなくて、コインで決めると言い出す始末。
おもしろいです。

僕的には、脇役の藤崎に、もう一踏ん張りしてほしいです。
こういう脇役って、なぜか好きなんですよね・・・。
っていうか、玉蟲さん、コレ系描くのウマすぎ(笑)

次回も楽しみにしてます!!

| 愚人 | 2011/08/02 21:48 | URI |

>愚人様

◆コメントありがとうございます◆
コインで決めたらそんなにイケナイの?と本気で思うかずみはきっとどうかしてます。私自身もそうなんですけど、それってそんなにイケナイの?と他人様の気持ちがぜんぜんわからないことが多々あります(笑
面倒すぎるんです、ちっさい感情が(涙
なんでそんなゴマの屁みたいなくそつまらんことをいちいち気にして生きてるのかがわからん!と常々叫んで歩きたいくらいなんです(涙
だけどそれでは繊細な物語は語れません。感情面も日々勉強ですw

少女は勝手で残酷ですが、少年も勝手です。そんな若い恋愛は信じられないくらい自由で、ありえないくらい勝手で、滑稽なんですよね。そんな世界観をうまく表現したいです。繊細にw

そして藤崎。実はこの物語は藤崎なくしては語れないと言ってもいいくらい、彼は重要な脇役です。今後もチラホラと登場致しますので、よろしくい願い致します♪ありがとうございました♪

| 玉蟲 | 2011/08/03 15:42 | URI |















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