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B面トライアングル<14>

B面トライアングル<14>【逃げ切れない魔の手1】

暗く、暗く、どこまでも暗く。
私は今日も学校ではケイちゃんとしか口をきかない。

カップルとして公認であるにも関わらず学校では相変わらず根暗人間の姿勢をかたくなに崩さずほとんどしゃべらない私は、はっきり言って「根暗人間」というよりも「ものすごい変人」として有名になりつつあった。これは完全な私の計算ミスというか、考えが浅はか過ぎたことによる現象だと思う。根暗を演じるならばもっとその存在感というものを考えるべきだった。何を聞かれてもしゃべらないというこのスタイルは行き過ぎるとやっぱり変だ。そのことに気づかずに突き進む私は物事に対してまっしぐらになると周りが見なくるクセがある。客観的に今の自分を考えて、自分自身に言葉をかけるとしたら「ノータリン」。そんなカンジだと思った。

でも、変人でも根暗でも人が寄って来なければ私はそれでいいのだから学校生活がそんなに苦痛というわけでもない。ただ藤崎と席がとなりなのが少し息苦しいような気がするだけだ。あれから…お互いが嫌い合っていると発覚した日から、もうすぐ一週間が過ぎようとしているけれど私と藤崎は一言も口をきいていない。嫌い合っていることがお互いにわかっている人と一日隣同士で居続けるのは、それはそれは居心地の悪いものだ。おそらく藤崎もイヤなんだろうと思う。藤崎がいつものバカみたいなノリで席替えでも提案すればいいのにと、他力本願野郎になって勝手なことを思っていた。

そういえば、藤崎と一週間口をきいていないということは、ケイちゃんに対しての「ダメじゃない」発言から一週間たってしまうという事だ。あれからケイちゃんとはその話題には触れずに過ごしている。たしかに身体の斑点問題は解決したけれど、だからといって「はいどーぞ。」とも言えない。でも次にそういう話題になったとしたら私には逃げ道はなく、大人しく抱き合うしかないんだろう。それは決して嫌なのではないけれど、まだ混乱している自分が更に混乱する材料のように思えてついシタバタしたくなってしまう。よく考えると人間関係というのは友情でも愛情でも何でも面倒なものなんだと思ってしまう。それでもケイちゃんを失いたくないから向き合って受け入れて少しずつ進んで行くしかないんだろう。

彰人さんとはあれから接触もなく、私の気持ちも落ち着いてきたように思える。毎日の生活の中でふと思い出す時もあるけれど、できるだけ思い出さないようにして、無理矢理にでも早く遠い過去にしてしまおうと思った。誘われてもライブに行かないようしていれば、もしかしたら助かるのかもしれない。私から出向いていかなければわりとすんなりと逃げ切れることなのに、心のどこかで彰人さんに会いたいと思ってしまう自分が全てを引き起こしていたとも考えられる。

会わないまま何カ月かが過ぎてしまいさえすれば、ケイちゃんにすっかりと気持ちを落ち着かせてしっかりできるのかもしれない。あれは夢、悪い夢だと心の中で何度も繰り返しているうちに本当にそう思える時が来ると信じよう。ただ、彰人さんがケイちゃんに肉体関係を持ったことを言ってしまわないかは常に心配で、ケイちゃんといても心から安心できるわけじゃないのがどうしても苦しいのはどうやって克服すればいいのかが悩みの種だと思った。

ふとした瞬間にこうやってつい彰人さんのことを考えてしまうのもよくない。頭と身体に悪いからやめようと思ったその時だった。

「おい、園田。」

一週間口をきいていない藤崎が話しかけてきた。ずっと口をきかなかった相手にいきなり話しかけられるとなぜか少し緊張する。緊張しつつ藤崎の方を見た。そして藤崎が次に言った言葉に私は表情を強張らせてしまった。

「兄貴が…」

あまりにも異常な私のリアクションに藤崎はその先の要件を言わずに、私の動揺を更に促進させるようなセリフを言う。

「おまえ兄貴となんかあんの?」

疑われている、私の態度があからさまにおかしいからだ。急いで普通の顔を作れと自分に言い聞かせながらその恐ろしい質問に対して

「なんで?ないよ?」と妙に明るく言った。声が震えないようにお腹に力が入る。

「兄貴が話あるって。」

変な緊張のため、口の中が乾いていることにゴクリと飲み込こもうと思った唾がないことで気づく。とにかくおかしな態度をとったらダメだ。

「なんだろ、またピ、ピアノかな、そのうち吉貴くんと行くねって伝えておいてよ。」

ヤバイ、しくじった。少し声が裏返った。

「…今日、5時までにピエロに来なかったら吉貴さんの家に行くって、そう言えばわかるって。」

どうしよう、答えられない。変に思われる。表情が作れない。心臓が別の生物みたいにドクンドクンと胸を突き破って出て行ってしまいそうだ。早く返事をしないと、余計に怪しまれるのに瞬きもできないくらい思考が止まっている。

「やっぱなんかあんの?」

何かあるとしか思えないような態度しかできない自分が情けない。でもどんなにおかしくてもここは否定しないとダメだ。もう少しでいいから頑張れと小さく気づかれないように二回深呼吸をしてから口を開いた。

「ないよ?5時までね。行かなかったら吉貴くんのところに来るんでしょ?じゃぁそっちで待っててもいいってことだよね。どうせケイちゃんのところにいるから会えるよ。大丈夫、吉貴くんのとこにも小さいキーボードあるしね。ピアノのコードなんて覚えて弾きながら歌うのかね、彰人さん、あははは、」

怪しまれないための演技は、やけにさわやかすぎて余計に怪しかった。私は普段、藤崎に対して「あははは、」などと笑いかけたりしない。というより笑いかけたことなんて一度もない。藤崎に怪しまれないために、彰人さんが吉貴くんの家に来ることを私がちっとも恐れていないように振舞ったつもりだけれど、それは必死な様には見えなかっただろうかと不安になった。でもとにかくピエロに行かなくても、他の人がいても私と彰人さんにはなんの支障もないことをアピールしたかった。この怪しげな演劇のセリフのような弁解で益々疑われたのならもう仕方ないけれど、それでもあがけるところまであがくしかない。

空気は確実におかしかった。それでもヘタな演技をそのまま通し続けたあげく、「伝言ありがとう!」などとわけのわからない言葉を言い捨て、放課後までの地獄の時間を過ごした。

放課後までの時間、授業は一つも頭には入らない。ピエロに行かなければ今日、ケイちゃんにバレてしまうと思うといてもたってもいられない気持ちになる。それを避けるにはピエロに行くしか方法はないけれど行ったら無事では済まないこともわかってる。私はどうするのが正しくて何が間違っているのかを真剣に考えるけど、考えれば考えるほどわからなくなった。

そして私の出した結論は、放課後ケイちゃんに用事かあるからとだけ言ってピエロに走ることだった。ピエロに行って彰人さんと会っても事態はよくならないことはわかる。でもこのまま彰人さんの口からケイちゃんに伝わるのがどうしても怖い。だけど彰人さんに会えばどんどん言えなくなることが増えるのもわかりきっている。私は彰人さんに一体何を伝えるために今こうやって走っているのだろう。



ピエロのあるビルに着くとそのまま4階のあの場所へと向かう。多分彰人さんはそこにいる。あの時の記憶が蘇る。この階段を登る時、彰人さんへの淡い恋心を抱えていたのは確かだった。そしてこの階段を下りた時、恐ろしい思いをしたのに彰人さんを嫌いになれないことが悔しかった。

それから今。彰人さんに会って私は何を思うのか。

複雑な思いで扉を開ける。必要以上に心臓は活発に動いているけれど、それでも私は扉を開けて中へと入る。静まり返った空間の中で扉の閉まる音を聞きつつ、あのソファに足を組んで座っている彰人さんの姿を捕えた。

そして彰人さんは悩ましく美しくひどく切なげに私を見つめ、優しく微笑みかける。ノータリンの丸腰中学生にどこまでも卑怯な男だ。

こうやって何度この心を奪われれば終わるのだろう。恐ろしいのは確かなのに何とも思わないことができない。これも恋心というのだろうか。助けて欲しいと思った。どんなにあがいても彰人さんに囚われる瞬間がある。バカみたいに。もう諦めるしかないのかもしれない。しばらく無言で見つめ合う間にこれから彰人さんと触れ合う覚悟を決めていた。

それから彰人さんはゆっくりと少し不機嫌そうな口調で、寂しそうに言う。

「どうしてライブ来なかったの?かずみ。」

私の気持ちなんて彰人さんに語ったところで何にも通用するとは思えない。どんなに苦しいんですと言っても彰人さんが同情してくれるとも思えない。

「行きたくなかったから。」

行きたくなかったから行かなかったのは私の自由だ。だからこれでいい。私はわざと楽しくなさそうに言った。

「この前…怖かった?でも逃げられないよ?
離さないってオレ言ったじゃん。」

「怖くなんてない。ケイちゃんが好きだから彰人さんに会いたくなかっただけ。」

絶妙な沈黙。ぶつかる感情はとことんぶつかって壊れてしまえばいい。私はもう逃げたって仕方ない。でも彰人さんは私の言葉を気にする風でもなく、余裕な表情で会話を続ける。

「かずみが来ないから憂鬱だったよ。」

どうして平気でそんなことが言えるんだろう。私の気持ちは本当に関係ないのだろうか。考えてることがわからないからやっぱりイラつく。

「私はこの一週間彰人さんに会わなくてすごく平和だった。」

無表情を決め込んできっぱりと可愛くないことを言う私を見て、彰人さんはニヤリと笑った。そして今度は私の顔を覗き込むようにして、

「かずみさぁ、男は会えない時間が長いと、会った時にその分押さえがきかなくなるって知ってる?」と言った。

私の動揺を確かめて喜ぶ悪趣味な彰人さんに、少しも動揺を見せたくないけれど、無理。もう無理だと思った。

また負ける。どんなに強がっても負ける。そしてそんなセリフにドキっとする、脳なし生物な自分。押さえられなくなる彰人さんはさぞかし普通ではないだろうと思うし怖いのに、ぶつかって行きたくなるこの衝動をどうにかしてほしい。そしてこの苛立ちもみんなぶつけてしまえばスッキリするだろうか。

「彰人さんは、好きな相手に嫌われたらどうしようとか思わないの?私を好きだって言うけどぜんぜんそう思えないっ。なんでいつもそんな勝手なことばっか言うの!大っ嫌い。」

「嫌われたっていいよ。嫌われても今がオレにとって最高じゃなきゃ未来に最高はやって来ないからさ。我慢して自分を隠してご機嫌とっても意味なんてないだろ?だからオレにとっての今の最高を作る。オレは最高じゃない未来はいらないから。…それにその大っ嫌いは多分嘘だよ。」

彰人さんの言葉が胸に突き刺さった。すごくショックだった。未来に何かを求めるなら今だ。今が最高じゃなきゃ未来に最高はない。「いつか」と考えてひきこもる自分が恥ずかしいとも思った。自信なんてなくても今を突き進まないといつまでも「いつか」には辿り着けないように、先のことをごちゃごちゃ言ってもなんにも始らないんだ。彰人さんは変態を隠していても最高は得られない。彰人さんは失う覚悟も最初からちゃんとあるんだ。敵うはずがない。私はいろんなことに対して甘すぎる。

彰人さんの言葉に異様にショックを受けてしまい、黙り込んでしまった。私の頭の中では何かが弾けたのは事実だけど、まだよく整理されていない。彰人さんにいつも心を奪われるのは見た目だけの問題じゃないのかもしれない。何かはわからないけれど惹きつけられる部分があるんだ。それはきっと私の中にある覚醒されていない何かだ。

「ここはベットがないからオレの部屋に行くよ。」と、彰人さんは無言な私の手をとって連れて行こうとする。私は、

「…ヤダ。手はつながない。」と、その手を振り払った。そして彰人さんは、

「なかなか懐かないトコロもすごい好みだから、
…そんなに喜ばせると後が大変だよ。」

と言って背を向けて先に階段を降りて行った。

もう怖いというよりも、何だろう。いつもいつも私が子供で彰人さんに見降ろされていることが屈辱的でたまらなくなる。小さな炎が沸々と私の中の深いところで燃えている。これは今まで制御できていなかったブチ切れる時の感覚と少し似ているけど違う。怒りとはまた違った感情だと思った。



ピエロから彰人さんの家は近い。歩いて10分もかからない距離だ。でも夜じゃないから暗くもないし、こうやって一緒にいるところを誰かに見られたらどうしようと勝手にビクビクしてしまう自分がいる。それに藤崎の家でもあるこの家に入っていくのはどう考えても勇気がいる。もしも家の中で会ってしまったら私はどうすればいいんだろう。

「陽一は多分いないから。」

心の声が聞こえたような彰人さんのその言葉に胸をなで下ろした。そして、不安要素がたくさんありすぎて重要なことを考えていなかったと気づいた頃にはもう彰人さんの部屋に到着し、またベットの上に座らされていた。

そうだ。ものすごく痛いんだった。股の痛みは取れたもののまた同じことを繰り返すと思うと憂鬱になる。そんな憂鬱な表情の私の隣に彰人さんが座った。今さら抵抗なんてしても意味はないからもう無駄な抵抗はしない。おまわりさんだって無駄な抵抗はよせって言ってるんだ。それにヘタに抵抗しても変態な彰人さんを喜ばすと思うとしゃくに触る。懐かないトコロが好みって何だソレ。私はドーブツじゃねぇんだっつうの。

「かずみ、大人しいね。優しくされたいの?」

いちいちムカつくから本気でもうどうでもよくなってくる。

「別に。好きにすれば?」

「大丈夫、最初よりは痛くないよ、きっと。」

彰人さんの手がゆっくりと私の肩に触れた。そしてその手は滑るようにうつむく私のアゴまで移動しグイッと持ち上げる。目の前には彰人さんの妖艶な表情。諦めて目を閉じた。軽く触れるようなやさしいキス。そして彰人さんは静かに制服のボタンをゆっくり外す。

ゆるやかに倒されるのは初体験。いつも君たちは強引に押し倒してくれるもんだから、知らなかったよこんなスローな入り口を。そんなことを考える余裕まである。もしかしたらこれが至って普通というヤツかもしれないと、私の身体を優しく触る彰人さんの手を少しだけ心地いいと感じた時だった。

首筋の辺りを舐められてゾクっとしたのは仕方ない、もうそれはいい。でもちょっとこの確実に吸われている痛みは?こんなに痛いくらいだと相当真っ赤なアザのような跡がつくのではないだろうか。そこは首に包帯でも巻かない限り隠れるとは思えない場所ではないだろうか。

「彰人さん!何した?!」

彰人さんを押しやって、ガバッと起きた私を見つめる彰人さんがまた悪魔の微笑みで私を見ている。

「鏡あるよ、あそこに。」

そう言ってアゴを少し突き出して鏡の場所を示す。稀に見るイヤな態度だと思ったけど、とにかく鏡の方が先だ。鏡に駆け寄り自分の首を確認すると、そこにはびっくりするほど真っ赤なキスマークが堂々と映し出されていた。また沸々と怒りが上り詰めてくるのがわかる。怒っても無駄だけどこればっかりはもう怒らずにはいられない。

「何で!コレ!こんなのつけて学校行けるわけないでしょ!!家に帰ってもどーしていいかわかんないよ、こんなの!消えないんだよ、そう簡単に。どーすんのコレ、信じられない!バカじゃないの!」

最悪だ。帰りに包帯を買って首を怪我したことにでもしないと明日からの生活に支障が出る。首の怪我なんてけっこうな大問題だから傷を見せろと親に言われないだろうか。ああ、ケイちゃんにも。なんでこんなややこしいことをしてくれるんだ、彰人さんは。いちいち腹が立つ。人がせっかく大人しくしてやればコレだ。

ニヤつく彰人さんが心底憎たらしいけど、ついてしまったものは今さら騒いでもどうしようもない。ため息が出る。

「衝動に勝てなかった。
それに…今日はシャワー浴びてないだろ?興奮が押さえられなくて。」

私の想像なんていつも遥かに超える彰人さんの言動と行動。覚悟は決めても毎回恐ろしいし身の毛がよだつほどヤな部分もある。彰人さんが好きにするように私ももう好きにしてやろうかと思った。

「今私が全速力で走って逃げたら逃げ切れると思う?」

「そんなことしたら捕まえた場所で犯すから。」

こんな恐ろしい会話は聞いたことがなくて可笑しくなった。そしてぜんぜん冗談に聞こえない。それもまた可笑しい。可笑しくなったら笑ってやれと素直に笑ったら彰人さんも笑っていた。何かが歪んで狂って行くこの空間が現実ではないようにも思えて不思議だった。

「早くいおいで。」と彰人さんはベットの上で手招きをする。私がゆっくり近付くともう一度私を抱き寄せて押し倒した。真っ赤な跡のある首にまたゆっくりと唇を近づけてくるから、

「もうつけないで。」と、私は言った。彰人さんは私の首筋に軽くキスをして、

「かずみがオレにこれと同じのつけてくれたら、
かずみにつけるのはやめてあげる。」

と、またワケのわからないことを言う。でもつけられるのはもうごめんだから、彰人さんの首につけるしかないんだろう。でもよく考えたら私は自分から人の身体に唇で触れたことなんてない。それはそれでどうしていいのかわからなくて戸惑ってしまう。

「大丈夫、こうやって上に乗ってつけてごらん。」

彰人さんはそう言って自分がベットの上に仰向けになり、その上に私を股がらせるように座らせた。上から見下ろすこんな体勢もなんとも言えず恥ずかしいものがある。ボタンが外されただけで制服のブラウスを着ているからまだいいけれどこれで裸だったら耐えられるとは思えない。つくづく私にはまだ早すぎると思い知らされる。

彰人さんは戸惑う事しかできない私の手を引っ張り、寝ている自分に密着させた。私はそっと彰人さんの首筋に自分の唇を持っていくけれど、予想以上に緊張してしまって上手に動けない。そんな私の身体を抱きしめる彰人さんの手は、私のブラウスを取り去ろうとしている。

「ヤダ、まだ脱ぎたくない。」

「いいから早くつけなよ。」

「い、今つけるから触んないでっ。」

自分のカッコ悪さにヘコみそうだ。今さらヘコんでみてもどうしようもないけれど、ここで緊張するのは慣れれば解消するのだろうかと経験のなさすぎる自分と余裕すぎる彰人さんとの差を恨む。

「かずみ、ココ。わかる?コレ。」

「………。」

彰人さんは自分の股間の硬いモノをその上に乗る私に押しつけて、私が答えづらい質問をする。イヤなことをワザと言われているのがものすごく腹立たしい。私が頬を赤らめて「やだぁ」とか言えば満足なんだろうか。そんなことは何が何でもしてやらない。黙ることしかできない私に構わず彰人さんは更に続ける。

「これからコレが入る…って考えてよ。…でもヤダって言うんだろ?」

ムカつく。ムカつき過ぎる。こんな時は一体どうしよう。こんな体制でブチ切れるワケにもいかないのかもしれないけどもう限界だ。

私はキスマークをつけろと言われている彰人さんのその首に思いきり噛みついてやろうと思った。でも首に思いきり噛みつくなんて、なんて猟奇的なんだと考え直す。だってそれでは吸血鬼か変質者だ。せめてもう少し噛みついても死んでしまわないところにしないといけないと思った。これは冷静な判断だろうか。あまりにムカついているからよくわからない。

緊張よりもムカつきにとらわれながら私は彰人さんの首筋に舌を這わせた。私の腰を掴む彰人さんの手に一瞬力が入った。誰だってこんなところを舐められたらビクッとするんだろう。彰人さんもゾクゾクしてしまうのだろうかと考えながら汗と思われる塩分を感じた。味があると思うと毒を口にしているような錯覚を起こしそうだ。人の身体からの味が禁断の何かのようで悪いことをしているような気さえする。でも逃れられないから覚悟を決めて、思いっきり強く吸いついた。彰人さんの手に更に力が入る。彰人さんは私の腰を強く自分の股間に押し付けつつ、溜息のような吐息を漏らした。

これをさせられていることに腹立たしさを覚えながら、そのまま首筋に舌を這わせ鎖骨の部分に到達した。綺麗で美しい骨の形が私の心をグッと捉えたのと、先ほどからずっと抱えている彰人さんへの腹立たしさが入り混じってどんな表現をしていいのかわからなくなる。頭がおかしくなりそうだと思いながら、私は彰人さんのその美しすぎる鎖骨を舐めた後、しっかりと犬歯を立ててそのままガブリと噛みついてしまった。

「あっ、くぅ……。」

小さく悲鳴を上げる彰人さんの手にまた力が入る。それはそうだ。噛みつかれたら痛いんだろうから。彰人さんは噛みついた私を怒るだろうか。「痛いから噛みつかないで。」と言われたら放してあげようと思った。それなのに彰人さんは苦しそうな掠れた声で、

「はぁ…かずみ、ケダモノのように可愛いね。」

と、また上から目線の嫌味なセリフで私をバカにする。その言葉で一気に頭に血が上る。許せなくなった。それなのに彰人さんの声が、媚薬みたいに耳に残る。何をやっても余裕のある彰人さんの態度がものすごく気に食わない。だからそのままもっと強く力を入れて容赦なく噛みついた。

「あっ…いっっ…………………………っ!」

これでは絶対歯型がつくだろう。さっきはドーブツじゃないんだと思ったけど、こんなことをしてしまう私はドーブツかもしれない。ヤなことされて噛みつくなんてそれこそ知的生命体としては恥ずかしい。でも彰人さんはこれでも平気でいられるのだろうかと思いながら私は噛みついたまま力を緩めなかった。

「……………っ……………」

痛みを我慢しているのだろうか。言葉をなくす様子のおかしな彰人さんになんとも言えない違和感のようなものを感じたような気がした。

その直後、嵐の前の静けさのように静かだった空気は一瞬で変わった。私を上に乗せていた彰人さんは突然起き上がり、そして私を乱暴にベットに押さえつけるように倒した。びっくりしたけれど悲鳴をあげる間もなく、唇を激しく奪われる。息ができないくらいの激しさに恐怖を感じた。

そして彰人さんはゆっくり私の唇を解放すると何も言わずボタンの外れていた制服を荒々しく取り去ってから乱暴にブラジャーをまくりあげ、痛みを感じるほど強く発展途上ど真ん中の私の胸を掴んだ。掴まれた私の胸はそのままぐちゃぐちゃに揉まれ、あまりの痛さに苦痛の悲鳴をあげずにはいられない。

これはものすごくヤバイことになったと思った。彰人さんは噛みつかれて怒ってキレたんだと、噛みついたことを後悔した。でも私に後悔させるための彰人さんのこの行動に簡単にひれ伏すわけにはいかない。痛くても我慢できるところまで我慢してやろう思った。できるだけ黙って耐えてやろうと。

そして声を押し殺す私を見下ろす彰人さんと目が合う。彰人さんの余裕のなさそうな表情が怖い。そして、乱雑に扱われていた私の胸は、彰人さんの両手でガシリと真ん中に掴み寄せられた。それから彰人さんは喰らいつくようにその中心部分を舐め始める。そこから身体中に電撃が広がっていくような感覚に頭の芯が痺れた。呼吸が普通にできないから息が荒くなる。それでも声を押し殺していた私が次の瞬間あげた悲鳴は考えられない激痛を物語っていた。

「あ゛あああぅう、い、痛ぃいっ、いたぁ、いっ、っいたいぃぃいっ…」

そう簡単に耐えられる痛みじゃなかった。彰人さんは私の胸の片方の突起に噛みつき、もう片方を指で強くひねり潰すように圧力をかけている。

「いっ、いたぁぃい、あっあああああぅうっ、…」

私があまりの痛みに驚いていても、彰人さんは一言も発せずに、ギリギリと更に痛みを与えようとする。

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ…きと…さんん、
ぅぅううっやっやめてっおねがいぃぃっはぁっくるし…ぃ」

頭がおかしくなりそうな痛み。とにかく痛すぎて痛みを取ってもらうことしか考えられない。苦しんでいる私にそれでも痛みを与えようとする彰人さんが本気で恐ろしくなった。その後も無言でむしゃぶりつくように強く激しく吸いつかれ、噛みつかれ、潰されひねられ続けた。私は声を抑えるどころの話ではなく、悲鳴のような声をあげるしか術がなかった。

泣くのとは違っても涙が出る。頭の遠く方で「これはなんの拷問…?」と、時代劇に出てくるような拷問シーンがチラついたりした。

しばらくしてから彰人さんは私の顔をのぞき込み、私の目の涙を確認すると一瞬満足気に微笑んでから、ゆっくり痛みを与えていた手を離した。

ああ…助かった…と思ったのも束の間、彰人さんは素早くゴムを装着して、私のスカートの中の下着だけをはぎ取り、突然何の前触れもなく一気に一突きで奥へ入ってきた。

「あぅっ…っ……あっあき…とさ…ん…
…はぁっ、あっ、ああっ、あっはぁっ、やめっ…痛っ」

入った直後から、クライマックスかのような激しい突き上げに驚くしかない。あまりの激しさに、酸素が吸えてない感じで苦しい。痛みとは違う何かもこみ上げてくるようで変な感覚がする。それでも彰人さんはお構いなしに、無言で突き上げる。

私は突き上げられながらまた、噛み付いて怒らせたことを後悔した。どこまでも敵うはずがないことを身体に教えられている気がして悔しかった。

激しさにもうろうとしている私をよそに、彰人さんの息遣いはどんどん荒くなっていき、そして、わりと早めに果てた。私の中に入っている彰人さんのアレがドクンドクンと別の生き物みたいに脈打つのがわかる。彰人さんはぐったりと私に乗りかかったまま、耳元で言った。

「はぁっ、はぁ…ごめん、可愛すぎて耐えらんなかった。」

彰人さんがどんな視点で何を見ているのかわからない。それは私が子供で経験が少ないからなのか、それとも彰人さんが独特で変わっている変態だからなのかもわからない。意味不明。いつもいつも意味不明。それよりも痛すぎるのはカンベンしてくださいと正直に言いたいと思っていた。

「かずみ、なんでそんなに可愛いの?」

彰人さんは、やけにテンション高めにそう言いながら私をギュッと抱きしめて、今度は優しくキスをした。

彰人さんのおかしさは頭の中だけではない、目も充分イカレていると思った。人の好みはそれぞれあるんだろうけれど私は「可愛い、可愛い」と言われるほどに可愛い見た目ではないと断言できる。昔話で世界一のブスが美女に見える魔法をかけられたカッコイイ王子様のお話を読んだ時、バカみたいな王子だと思ったけれど彰人さんがその王子様とダブる。でも王子様は魔法が解けなければ本人は一生幸せなんだからいい。彰人さんには一体どんな魔法がかけれられているんだろう、彰人さんは私が何に見えるんだろう、魔法の根本がわからない。

…それにしても私は彰人さんとこんな関係を続けながら本当にケイちゃんとつきあっていくことができるのだろうか。彰人さんがケイちゃんに言わなかったとしても、私がこのまま黙ってケイちゃんとつきあえるとは思えない。

何かを諦めるには絶好の脱力感漂うこの身体から彰人さんがアレを抜いて、それからもう一度私にキスをした。


カタン…


その時、部屋の扉が静かに閉まるような小さな音に気がついてキスをしたまま入口の方を見た。心臓が跳ねた。

「人がっ!!!」

そう言ってガバっと起きた私は急いでその辺に散らばった服で身体を隠す。人といったらここは彰人さんの部屋なんだから、ご両親か藤崎しか考えられないワケであって、もう、ものすごく最悪だ。どうしよう。どうしよう、見られた!見られてた?何をどこまで見られたいた?

彰人さんは素早くアレの処理をして、でもズボンのチャックは開けたまま部屋の扉の外へ向かった。廊下で話をしている声が聞こえる。私は急いで制服を着ながら誰に何を見られていたのかを考えるとすごく不安になった。

数分後、帰ってきた彰人さんが

「陽一、あいつ見てないっていってるけどアヤシー。
まぁ、興味ある年頃だしな。」と言った瞬間目の前が真っ暗になった。

「最悪…どうしよう…私席となりなんだよ?」

「見られたもんは仕方ないだろ?」

「信じられないくらいヤダ。」

「かずみの声、すごかったからなぁ。」

「…………………。」

「かずみ喉乾いただろ?待ってな、飲み物もってくる。」

そう言って彰人さんは私を部屋に残して飲み物を取りに行った。このイヤすぎる展開と、彰人さんの悪魔のような言動に私の心の平和指数はゼロ。いやもうマイナスかもしれないと思った。噛みついた私が悪いのかもしれないけど、100倍くらいになってこうやって返ってくるんだからかわいそうなもんだ。そのうえ藤崎にバレた可能性まで。いよいよもう選べる道がないと思った。

いろいろと一人で考えごとに頭を使っていると、部屋の扉が開いた。彰人さんが戻ってきたとばかり思って安心してその方向を見ると、そこには学校で毎日見ている顔があってすごくギョッとした。今ここに学校で隣の席である藤崎の姿があるのは、ここが藤崎の家でもあるということをわかっていても変な感じがした。

藤崎は真っすぐ私を見ていた。

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| 【恋愛】B面トライアングル | 02:02 | comments:2 | trackbacks(-) | TOP↑

COMMENT

読み終えた後、ゾクッときました。
目撃した藤崎と目撃されたかずみの瞬間がリアルに想像させられゾクッときました。

だんだんとセックスに抵抗を感じなくなってきた中学生かずみ。
そんなかずみを取り巻く、精神的にMっ気のあるケイちゃんと、フェチ系変態の彰人さんと、明らかにサディストな藤崎。
主人公が中学生女子だけに心配です。
いらぬお節介かも知れませんが、今後のかずみが心配で心配で堪りません。

おもしろかったです。
次回を楽しみしてます。

| 愚人 | 2011/07/18 11:58 | URI |

>愚人様

◆コメントありがとうございます◆
かずみ、大変なことになってますよね、可哀そうですホントに。(自分で書いといて何言うかw)
しかし、中学生だからこそ感じられる滑稽さがあるから、悲惨にならないで済む部分もあったり。浅はかだからこそ進む道を間違えたり、間違えるからこそ事が起きる、絶妙な年齢って危うくて素敵です。
かずみの周りにはマトモな人がいなかったのがそもそもの不幸の始まりのようにも思えますが、かずみ本人も相当変わり者ですからきっと大丈夫です。

しかしカンノウは難しい。ホラー寄り、もしくはお笑い系のカンノウになってしまいます。
甘い、とことん甘いんだコノヤロウ!なカンノウも目指してみようかと思いますが、きっと最も苦手とする分野だということにすぐに気がつき、蜂蜜でも垂らせば甘かろう…とバカなことをするんだと思います。

かずみを心配してくださってありがたいです。
次回は藤崎との対面場面からですが、さて一体どうなることやら…

| 玉蟲 | 2011/07/18 19:24 | URI |















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