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B面トライアングル<10>

B面トライアングル<10>【突然やってきた犯罪級なその日】

今日も学校では根暗人間に徹している。昨日はよく眠れなかった。部屋で一人、ケイちゃんと肉体関係を持ってしまったことについて考えていた。急にこんなことが起きるなんて人生とは不思議だ。何だかまだ信じられない。肉体関係というのはオトナの話で、そして普通は「快感」を得られるものだと聞いていたから、あまりにもかけ離れていたことに正直驚いた。

あの痛みがいつか快感に変わると言われても、今はとても信じる気にはなれない。何が楽しくてあんなバカみたいに痛い思いを好んでするのかが理解できない。でも何かの契約が結ばれたのは確かで、彼氏が出来たのも事実だから、今後はそっち方面のことを何も考えないわけにもいかなくなるんだろう。

こうやって学校で根暗人間を通している私の身に起こったことを誰が想像するだろうか。そんなふうに考えて教室の中を見回すと、あのコもそのコもあのデブもみんな隠れてこんな目に合っているのだろうかと思ってしまう。…でもあのデブはないな、想像したら気分が悪くなった。

家で極力勉強をしたくないから、授業はとりあえず聞く派な私だけど、今日は余計なことをたくさん考えさせられてしまうからあまり集中できない。教室の中、チラチラと目の端でケイちゃんの姿を確認してしまう。昨日抱き合っていた男の人だと思うと落ち着かない。しかもそのズボンの中身を見たことがあると思うと、今すぐ机に頭をガンガン打ちつけてしまいたくなるほど恥ずかしい。同じ教室という空間に肉体関係者がうろうろしている事実を簡単に受け入れるのは難しい。

オトナは大変だ。やっぱり子供とは違う。こういう感情をきちんとセーブしつつ、平然としていなければいけないんだ。

そんなふうに昨日のことを考えずにはいられない、頭がそこそこピンクな私に、突然隣の藤崎が話しかけてきた。ムカつく藤崎とは話をしたくないけれど、話しかけられれば完全無視をするわけにもいかない。藤崎は私の今日の放課後の予定を聞いてきたのだけれど、なぜそんなことを藤崎に聞かれなくてはいけないのかと思い、とりあえず理由を聞いてみることにした。

「…放課後?なんで?」

藤崎は面白くもおかしくもないような表情というより、藤崎も話したくないけど仕方ないといった感じで私の質問に答える。

「今日うちのバンドの練習あんだけど、終わる頃、園田さん来れない?
って兄貴が言ってる。」

「え、私?今日?」

彰人さん…何の用事だろう。少しだけ心臓が高鳴った。でも気になってもここは行くべきじゃないと思う。彰人さんに気持ちを掻き回されることはまず間違いない。また歌を歌われて首輪を作られても困る。行ってはいけない。絶対ダメだ。私がバカでもそれだけはわかる。

「兄貴たち、ピアノのコード教えてもらいたいって言ってた。」

ピアノのコード?ピアノのコード。そうか、そういう目的があるのか。それに今藤崎は「兄貴たち」と言った。彰人さんだけではないようだ。それなら別に問題はない。音楽の傍にいられること自体は私にとっては嬉しいことだし、ライブハウスを見学させてもらったりしているのだから借りはきちんと返すべきだ。

それに、気持ちの踏ん切りをつけるために、彰人さんとそういう気持ちで会いたいとも少し思う。2人きりでなければ彰人さんもそんなにからかったりはしないだろう。

「うん、分かった。何時に行けばいいの?」

「5時頃かな。あ、ピエロね。」

昨日までの私とは違う、大人の階段を半歩くらいは上がった今なら、冷静になれるのではないかと思った。憧れや淡い恋心のちょっと強引な早めの卒業の記念に、彰人さんたちにピアノを教えるなんていうのも思い出の一つになると軽く考えていた。


私は藤崎に言われた時間の少し前に、ピエロの4階の、あの古いピアノがある物置のような部屋の扉の前に着いた。3階のピエロを素通りして、物置のようなこの4階に来たのは、一人で静かにあのピアノの空間を眺めたいと思ったからだ。ケイちゃんとのことで彰人さんのことを考える時間はなかったけれど、初めて自分のために歌を歌ってもらったことも心に残らないと言ったら嘘だ。というより、彰人さんがすごくステキだった。まだ胸に残るあの曲を聞いたこの場所で、静かな空気にひたってから何事もないような顔をして、3階にいるであろう彰人さんたちのところへ行こうと思っていた。

彰人さんへの「憧れ」はいいとして「恋心」はもう「浮気」に分類されるらしいから、自分には彼氏がいるのだということをしっかりと胸に刻み込もうと思う。ケイちゃんは「彰人さんに取られる」と心配していたけれど、彰人さんは彼女もいるんだし、私とケイちゃんが付き合っていると言えばもう大丈夫だと思う。憧れの王子様は遠くから見るのが一番いいと冷静に思える今の自分を、まぁまぁ好きになれそうだった。

4階の一つめの重い扉を開くとピアノの音が聞こえた。誰かいる。もしかして練習はもう終わったのだろうか。

私は重い扉の中に入ってまた扉を閉め、2枚目の薄い扉を開いた。そして、細長い室内の見える3枚目のガラスの扉の奥に彰人さんの姿を見つけた。

彰人さんがここにいるとは思わなかったから少し驚いた。ピアノに呼び寄せられて彰人さんのもとへ案内されたような気がして、不思議の国のアリスのようなファンタジックな気分を味わえた。だから少しだけこの偶然を嬉しいと思ってしまった。私はゆっくりとガラスの扉を開け中へ入り、彰人さんに声をかける。緊張はするけれど極力それを表に出さないよう務めた。

「彰人さん、もう練習って終わったの?」

彰人さんは、ピアノのところでにっこり笑って手招きをしている。待ちわびた恋人を見つけた時のような、心底うれしそうな笑顔が私の心を捕らえる。昨日までの私ならドキドキしてしまっていたのかもしれないけれど、今日の私は大丈夫。少しオトナになったことが自信に繋がっているようだ。

私は2人きりであることを深く考えもせず、ゆっくりとピアノのそばに歩いて行って、彰人さんの座るピアノ椅子の左側で止まった。この位置からだと彰人さんの右斜め後ろの首筋が美しい。彰人さんは私の方を見ずに、ピアノの鍵盤を見つめながら言った。

「おまえ、慶太と付き合ってんだって?
昨日、慶太から聞いたよ?」

「えっ、あ、うん。昨日の夕方からなんだけどね…。」

いきなりこの話題でびっくりしてしまった。ケイちゃんは「彰人さんに言う」と言っていたけれど、もう伝わっているとは思わなかった。まさか「ヤッタ」まではいくらなんでも言ってないだろう。言ってないことを祈ろう。恥ずかしすぎる。

彰人さんは鍵盤から目を離さずにそのまま「ラ」の音をポンと押しながらひっそりと呟く。

「オレ告白前にもってかれてすごいショック…。
なぐさめてよ、かずみ。」

ブラックだ。彼女がいるのにこういうことを平気で言う。中学生だと思ってなめんなこの野郎、と言いたくなるのはこういうところだ。いちいち真に受けたらいけない。ここは、動揺を見せては負けてしまう。気を張らねば。しかし、毎回毎回疲れる人だと思った。

鍵盤を見たままの彰人さんがどんな表情をしているのか分からないのが少し気になったけど、とりあえず言葉のキャッチボールで負けるわけにもいかない。

「彰人さん、そんなことばっか言ってると彼女さんに言いつけるよ?」

私は、彰人さんの言葉なんてぜんぜん気にもならないような口ぶりで、サラリとスマートに冗談として流した。これが動揺しない状態で言えるなら、いくらでも負担にはならないと思うけれど、今の私にはかなり難易度の高い技だ。早くいろんな経験を積んでこんなのも余裕の大人になりたいと心から願う。ジタバタしている水面は見せたくない白鳥のような中学生は水の中からみたらすごくカッコ悪いんだろうな。水の中は見せないけど。

「おまえさぁ…オレのこと嫌い?」

はぁ?!なんでそういう質問。また言葉のキャッチボールは無視だ。常に自分のペース。自由な発想の人がうらやましい。そう思いながら返事をした。

「別に…嫌い、ではないよ?」

でも今日の彰人さんはちょっと変かもしれない。「好き?」と聞かれたら答えづらいけど「嫌い?」と聞かれたら、嫌いではないと答えるだろう、普通。

そう思った瞬間、いきなりガタッと音がして、彰人さんはピアノ椅子から突然立ち上がった。私をじっと見る目があまりにも真剣だったからちょっとびっくりしてしまった。今の会話の中にこんなに深刻な顔をする場面が作られるほどのセリフはあっただろうか。

言葉がないと不自然になる沈黙の1歩手前、私から何か言葉を掛けようとしたその時、彰人さんは突然私の右腕を乱暴に掴んで、フロアらしき部分に積み上げられているいくつかの古いソファの中の、一番面積が広い部分に投げるように押しつけた。私の掴まれた右腕はそのまま強い力で掴まれていて、左肩は起きられないように抑えつけられている。

何!何で?!どうして?!何が起こった!

何が起こっているのかわからなくて、ただただビックリしている私を見下ろし、突き刺さるような声で彰人さんは言った。

「なんで、慶太とヤッタ?ホントにヤッタの?」

怖い。けど、どうしてこんな体制でそれを聞くのかが問題だ。
びっくりしてしすぎて声が出ない。目線をどこにもっていけばいいのかわからなくて彰人さんを見てしまう。怒っているような整った顔はすごい迫力だと思った。

私の心臓は音が聞こえるのではないかと思うほどドクドクとうるさくなっていく。だけど妙に心拍数はゆるい。

ドクン……ドクン……ドクン……ドクン……ドクン……

今は悲鳴をあげるところだろうか。
それともまだ冗談ですませられる状況だろうか。

何が起きているのか分からなくてまだ言葉が見つからない私を、彰人さんが静かに見つめている。どのくらいの時間なのか感覚がぜんぜんないけれど、目を離すタイミングがつかめない。彰人さんの表情は、嘘みたいに真剣で怖さを感じずにはいられない。真剣な彰人さんの表情が一瞬柔らかく緩んだように見えた直後、その表情とはかけ離れた信じられないセリフを彰人さんは言った。

「慶太優しかった?オレは慶太みたいに優しくはしないよ。
あ、できないの間違い。マジ、キレそうだから。」

脳みそがまだこの状態と彰人さんの言葉を理解しない。

慶太みたいにやさしくしない…って何を?
何をやさしくしないの?じゃあ、きびしくするの?…何を?

何を?

嘘だ。誰か。大変だ。私は次に何を言えばいい?
何が起ころうとしている?

さっきまでのゆるかった心拍数は、音の大きさは変わらず、ものすごい速さに変わった。これは早死にするんじゃないかと思うほど、呼吸もまともに出来ているとは思えない。まさかとは思うけど、彰人さんは私と「ヤル」つもりなのか!

嘘だ。彰人さんが????
なんで!なんで!なんの必要があって?何のために?

頭をフル回転させて考えてもろくなことが考えられない。今は何を考えるべきだろうか。そうだ、こんなことをするのを「ヤメテクダサイ」と言うべきだろう。こんなことは「イケナイコト」だと思います。お互いに彼氏も彼女もいるではありませんか、と言わなくては。それに「ヤル」のは無理だ。痛すぎて無理。ケイちゃんと「ヤッタ」と思っているかもしれないけど、ちゃんと「ヤッタ」と言える状態かといわれたらそうでもない。ケイちゃんとは「ホントはヤッテない」と言えば助かるだろうか。重点を置くところはそこで間違っている?いない?

ぐるぐるといろいろ考えるけど、一つも口に出して言えてない。
そのうちに、彰人さんの顔が近付く。
どうしよう、どうすれば、まだ信じられない!
次の瞬間に、冗談だよって、ちょっとからかっただけだよって、言うんだよね?
言うんだよねぇ!彰人さん!

「かずみ、オレが怖い?オレは自分が怖いよ。
今どうしようもなく危ないヤツになってるね…。」

彰人さんはゆったりとそう言った次の瞬間、突然襲いかかるように私の制服をはぎ取るように脱がせ始めた。

「ヤダ!彰人さん、なんで!やめて!
待って!ヤダってば!やだぁぁぁあ!!!」

結局いろいろ考えても、私の口お決まりのセリフしか口から出てこなかった。

信じられなかった。そして、恐ろしいほどの力で強引に襲われる恐怖を初めて体験した。せめてもの救いは、キモチワルイ、ブ男に襲われているわけじゃないということだけど、それでもそう簡単に許せるものでもない。なんで彰人さんは彼女もいるのにほかの女、しかも中学生にこんなことをしなかればならないのかわからない。私が好きなんだろうか。いや、単純にそうだとは思えない。

昨日はケイちゃんの気持ちが伝わって来たから、恐怖に関してはこういう恐怖じゃなかった。今はその何倍かは恐ろしいと実感している。

私は抵抗しながら、パニックであるにも関わらず、制服のボタンがいくつかとれた…とか、

スカートを剥ぎ取られて下着を見られるのがイヤだと思ったけど、下着はすぐにちぎれてしまいそうなくらいひっぱられて脱がされたから下着なんて関係なかった…とか、

温泉や銭湯に行くのも恥ずかしいと思ってるのに、なんで毛の生えてきてしまったその部分を彰人さんの前にさらけ出させられているのか…とか、

ブラジャーをずらされる瞬間、ケイちゃんにだって謝りたいと思うこの発展途上もいいところの胸を見て、はたして男という生物は楽しいものなのだろうか…とか、

もしかしたら、私は普通にオトナの女の人みたいな魅力があるとは思えないのが一番イヤなのかもしれない…とか、

自信があったら喜んで襲われてやるとは言わないけど、ここまでものすごくイヤな気持ちにはならなかったのかもしれない…とか…

もう逃げられる気がしない状況だと確信してからは、そんなことを考えた。

彰人さんは、私の制服と下着をあらかたはぎ取ると、しっかりと私の両足の間に自分の腰を入れて、そして両手首を押えてじっくりと私を観察するように見下ろしながら言った。

「鳴いてよ、もっと…。」

怖い。信じられないくらい怖い。なんでそんなゾッとすることを言うんだろう。殴られるよりも確実に怖いと思った。

それなのに、そんなあり得ないことを言う彰人さんのその絵がカッコよすぎて、別の感情が生まれてしまう私は今、どこか壊れてしまっている。彰人さんから目が離せないのが悔しい。私はなんでこんなところでほとんど裸にされた挙句、まだ彰人さんに見とれることができるのかと思うと自分で自分が信じられない。

それから彰人さんは私の手足の自由を奪ったまま、圧倒的な強さを誇る肉食恐竜が、そこら辺のどうでもいい瀕死の草食動物を食べるように、私の首筋を美味しそうに舐めた。私は身体中の血液が逆流しているかのような錯覚を覚え、足の先から頭の先までが一本の神経に変化したみたいにざわめいた。

心臓が破裂しそうなくらい、脈打つというより小さな爆発を繰り返しているようだ。頭の後ろの方まで爆発音が響いている。

「心臓がすごいことになってるよ?バスドラみたいだ。」

彰人さんは首筋から流れるように舌を這わせ、鎖骨を通るときにそう言った。

「ヤダ、だって、普通、なんで、こんな、
こういう、どうして、こんな、無理で、なんで…。」

あまりの出来事に、心臓の動きがおかしいと知りつつも口を開いたら、私の口からはわけのわからない単語しか出てこない。もちろん心臓のせいでこんなことになっていると頭ではわかっているけど、どうにも出来ない。

「あき…とさん、ヤメ…テ…。」

ケイちゃんとは違う大胆な舌の這わせ方に仰け反ってしまう。首筋から鎖骨を通り胸へ。全身に鳥肌が立つような感覚。気が遠くなるような意識の中、本当に食べられているみたいな錯覚を起こす。死ぬ。絶対死んでしまう。きっともうすぐ心臓は止まる。ショック死だ。

「ヤダ…なんで、あきっ……。」

私が何かしゃべりだそうとすると、彰人さんは外国人の映画のラブシーンで見るような深いディープなキスで私の口を塞いだ。ゆっくりと、深く、落ちる感覚だった。

「んんっ……ぅんん…ん。」

全身がしびれるようなキス。おそらくこういうので「濡れて」しまう。きっと好きでもない人にはこんなふうにならない。ということは、私はやっぱり彰人さんが好きだということになる。でも、そうじゃないんだ。だって私はケイちゃんだって本当に好きなんだ。昨日のようにケイちゃんが突然扉を開けて救いだしてくれたらいいのに…と思った。

彰人さんは抑えつけていた私の手首をゆっくり離す。そして骨ばった両手で私の身体に触れる。素肌に触れる手の持ち主が彰人さんだと思うだけで死にそうだ。塞がれた唇はまだ解放してもらえない。怖いし恐ろしいし恥ずかしくてものすごくイヤなのに気が遠くなる。ここまで私が大人しくしていては、合意だと思われてしまうだろうと思ったけどぜんぜん動けない。

ゆっくりと触れていた彰人さんの手は、だんだんと激しく強く動き回る。恐ろしくなって重ねていた唇から逃げ出そうと首を横にずらしたら、彰人さんは突然私の髪の毛を掴んで「ダメ。イイ子にして?」と優しく呟いた。でも優しいのは言い方だけで、言ってることとやってることが最悪だと思う件に関しては、恐ろしすぎて突っ込めない。引っ張られた髪の痛みに少しの優しさも感じられず、代わりに狂気じみた何かを感じ取った。

私はとりあえず今自由になっている両手で、無理とはわかっていても、密着している彰人さんの体を離そうと抵抗し始めた。抵抗して殴られるならそれでもいい。黙って辱められるよりはましだ。

すると彰人さんはあっさりと離れてくれた。殴られる覚悟まで決めていた私は別の意味で驚きを隠せない。彰人さんと目が合う。でも彰人さんの表情が読めない。なんの微笑みだろう、決して純粋ではない微笑みで、私を見下ろしてる。

「そりゃするよね、抵抗。だから、こうなるよ?」

なんだろう、また意味不明なこと言って…と思ったと同時に目に入ったのは真っ白なヒモだった。嘘だ。信じられない。彰人さんは私が倒されているソファの背もたれ部分に置いてあった白いヒモをユラユラとさせて私に見せた。そして私の両手首を掴んで、白いヒモで縛ろうとする。そんな馬鹿な!

「ヤッヤダ、ヤダ!ヤダヤダ、何考えてんの!
彰人さん、彰人さんヤダ!」

私は別の意味の恐怖を新たに感じて、もう心臓がもたないのではないかと思うほどバクバクと早まった。ヒモ!ヒモで縛るなんてことが世の中にあっていいわけがない。世の中にはいいわけがないことをする人もいるのかも知れないけど、なんで!今!私!…そして彰人さん!!!

「だって、仕方ないじゃん。」

仕方ない?仕方ない?なんで?仕方ない?意味が分からない!

「な、なんんで!し仕方なくなないよっ!
なんでそそそんなこと!」

ヤバイ、声が震えてるし裏返ってる。私は声が震えたり裏返ったりするくらい恐怖を感じていると自分で思った。それなのに彰人さんの表情はすごく普通だ。というより口元は微笑んでいる。ニコッとしているようにさえ見える。

「おまえが好きすぎて頭おかしくなりそーだから。」

きっともうダメだ。彰人さんは普通っぽくない。何を言ってもたぶん無駄だということをなんとなく悟った。「彰人さん、あなたの頭はもうおかしくなっていると思います」と言いたかった。

「はい、手、貸して。」

「ヤヤヤヤダ!おかおかしいよ、こんなのっ。」

「ダメ。ゴムする間に逃げられちゃったらヤダもん。」

「ヤダ、ヤダヤダ。ヤダ。」

「早く、手。」

「ヤ、ヤダ!」

「はい、でもダメ。」

「に、逃げ、ないっ…から、縛るのっ縛るのはヤダ。」

「…絶対逃げない?抵抗しない?…」

「……………………。」

「逃げるなよ?」

そう言いながら彰人さんは一旦私の足の間から離れた。
私はもまともに話すこともできない自分の弱さを恨んだ。言語に障害をきたすほどの出来事は、こんなにも突然日常の中にやってくる。戦いには合図がないことを学んだ。

私から離れた彰人さんはゴムの準備をしているようだ。もうカウントダウンが始まってしまった。今なら走って逃げられるだろうか。いや、まともな言葉も話せないような状態なら身体もどこかおかしくなっているはずだ。うまく逃げられるわけがない。そして扉が3つ。しかもこんな全裸に近い半裸状態。ダメだ、扉を開けている間に追いつかれて連れ戻されて縛られる。殺されて埋められたらどうしようとまで考えるともう動けない。悔しすぎて涙も出ない。

彰人さんは、もしかして本当に変態…?

殺されるとしたら、死ぬ前に聞きたい。
「なんでこんなことするんだ。」と。

考えている間にもうゴムが装着されてしまっている。ダメだ。もうダメだ。またあのすさまじい痛い思いをするのか…いやきっと動かれたらそれ以上。そして、変態だったら何をするのかがワカラナイ。ケイちゃんのように途中でやめてくれるとも思えない。

彰人さんはズボンの前だけを外してトランクスをずらし、ゴムを装着したアレを隠す気もなく堂々としているけれど、私にとってそれは衝撃的すぎて、信じられなさすぎて、恐ろしすぎて、息さえもできないくらいなんですよ、神様!

なんて整った顔立ち、なんて長い足、なんて細くてカッコイイ腰、そして見てはいけないモノが真ん中にある!信じられないんだよ、まだソレが!

ワァァァアア!もうダメだ。殺される。埋められる。怖すぎる。悪魔の生贄はもっと美女なはず。私は自分で言うのもなんだけどこんなにもちんちくりんではないか!何で私?何で私?何で!

彰人さんはゆっくりと近づいてくる。
ああ、ジェイソン。ああ、フレディ。ああ、ジョーズ。
勇気を振り絞って最後の抵抗!

「ヤダ!、彰人さん、なんで!なんでこんなことすんの!」

彰人さんは鋭く真剣な顔をしたかと思うと、私の左足の太ももの内側を痛いくらいに掴み、すごい力で足を開かせてこう言った。

「…うるさい、慶太とヤッてんじゃねえょッ!」

そのままガツンと腰を押さえつけて、少しは濡れているのかもしれないけれど、まだ余裕で入るとは思えない私のその場所に、一気にアレを突き上げた。

「いたぁああいいィいいっ!!!」

びっくりするような痛みに驚いた。
痛い!やっぱり痛い!死ぬほど痛い!痛すぎる!
いきなりだから昨日以上だ。苦しすぎる。

「やっヤメテ、い、痛いぃぃぃい、
はぁっ、無理、むりぃぃぃ。」

「…かずみ…おまえ、ムリヤリ…
こんなことされても泣かないんだね。可愛いね。」

「はぁっはぁっうぅっ、くぅぁあ、いっいたぁっあっ、はぁっ…」

「まだ気持ちよくなんてないよね…。
痛い?…でも、もうダメ。絶対離さないから覚悟してね。」

そう言いながら彰人さんは激しく容赦なく突き上げてきた。

「あ゛うぅっ、あ゛っ、いたぁっ、はぁっ、くうぅっ…」

さすが変態!ずいぶんひどい事言ってるし!
くぅっ…マジで死ぬ!痛すぎるっ!
なんで彰人さんは私にこんなことするんだ。彼女は!
それにしても私は無様すぎる!
セックスが気持よくないお子様なんだよ、悪かったな!
そんな私にこんなことして楽しいのか、彰人さん!
もう頭に来る、腹が立つ、バカヤローと叫びたい!

悲鳴をあげることしかできないことに、怒りが押し寄せる。けれど彰人さんの次第に余裕のなくなっていく表情を目の前にすると妙な愛しさも湧いてくる。どんな角度から見てもカッコイイのは卑怯だ。彰人さんが変態でもまだそんなことを思うどうしようもない私。薄暗いこの物置のような部屋の鼓動のように、私の悲鳴と彰人さんの息遣いが入り交じって響いている。

やっぱり私が好きだからという理由でこんなことをしているとは思えない。というより、思えなさすぎる。変態の考えることはわからない。心も身体も痛い。痛すぎるから、痛みを堪えるのに必死で、泣いてる余裕すらない。

しばらく突き上げられていると痛みにも少しは慣れて、口がきけるくらいの余裕がやっとできた。

「はぁっはあぁっ、あっ彰人さんっんんっ、
も、ヤメ…て。痛っいたいぃっ。」

私は、どうにか彰人さんを見上げて言った。睨みつけてやりたいけど苦痛の表情しかできない。これがケイちゃんだったらたぶん張り倒してでも止めさせてるかもしれない。でも彰人さんは変態だし、首とか絞められて殺されるかもしれないからできない。心のどこかでは本当に殺されて埋められたりしないだろうかと不安に思ってしまう。

そんな不安との葛藤と苦痛に耐える状態の私に向かって、彰人さんは切なげな掠れた声で言った。

「…かずみ…ダメ……もう少し…で…イクからっ…我慢してなっ。」

ああ…彰人さん、なんて切なそうな色っぽい顔。
そんな顔を私に向けて何を言うんですか…。
そんな顔見せられたらゾクッとしますよ、誰だって……
それなのに、あなたはなんでそんな変態なんですか…。
激痛がなかったら素晴らしいサービスショットですね…。
ちがうっ。そんなことを考えている場合じゃないっ。
そして、痛い!痛すぎる!もう無理!死んじゃう!
だから早く終わってくれぇぇぇぇ!!!!

「あ゛ぁぁっはぁぁっ、あぅうぅっ、
いっいたぃぃっ、はぁぁ、くっ、くぅぅっ。」

更に激しく突き上げられて、あまりの痛みと苦しさに、苦痛の表情はそのまま、ヒドすぎる彰人さんを睨みつけた。泣きたいくらい痛いけれどもう悔しすぎて泣けない。チクショウ、家に帰ってから泣いてやる!

私に睨みつけられたまま、最高に激しくなった彰人さんの動きは深く突き上げたところで止まった。そして彰人さんは恐ろしいくらいに色っぽい顔をして果てた。聞こえるか聞こえないかくらいの掠れた吐息とともに。一瞬痛みを忘れるくらいの芸術的なものを見たような気がした。

彰人さんはイッたあと、何も言わずにぐったりと覆いかぶさるように私に体重を預けた。もう早く抜いてくれ、とは思わないほど止まっている状態であれば痛みはなかった。

止まった動きに対して、とりあえず終わって助かったと思った。これから考えるであろうことが面倒すぎて考えたくもない思うけど、それでも考えないわけにはいかない。こんなことになって、私は一体これからどうするんだろう。今私の上にぐったりと体重を預けている彰人さんをどのように対処すればいいのか想像がつかない。そして一番驚くのはそんな彰人さんを心底嫌えないことだ。こんなことになっても嫌えないというのは好きなんだろうか。変態なのに。…もうどうしようもない。

それにしてもヒド過ぎないかなコレ。俗に言う「喰われた」というヤツだ。そう考えるとハラワタが煮えくりかえってくる。「好きか嫌いか」、「イイか悪いか」、「許せるか許せないか」、「泣きたいかムカつくか」、いろんな感情が交差しているけれども私に分かるのは「悪くて、許せなくて、ムカつく」だけで、一番重要な「好きか嫌いか」がはっきりしない。「悪くて、許せなくて、ムカつくのに好き」等という複雑な想いは勘弁してほしい。でもこんなふうに無理矢理犯されても彰人さんに見とれることができる自分も許されるべきではないと思った。私のこの感情は一体何なのか、嫌いになれなかったら残るは「好き」しかないのか、ケイちゃんを好きだと思う気持ちはどこへ行けばいいのか、考えれば考えるほどわからなくなる。

そして、今までの地獄のような激しさから一変、心臓の脈打つ早い鼓動が聞こえるくらいに静かだ。こんな沈黙はいつどのように破られるのだろうか。これから彰人さんは私に対して一体何と言うのだろう。いつもの軽々しい雰囲気で「ゴメンネ?」と言われた後、「遊びだから気にすんな」的なコトをサラッと言われたら迷わず張倒そう。顔のイイ男はそういうヒドいことを平気でできる生き物らしいから、傷ついてなんかやるもんか。

だんだん腹立たしくなってきた私は不機嫌そうな声で、上に乗っているまだ鼓動の早い彰人さんに言った。

「ねぇ、なんか私に言う事あるよね。」

彰人さんは黙ったまま、私の頭をよしよしと撫でてから、

「かずみ、もう絶対、慶太とヤルなよ。」と耳元で囁いた。

何と答えていいのかわからない。ケイちゃんは私の彼氏で、これから2人でゆっくりと何かを育んで行くはずの人だと思っているのに、慶太とヤルな?なんでそういう勝手なことを言うんだろう。予想してなかった意外な言葉にどうしていいのかわからず黙り込んでしまう。そして黙る私の唇に彰人さんは噛みつくような激しいキスをしてから、

「分かった?」と言った。

沸々と怒りが込み上げてくる。彰人さんはいつもマトモな答えを用意しない。どうしてそう勝手なことをして勝手なことを言えるんだ、彰人さんは!

「ワカラナイ!意味が!」

私がそう言うと、彰人さんはもう一度私の唇を激しく奪う。なんでこの人はこんなことをすのかが、もうさっきからぜんぜんワカラナイのに、私はちっとも抵抗できていない。でももうヤラレちゃってるわけだから、今さら暴れたってなんの意味もないように思えて、抵抗する気も失せる。まるで恋人どうしのように重なり合っている私たちの影がこの部屋に存在する事実がまだ信じられない。

彰人さんは唇を離すとしっかりと私の目を覗きこんで笑顔を作りつつ言う。

「慶太とは別れろってこと。」

「ナンデ!ヒドイ!彰人さん、酷過ぎる!
なんでこんなことして、そんなこと言うの!
意味がワカンナイよ!私はケイちゃんとは別れないから!」

「へぇ…でもオレも慶太に言うよ?かずみとヤッたって。
あいつオレにそう言いやがったんだから。
おまえらお子様だと思ってたら意外にやること大胆でさすがにビビったわ。」

彰人さんは、私の中にまだ入ったままの体勢から、ゆっくりとアレを抜いて、ガサゴソと何かしながらふてぶてしい態度。

そしてケイちゃん…。ケイちゃんはなんて余計なことを彰人さんに言うんだ。なぜかそのせいでこんなことになっちゃったじゃないか。ケイちゃんも彰人さんも勝手だ。私は初体験からたったの二日で2人の男と肉体関係を持ったことになるじゃないか。そんなのあり?ないよ、普通。

イライラしつつ、彰人さんがゴムの処理らしき動作をしている後姿が目に入ると、こんなことを思っている場合じゃないのに思う。昨日見た肉の棒といい、今日見た肉の棒といい、男の人みんなについているものなんだ、普段はどんふうにしまってあるのかな…と。

ああ…こんなことぜんぜん思ってる場合じゃないのに。

そして彰人さんと肉の棒…。複雑な気持ちだ。淡い恋心?アコガレ?どんだけ思いっきりガタガタに崩してくれんの、この人は!ドキドキしつつ、胸が苦しかったのかもしれない貴重な想いを返せ!と叫んでやりたい気分だった。

彰人さんはゴムの処理を終えると、まだその場から動けずにいる私の上にもう一度ガバッと襲いかかるように近づき、だけど優しく抱きしめた。

「慶太が好き?慶太と別れない?
じゃぁ、もう一回ヤッちゃおうかなぁ…。」

「な、な、なんで?なんで彰人さん彼女いるじゃん!」

「あぁ、別れるよ?これから。もともとそんなに好きじゃないし…。」

なんということだ!やっぱり悪魔のような男って実在するんだ。もともと好きじゃない彼女って何だ。彰人さんくらいカッコよければきっと許されるセリフかもしれないけど、私を巻き込まないで欲しかった。だってコレがほとんど初体験のようなものじゃないか。ケイちゃんはこんなに動いてないんだから。ケイちゃんなんてイッてないんだから。それに彰人さんは私が好きなわけじゃない。

「彰人さん、私が好きなわけじゃないでしょ!」

「なんでそう思うの?」

「はぁっ?普通に考えて中学生真面目に好きになる高2がいるかっ!」

「いるよ。かずみが大好き。
おまえしかいらないけど、おまえだけはどうしてもいる。」

「なんで!彰人さん変態!おかしいよ、こんなの!」

「そ、オレは普通に変態お兄さんだよ?だからおかしくない。」

「なんだソレ!!ぜんぜん意味わかんない!」

いくら意志を強く持とうとしても、こんな悪魔においしく食われてしまっては、はっきり言って為す術がわからない。食われてしまったと諦めて、彰人さんの生贄になれって言うのか?!

彰人さんは本当に何がしたいんだろう。私が好きで、彼氏や彼女として普通につきあって、私を想って大事にしてくれるとか、そういうのはあるとは思えない。だって無理やりこんなことができる。ヤダって言ってるのに聞く耳持たないなんて、どんな悪人だっていうハナシだと思う。いやもう極悪人ランクだ。

「…彰人さんは本当は何がしたいの?」

「ん?本当は?第二ラウンド的にもう一回したいけど?」

「違うっ!もうヤダ!」

「あははっ、ウソだよ。今日はもうしないよ。」

そう言って笑う彰人さんの危なさに、私はこれから振り回されるような予感がしてならなかった。

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| 【恋愛】B面トライアングル | 01:44 | comments:2 | trackbacks(-) | TOP↑

COMMENT

彰人さんという人はなんと色っぽい男なんだろう・・・

セックスに対し「死」を連想する純粋な中学生が可愛いです。

続き楽しみにしてます!!

| 愚人 | 2011/07/01 20:03 | URI |

>愚人様

◆コメントありがとうございます◆
色気は大事!だと思います。色っぽうくないのは罪だ!
と、色気のない私は思います。(ということは私は罪びとですw)

中学生、かずみ頑張ってマス!
開花の時、近し?
とはいってもマトモなラブストーリーでないことは確かですww

| 玉蟲 | 2011/07/01 21:37 | URI |















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