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B面トライアングル<9>

B面トライアングル<9>【突然やってきたその日】

ずっと無言だったケイちゃんがキレ気味に言った。

「彰人さん…彰人さん、彰人さん…。
かずちゃんはどうしたって、彰人さんに反応するんだよね…。」

なんでだろう、どうしてだろう。どうやって逃げよう。どのように回避しよう。いろいろ考えることがあるのに、このドクドクとうるさい異様な動悸のせいでまともに考えることが出来ない。一体どうすればいいんだ。

「ダメだよ、絶対逃がさないから。」

ケイちゃんの様子は完全におかしい。恐ろしいとも言える。彰人さんとのことで文句の一つも言いたい気持ちはあるだろう、よくわかる。でもいきなりこういうのはないと思ってた。ケイちゃんと話す時に感じられる安心感により、私は完全に油断していたのだろうか。男はオオカミだから気をつけろと歌っていたテレビのオネーサンを思い出す。


ここはケイちゃんの部屋。さっきピエロから帰ってくる途中、彰人さんにいきなり歌を歌われたこと、そしてやっぱり彰人さんに一目惚れだったと確信したことを話した。
でもそれはやっぱりあくまで「淡い恋心」で、青春時代と言われるこの10代にはきっと誰にでもつきまとう切ないオプションのようなものだと思っているから、本気にならないように自分が必死であることも正直に言った。
できればそういう等身大な自分を素直に伝えつつ、なんでも相談しあえる仲から、少しずつケイちゃんとの恋愛を発展させていきたいと思っていたのに、なんでいきなりこんな体勢になる時間をむかえてしまうんだ。やっぱり信じられない。

これはどう考えても押し倒されていると言える状態だと思う。

どうしよう。勝手な思い込みかもしれないけど、こういうことは「じゅうろくさい」とかにならないと起きない法則がこの世の中にあると思っていた。「じゅうよんさい」には関係ないと思ってた。とにかく話をしないことにはどうにもならない。

私はこの押し倒されてしまった状態からどうにか起き上がれるような空気になることを祈りつつ、元気よく明るく、ヘタな演劇のセリフのように言った。

「ケイちゃん、まず、話をしよう。
いきなりこんなことをしてはイケナイ。」

それなのに、ケイちゃんはぜんぜん話をする気はないようだ。

「もうダメ。このままじゃ、絶対彰人さんに取られる、絶対!」

ケイちゃんが壊れた。密着しすぎているこの体勢から何が起きるんだろう。いや、起きることは一つしかないと思うけど考えられなさすぎる。

絨毯のひいてある床だけど、押し付けられるとけっこう背中が痛い。人に乗られるとこんなにも身動きがとれないものだとは思っていなかった。ドラマとか、テレビの画面でチラッとみたことあるような体勢だけど、こういうのは大人の人のお話で私のお話じゃないと思ってた。

回らない頭でいろいろ考えているうちに、私の左側の首筋あたりに、ケイちゃんの唇が当たっている。どうしよう、本気でどうすればいいのかわからない。その辺にあるもので殴ったら、殺人事件になるだろうか。あまり硬いものじゃなかったら大丈夫だろうか。

わけのわからないことを考えていると、制服のシャツの下、お腹のあたりにケイちゃんの手が移った。私はあまりに突然のことすぎて固まったように動けないでいた。ケイちゃんの手は、人に触られたことのない少しだけある膨らみ部分にまで伸びてくる。ブラジャーなんているのかいらないのかワカラナイ大変に申し訳ない胸に触られるのは、「イイ」とか「ワルイ」とかじゃなくて、プライド的に「ヤダ」というふうに区分されるようだ。

せめて、もう少し育つまで待ってもらえませんか…と、言いたいけれど、そんなことを気にしているのがバレるのはさすがにイヤすぎる。

それにしても暑い。熱い。アツイ。
汗なのか冷や汗なのか分からない汗がじっとりと背中を濡らしているのが分かる。
何か言わなくては、何か言わなくては、と焦るのに焦っているから何も言えない。ここで無言のまま事が進んだら大変なことになってしまう。

「ヤダ!ヤメロ!ヤメ…」

口が突然塞がれたことにより言葉は発せられなくなった。男女の間には、私の思い描いていない、まだ思い描けない世界があるのは分かるけど、こんな突然はいやだ。そう思うのにちゃんと逆らえていない。なんで、ファーストキスと呼ばれるものがさわやかでもロマンチックでもなく、こんな超ガッチリ固定されてて、汗でだくだくでなくてはいけないんだ。美しくないにも程がある。

しばらくお待ちください…という画面が私の頭の中に浮かび上がってきた。気持ちイイとかワルイとかそういう問題ではないけど頭は勝手に考える。気持ちイイか?と問われたら、別に気持ちよくはない。じゃあ気持ワルイかと問われたら、悲鳴を上げるほど気持ち悪いわけでもない。どうでもいいけど、キスって長いもんなんだと思った。

重ねていたケイちゃんの唇が徐々に耳のあたりに移動する。鳥肌が立つような変な感覚。気を抜くとくすぐったくなってしまいそうだ。これは本気でヤバイような気がしてきた。こんな時、女の子はどうするものなのだろう。泣いたりしたらやめてくれるだろうか。

でもどうやって?
しくしく泣くにはどうすればいいのかわからない。
泣き叫ぶほどのテンションは舞い降りない。
狂ったように暴れようとしても身体は言う事をきかない。
一体どうすればいいのかやっぱりわからない。

制服のシャツのボタンはいつの間にか、下から二つか三つくらいが外れている。私が暴れないからこんなにスムーズに事が進んでいるのは分かるけど、脳からの指令が身体に届かないから動けない。制服はかなりはだけてしまった。すっかり下着が見えている。人はみなコレが平気で、普通に何とも思わず経験するものなのだろうか。
…でも私には無理。絶対無理だ。

「ケイちゃん、ちょっと、待ってって!」

ぐるぐる考え中からやっと言葉を発することに成功したのに、ケイちゃんは、

「ヤダ。オレだってどうしてもヤダ。彰人さんに取られたくない。」

と、私の耳元で言った。声が真剣だった。胸がギュウウゥゥっと締め付けられるような感覚。今ケイちゃんがどんな思いでいるのかを考えるとなんだか苦しい。私が彰人さんに特別な感情を抱いてしまうことで、ケイちゃんをこんなに不安にさせていることも分かる。でもそれとこういうこととは違うはず。とにかく会話をしようと気合いで話しかけた。

「あ、彰人さんはちゃんと彼女いるから、だからね、私を好きなわけじゃないからね、そんな取られるとかないからさ、ちょっと落ち着こうよ。ね。」

浮気のバレだ冴えない亭主のような態度になるのはなぜだろう。そして、ケイちゃんは少しだけ起き上って私の目を覗きこむ。ケイちゃんの目が怖い。怖い目のまま淡々と答える。

「彰人さんが彼女と別れたら?かずちゃんを好きだったら?そうなってもかずちゃんはただ憧れてるだけみたいなこと言えんの?相手にされないと勝手に思ってない?好きになっても相手にされないから好きになりたくないと思ってるだけでしょ?」

ケイちゃんの言葉が痛すぎる。グサリと音を立てて胸に突き刺さった。隠しても隠しても簡単に見抜かれる、私はバカだ。もう消えてしまいたくなった。別の意味で泣けるかもしれないから、襲われてる女の子が泣くみたいに可愛らしく泣いてやろうかとも思った。でも私の表情はショックを受けてケイちゃんを睨みつけているらしく、そんな私にむかってケイちゃんは言った。

「今進まないと、手遅れになる。オレにとっては。
だからそんな怖い顔したってやめないよ。」

どうしよう、ケイちゃんは真剣だ。心臓がバクバクしてきた。せめて付き合うとか付き合わないとかそういう話にもっていけないだろうか。だって付き合ってもいないのにこれはおかしすぎる。どうにか説得しなくては。

「でっでも、こういうことは、じゅうろくさいになってから…」

目を合わせ過ぎると良くないことが起きる。動物だったら噛みつかれるのだろう。人間の男女はこんなことになるけれども。さっきより激しく唇を奪うかのようなキスで私の言葉は遮られた。

んん………

私はどうすればいいのかやっぱり分からなくなって、このまま身をまかせるしか方法はないのかも知れないと思ってしまう。こんなにくっついていても、気持ち悪くはない。ケイちゃんがどうしてもと望んでいるのなら、受けて立つしかないような気もする。

ああ、こういう行為に突入する時は、このジタバタしてる間に覚悟とかするものなのかもしれない。でも「肉体関係」を持つと考えるとそのなんとも生々しい響きに恐ろしさを感じずにはいられない。もちろん恋愛について回ることだと知っているけれども、そう簡単に心の準備はできない。だってまだ「じゅうろくさい」じゃない。恋愛なのか友情なのかもぜんぜん何にも分かってないのに、こんなところで肉体関係をもっていいのだろうか。

肉体関係と言ったら淡い恋心がアチラコチラで揺れ動くなんて言っていられない。肉体はアチラコチラで関係を持つわけにはいかないものなんだから。冷静に考えて、一生一人というわけにもいかないだろうけど、今、今は絶対一人に留めなければいけないだろう、人として。ということは、この先、彰人さんへの想いは強制的に絶たれる。

ああ、それはすごく…何だろう。これもわからない。嫌だと思うことさえもイヤだなんて私はどこまで素直じゃない人間なんだろう。彰人さんはありえないと自分に言い聞かせてもまだ、そんなことで葛藤する自分がいる。なるほどケイちゃんもキレるわけだ。

でも、絶対通らなければいけない道なら、「かかってこい、この野郎」と言うであろうはずの好奇心旺盛な自分が、迷い、恐怖を感じ、心の準備などとほざいてる時点で、おかしい。私は行為が怖いわけじゃない。その先の進むべき道が断定されてしまうことに迷いを感じているのか。

往生際が悪いということなのだろうか。
そんなことではろくな大人にならない。それではダメだ。
だったらいい加減、覚悟を決めよう。

そんなことを考えながら、ふと現実にもどってくると、先程よりも大胆に制服が脱がされていることに気付く。

大変だ。すごいことになっている。やっぱり怖くないとはいえない。女々しいけれど前言撤回、彰人さんのことを抜きにしても「かかってこい、この野郎」とは言えない。

「分かった!」

私は、脱がされてしまった自分の状態を見て更なる恐怖感におそわれてしまった。とにかくもう少し納得した状態で進めてもらおうと、強引に先に進もうとするケイちゃんに必死に抱きつきながらそう言った。

「……何が? くだらないことだったら怒るよ?」

今日のケイちゃんは怖い、真面目に話そう。

「ううん、分かった、ちゃんと進む。でもいろいろ確認しとかなきゃいけないこととかあるでしょ?ソレ、そういうの確認してから。」

組み敷かれている態勢は変わらないものの、とりあえずケイちゃんは私を覗き込むように見下ろしている。距離ができたことに少し安心した。

「確認って何?オレの気持ち?は知ってるよね。じゃあかずちゃんの気持ち?だから、ソレを待ってたら手遅れなの!もーカッコ悪くてもいいから、どうしても取られたくないの!」

「あ…そうじゃなくて、えと、まぁ落ち着こうよ…」

「何言ってんの、だからもう待たないって言ってるだろ!」

ヤバイ。今日のケイちゃんはぜんぜん話を聞いてくれない。再びケイちゃんが密着を試みると同時に、

「ヤル!ちゃんとヤルから、話聞いて!」

と、女子にあるまじきセリフを私は叫んだ。「ヤル」とかそういう言葉はキレイじゃないと思うけど、言いたいことを伝えるためにこの状況では言葉を選んでいられない。動きの止まったケイちゃんは、挑むような目で私を見ている。

「あのね、だからそのー、こういうのはね、「じゅうろくさい」とかになってからだと思ってたから実はよく知らないっていうか、勉強不足って言うか、絶対、不足してるわけよ、知識として。どこにどんなものが入るのかとか、知らないとコワイじゃん。せめて、説明してからにするとかさ…」

…………沈黙。今までに味わったことのない沈黙だった。

「あのさぁ、どんなものが入るか説明しろって、そんなこと説明してから、こういうことする人がこの世にいると思う?これから、コレ入れますからよろしくお願いしますとかっていうの聞いたことある?ないよね?おかしいよね?オレだって初めてで怖いのに…」

「え?怖いの?じゃぁやめようよ、素直に。無理はよくない。」

「かずちゃんふざけてる?もう絶対やめないからね。」

ケイちゃんは静かに赤くなって、低めの声で言った。

ヤバイ、怒らせた。すでにぐちゃぐちゃの制服を乱暴に取り去ろうとする。でも、一体どんなものが入るのかすごく気になる。私の記憶では小さい頃一緒にお風呂に入ったお父さんのブラリとしたモノと、親戚の男の子の白くて丸くて小さいモノしか見た覚えがない。大体にして、その二つが同じモノであるということさえ不思議で、いつ何時どのような変化が起こるのかさえ想像がつかない。

現在ケイちゃんは、どのようなモノをお持ちでいるのでしょうか。とは聞けない。でも、やっぱり確認したい。

「待って!じゃぁ、見せて!見てからイレル!」

私の突飛な発言にギョッとした顔のケイちゃん。
一呼吸おいて、私を見つめたまま、ちょっとイラつきを隠せない様子。

「はぁぁ???何言ってんの!」

「とりあえず、どんなのか確認できなきゃ、ヤダ!」

「ちょっと、そんなの、そういうのって有りなわけ?
なんなの、もう、かずちゃんはぁぁあ!!!!」

怒られてしまった。でも私だって相当恐ろしいということを分かってもらいたい。覚悟は決めたんだから見るくらいいいじゃないか。

「ヤル覚悟はできたから、確認したらちゃんとイレル。約束する。」

もう、どうしようもない。これも濡れ場の一つと数えてもいいですか?許されますか?と誰かに聞きたくなるような場面。

ケイちゃんは一旦私の上から離れると、ため息をつきながら、後ろを向き、ズボンのベルトに手をかけてカチャカチャと音を立てている。後ろを向いたまま、動きを止めて呟くように言った。

「ねぇ、コレ見てどーすんの……。」

「え?だから、入れるんでしょ?どっかに…。」

「見なくても普通入れられない?」

「だって、入れるモノも入れるトコロもワカンナイんだから、一つ一つクリアしてかないと、やっぱ恐ろしいじゃん。」

「でもさぁ……。」

どうにも納得がいかないような態度のまま、ケイちゃんはコチラを向いたけれど、前を手で覆っているし、その手で隠れない部分を見て推察するにまだ下着は脱いでいない。ズボンのベルトを外して、チャックを開けただけの様子。

私は、おもむろにケイちゃんの手をどけて、その中にあるナニカを覗き見ようとしたが、今度はケイちゃんが抵抗する。

「ほら、自分だって、覚悟できてないじゃん!」

「えっ、覚悟なのコレ!?」

「だって、人の服を脱がせようとするんだから自分だって見せるのが礼儀でしょ。
私だって突然で覚悟できてないから、ヤなんじゃん!」

「でも普通、そういう流れでしょ、どう考えても…。
見なきゃヤダなんて言う人いるの?」

「いる、きっと。」

見つめ合った私たちの格好はかなり滑稽だと思う。片やズボンの前を開けて、手で覆った状態、もう片方はぐちゃぐちゃに着崩れている制服を整えもしないで、一点を凝視。

でもコレを見てしまったら最後、一線を超えなければいけないとなると、今見なくてもいいような気がしてきた。見せれないなら、ヤラない。うん、よく考えたらそれでいいじゃないか。

「見せれないなら、ヤラない。
とりあえず、保留にしよう。いつかヤルってことで、ね。」

言いたいことがありそうな顔でケイちゃんは私を睨む。何かを考えている様子だ。だけど、いきなりソレを出したりはしないだろう。たぶん大丈夫。私たちはまだ、経験値のほとんどない子供なのだから。2人でもっとレベルを上げなくては前には進めないのだ。

死刑台から降りられた気分でホッとしていると、ケイちゃんは突然私の右側にドスンと座り、私の左手首をガシッと掴んで自分の方に引き寄せた。びっくりして声も出ていない私の、今度は左肩をしっかりと掴み、逃げられないように固定すると、ケイちゃんはなんと、自分の下着のゴムの部分をガバッと開いてその中のモノを私に見せた。

「ホラ!見たね!これで文句はないでしょ!」

なんということを!
なんというモノを!
なんですかソレ!
なんなんですか、その棒は!

想像を遥かに絶する、人体の不思議を目の当たりにした気分だった。今チラっと見たものは一体何であって、そしてそれを何に使用するのか考えられない。人間の身体にそんなものがついているはずがない。幻覚だろうか。それに私の身体にはそんなモノが入る装置は絶対についていない。いくら穴が開いているものだと聞かされていたって、そんな大きさのものが入るわけがないじゃないか。無理。絶対ムリ。どこにも入らないと思う。なんかの手術とかしない限り、絶対普通に考えて入れられるところなんて存在しない。

「……ムリ。」

「何言ってんの。約束でしょ。」

「…でもムリ。」

「見たら入れられるんでしょ!覚悟できたんでしょ!」

「だって、そんなのどこに入れんの!入るわけがない!
そんなの入る装置ついてない私!絶対!」

「装置じゃないの!ちゃんと入るように出来てるもんなの!女の子は!」

「そんなわけない!」

「そういうもんなの!」

「ヤダ!!!」

「ダメ!!!」

再び私に襲いかかるケイちゃんを止める術がもうない。どうしよう、見ない方がよかったかもしれないと後悔してしまった。アレをどのようにして、どこへ入れるんだと考えると、大手術を控えた患者さんのような気持ちになる。不安だ。

でも手術の人には麻酔がある。私には麻酔がない。あんなのをどこかに無理矢理ねじ込んで痛くないわけがない。そりゃ血も出るってハナシだと思った。我慢はできるのかもしれないけど、今とか、今日とか、我慢したくない。そんなの成人式とかでいいんじゃないのか、献血と一緒に。

「うわあーっ、変なとこ触るな! うぐんんん…」

ケイちゃんはとにかく私に喋らせないために口を塞ぐ。そして手がいろんなところを這っている。諦めるしかないのだろうか。諦めて覚悟を決めようと少しおとなしくしてみたら、ケイちゃんは更に勢いを増して、やりたい放題いろいろやり始める。緊張しすぎてよく動けない私は、ほとんどされるがままだ。するりと下着を取られてしまった。

熱が伝わってきて頭がおかしくなりそうになる。鳥肌に似た感覚も快感と関係があるのだろうか。私が何かを堪えるような小さな吐息を漏らす度、ケイちゃんの手に少し力が入る。おそらくケイちゃんも緊張している。

文句がないなら別にいいけれど、本当に申し訳ないとしか言いようのない胸だから私が悪いわけではないのに謝りたいような気持にもなる。それでもそこにケイちゃんの手は触れる。汗ばんでじっとりとしているのが分かる。緊張とこのぎこちなさはお互い様だから、まだ許されるような気がするけどなんで私が自分の身体のことで申し訳ない気持ちにならなければいけないのかと思うと少し腹立たしい。鳥肌と格闘しているかのようなこの時間。じっくりと先に進もうとするこの恐怖感から逃れたいから、この恐ろしいと思う時間を減らしていただくためにも、いっそのこともう入れてみちゃった方がいいのではないかとまで思った。

でもそんなワケにはいかない。
何事にも行程というのがあるんだろう。

辿々しくも、少しづつゆっくりと進んでしまう。まるで、二人で真夜中の海に冒険に出かけた時のように、くだらないことを話しながら真っすぐ進んだ時のように、手探りで、真っ暗で、見えないから暗闇が少し怖くて、それでも二人だと楽しくて、何かに挑む、2人で挑む、そんな気持ちになった。

だけど、自分の身体の感覚がよくワカラナイ。人に触られるとこんなふうに鳥肌が立つなんて知らなかったし、まだ、ちょっと知りたくなかったかもしれないのに、ケイちゃんが勝手に進む。

自然に閉じてしまっていた目をゆっくり開けるとケイちゃんの部屋のドアが目に入った。ふと、ここで彰人さんに会った日のことを思い出してしまう。ケイちゃんと抱き合っているのにまだ未練が断ち切れていないらしい自分がこの後いなくなるなら、これも必要なことなのかもしれないと思った。体の緊張とは裏腹に頭の一部が妙に冷静だ。研ぎ澄まされすぎていて、究極の緊張状態だからこその冷静。もう後戻りができない。

「あっちょっと…何して…」

思わず声にしてしまう程びっくりな行程に入る。先程のアレを、挿入するであろう場所にケイちゃんの手が触れた。怖い、どうしよう、さっきから無言のケイちゃんが恐ろしい。ケイちゃんは、おとなしすぎる私をギュッと強く抱きしめて、

「すごく、好きだから…。」

と、震える声で、言った。

「…うん。」と答えるのが精一杯だった。

その直後、その挿入場所にケイちゃんの指が入って来た。

「い、痛い…。」

指は1本?嘘みたいに痛いけど、本当に1本かと聞きたかった。

「ごめん…ゆっくり入れるから…」

1本でこれだけ痛い。ということは、問題は先程みたあの人間の身体にあるまじき、棒だ。私はこの時、あれが「肉棒」と呼ばれていることを知らなかったけど、後から知って妙に納得してしまった、「ああ、本当に肉の棒だ。」と。

とにかくゆっくりと入ってくる指でさえ、我慢しなくてはイケナイ痛みが生じる。もうしがみつくしかない。ケイちゃんは私が小さな悲鳴をあげるたびに、大事なものを抱えるように抱きしめている腕に力を入れて、優しくキスをした。

どのくらいの時間がたったのか、時間の感覚がわからない。私の身体はすっかりケイちゃんの手に委ねられていて、でも決して気分が悪いわけではなかった。快感とは何なのか…は、まだよく分からないけど、でも身体は勝手に準備ができるものらしい。自分でも知らなかった体液のようなものを、ケイちゃんに出させられているのがちょっと不思議だった。それからやっぱりケイちゃんは男なんだとも思った。

痛みも最初に比べると少なくなっていた。「濡れる」というのは本当だったんだと、こんな時に思っていられるくらいの余裕が出てきた。そんなことを考えていると、ケイちゃんがフワっと、私の身体から離れた。

何をするのかと思っていたら、ゴム。なるほど、ソレをちゃんと用意しなくてはいけないわけだ。まだ見たことがないけれど、一体どんなものなのだろう。まさかソレも今詳しく見せてくれというわけにもいかない。でもケイちゃんはそんなものをどこで入手したのだろうか、不思議だ。

ああ、もう準備がそこまで来ている。大手術が行われてしまう。悲鳴をあげたらどうしよう。痛すぎて暴れないだろうか。

ゆっくりと私の上に戻ってきたケイちゃんは、

「入れるからね?」

と、私に確認をとった。優しく、いたわるかのような声で。

私は、ケイちゃんを上目遣いで見つつ、ほとんど反射的に

「ヤダ。」

と言ってしまった。意味のない反抗には、なんの意味があるんだろうと思いながら。

「でもダメ。もう、入るよ…。」

と、少し意地悪な言い方をするケイちゃんの微笑と共に、激痛が走った。

「っく…いっ痛ぁっ!痛い!ムリ!っはぁっ、はぁっ、はぁっ…」

やっぱり痛い。ナニコレ痛すぎる。そうか、分かったぞ。ハァハァ言うのは気持ちイイからじゃない。痛すぎるからだ。

「ぅう~…ムリぃぃぃいたぃぃぃ。」

「でも…動くんだよ?これから。」

「はぁっ、ムリ、ダメ、動いたら死ぬ。マジで、も、抜いてっ。」

「…ゴメン…もう少し我慢して…?」

ケイちゃんはそう言って、ゆっくりと動き出す。私は裂けそうな感覚と痛みに耐えるので精一杯で、暴れだそうにも力がはいらない。というより、力が入りすぎてて、固まっているような状態。

「かずちゃん、も、少し…力抜いて…。」

「ムリ。いっいたっ苦し……動くの待った、ムリ、ホントムリ、もうヤメロ。」

性行為とは大変だ。とても気持ちのいいものとは思えない。これがいつしか気持ちよくなるなんてぜんぜん考えられない。痛すぎて、圧迫感がありすぎて、これは肉体に無理なことを強いているようにしか思えない。コレを好きな人のために我慢するわけだとしてもよっぽど好きじゃなきゃ無理だ。

ケイちゃんが好き…だと思う。だから今、すっごく我慢してるけど、
でも、痛い。痛すぎて腹が立つ。もう限界だ。

「痛いっ、もうヤダァァァ、はあっっ、はぁうぅぅ…うぅっううううー。
ムリ!抜いて!抜いてくれなきゃ、もう嫌いになるからぁぁあああ!!!」

「何言ってんの、もう少しだけ、我慢して!」

「ヤダぁ、っはぁ、も、今日はっ、ここまでに、しよ……お願い…。」

「ゴメン…もう少し…我慢して。」

「痛い。嫌い!もうやだ!やだぁぁぁ!」

涙目で抗議する私に、動きを止めるケイちゃん。ギュゥっと抱きしめられたけど、その前に、抜いてくれ…早く!

「どうしても、もうダメ?」

小さく甘い声でケイちゃんが言った。

「だって、痛くて死にそうなんだよ!ここまでヤッタんだから、もういいじゃん。しっかりもったよ、肉体関係。すっかり恋人どうしだよ!だから早く抜いて!お願い抜いて!今すぐ抜いて!」

諦めたような顔をして、ケイちゃんはゆっくりと抜いてくれた。助かった。助かってないけど、助かった。挿入時間はそんなに長くはなかったのかもしれないけど、地獄を見たような気分だった。これが初体験ということか。こんなに地獄だとは知らなかった。恐るべし性行為、もう二度とやらなくていい。そして、自分のアソコにものすごい違和感が残ってる。アレを入れたんだからスゴイ。人体の不思議は想像を絶していた。

若干放心気味に、いろいろ思っている私をケイちゃんはそっと抱きしめた。

「あのね、オレはね、すごくすごーく好きなんだよ?」

「ええっ!?……セックスするのが????」

「ちがうっ。何言ってんのもー、かずちゃんがっ。」

「あ、う、うん。知ってるよ。あーびっくりした。」

頭の中では初めての体験に関していろいろ考えているから、トンチンカンなことを言ってしまった。ケイちゃんが求めているのはそういう肉体的な繋がりだけではないのはよくわかる。

「もうダメだからね、他の男を好きになったら
それって浮気だから。」

「分かってるよ…。」

「彰人さんには、ちゃんと付き合ってるって言うから。
もうヤッタっていうから。愛し合ってるって言うから。」

「えーっ、そ、それはやめようよ、ヤッタとか恥ずかしいからヤメテ。」

「ダメ、彰人さんには言う。」

どうしても彰人さんから遠ざけたいのは分かるけど、こんな数秒の出来事で愛し合ってると言ってもいいのだろうかとも思った。それから今後は当分愛し合えないこともちゃんと言っておいた方がよさそうだ。

「でもさぁ、痛すぎてもうできないよ?次は一年後とかでいい?」

「一年後?一年後はなくない?
こういうのはきっと何度かしないと成功しないんだよ。」

「でも死ぬほど痛いんだよ?無理だよ。」

ケイちゃんは抱きしめていた腕を少し緩めて私の顔を覗き込んでから、
「まぁ、いいけどね、浮気しないんだったら。」とため息混じりに言った。

でも「浮気」と言うけれど、私はまだ付き合っているとは思ってなかったし、付き合ってくれと言われてない。

「…ケイちゃんそういえば、私に付き合って下さいとか言ってないよね。」

「あっ、そうだった、ごめん。付き合って下さい。」

言うのを忘れていたくらい、ケイちゃんもいろいろ考えていたのだろう。急いで交際を申し込むセリフを真顔で言うケイちゃんが可笑しかった。私たちは顔を見合わせてくすくすと笑ってしまっていた。

人体の不思議は置いといて、ケイちゃんと一緒にいるのは心地いい。とにかく痛かったけど、今後の気持ちの浮つきは「浮気」とみなされてしまうらしいけど、ある意味これで気持ちの踏ん切りもついた。このまま彰人さんのことも平気になればなんの問題もないのかもしれないと思えた。よく考えたら、ケイちゃんとヤッタことになるのか、エロイ響きだけど内容はそうでもないと思った。

「かずちゃん、キスしていい?」

「えっ、……キスだけ?」

「うん。」

「だったらいいよ。」

さっきとは違う優しいキスをするケイちゃんに、こういうファーストキスがよかったと、言ってやりたくなったけど、でも、今すごく気持ちイイから許してあげよう。

「そろそろ兄貴帰ってくるんじゃないかな。その前に服着なきゃ。」

いろんな余韻に身体が放心しているような、気だるい空気をまとう私を置いて、ケイちゃんはしっかり現実に戻って行く。それをなんだか寂しいと感じるのはなんでだろう。切なさが残るこの瞬間はとても儚いもののように思えて、それがかえって愛しいと思った。だからつい、ケイちゃんをじっと見つめてしまう。

「かずちゃん、そんな目で見ないでくれる?」

「えっ?は?見てないよ。」

見つめていたのがバレると、少し焦ってしまった。

「…どんな目だって、今はヤバイんだけどね。
かずちゃんは分かってないよね、ぜんぜん。」

ため息混じりにそういうケイちゃんが少し大人っぽく見えた。

私とケイちゃんは明日学校で会ったら、どんな顔するんだろう…。


この日はいろんなことがありすぎて、一気に進みすぎてもう頭はパンクしそうだったけど、彰人さんのことを考えている余裕はなくなった。それにしてもケイちゃんがこんな大事件を起こしてしまう人だったとは予想外。でも彰人さんのことはもう考えないようにしようと思った。

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| 【恋愛】B面トライアングル | 02:23 | comments:2 | trackbacks(-) | TOP↑

COMMENT

このH度って心地良いですよね。
色々と想像させられるんですよね。
痛い、怖い、と拒否しながらもケイちゃんを受け入れるかずみちゃんが可愛いです。
そしてHです。
行為後の「あっ、そうだった、ごめん。付き合って下さい。」が好きです。
このシーンって、一見ソフトですが、よくよく考えるとかなりエロいですよね。
ヤっちゃってから、女の子から「そういえば、私に付き合って下さいとか言ってないよね。」って聞く所なんてカワイイしエロいし、うん、ブンガクですね。
次回を楽しみにしております!

| 愚人 | 2011/06/29 20:10 | URI |

>愚人様

◆コメントありがとうございます◆
心地よいH度指数、表現できていたら幸いです。
しかしこの中途半端、慶太には大変申し訳なく思いながら書かせて頂きました。(こういうのは先っぽだけ事件と言う)
心と身体のバランスが難しい年頃ですから、表現も難しいです。どうか可愛らしい2人を見守ってやってください。と、言いつつも、三角関係ですから、そういうわけにもいきません。
ストレスのかかるブンガクになりそうですw
今後もよろしくお願い致します。

| 玉蟲 | 2011/06/29 23:35 | URI |















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