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サハラの力

「お前はオレをバカにしているのか!」と、言う男に、言い訳するのが面倒で結局「そうだよ。」と言った。

恋愛中というのはきっと特殊な何かが脳内に充満しているから多少のことが我慢できる。多少のことが。しかし、脳内の特殊物質は絶対に長持ちはしないからすぐに「多少」が許せなくなってどうでもいいことで嫌いになれてしまう。一瞬で。

若い頃の恋愛でそれを学び「本当の愛」とやらを理解するのだと恋愛の本に書いてあったけれど、それにしてもその恋愛の本はバカらしい内容で、書いたヤツの顔が見てみたいと思うほど面白かった。まぁそんなことはどうでもいいから今はこの状況だ。私が彼をバカにしていることについて思い切り肯定してしまったのだから今後の展開は平和には終われないだろう。目の前の彼の目はまぎれもない怒りの目だし、わなわなと何かを我慢しているように小刻みに震えている。

「あのさぁ、私ね、なんでもかんでもあんたより出来ないフリすんのはもう疲れた。楽かと思ったけどイラっともするんだね。その単調な頭の悪さはもう飽きた。もっとバカな女を探しなさい。私はいちぬける。」

ついつい追い打ち風味なことをいやらしく言ってしまうのは私の癖で、いい人の仮面を外した私の性格は自分でも最悪だと思う。彼は当然私の頬を思い切り平手打ちした。ものすごい勢いでベットの上に投げ出された。一瞬、バキっという音がしたからベットの一番下のすのこのような部分が折れてしまったみたいだった。

それから彼はテレビの横の棚に置いてあったウィスキーの黒い瓶を右手に持ち、テレビをガシャーンと殴りつける。テレビとウイスキーの瓶は同時にガラスの先端がキケンな危ない物体へと変わった。

さすがにこれはまずいのではないだろうか…逆上した好きでもない男に殺されるのはイヤだ。ここは戦うしかないのだろうか…。

そんなことを考えていると彼は突然獣のような雄叫びをあげ、暴れだした。そこまで部屋の中をぐちゃぐちゃにするのはさぞかし気持ちいいだろうと思えるくらいに、ありとあらゆるものを割れたウィスキーの瓶で殴り倒していた。まるで何かの撮影現場のようだけれどもここは撮影現場ではない。私の部屋だ。壁紙もぐちゃぐちゃにしているが、はたして弁償額はどれくらいになるだろうかと考えると頭が痛くなってくるのが分かった。

痛い頭で考える。本当にこれからどうしようか、と。

でもさすがに彼は私を殺す気はないようだ。攻撃は私には向かわない。ひたすらモノにあたっている。テレビは完全に壊れた。でも私はテレビは見なくても平気だから、新しいのを買わなくてもいいだろう。ベットも壊れたようだけど、マットがあるからきっとどうにかなる。ウィスキーは貰いものだけどちょっともったいない。ワンルームだからすぐそばに玄関の扉があったことを恨みそうだ。扉が壊されてしまった。これはきっと高い。いつになったら気がすむんだろう、いいかげん疲れないだろうか…。

「うわぁああああああ!俺は本当におまえが好きなのに!失いたくなんてない!!!」

彼は泣いていた。

私はなんて残酷な人間だろう。きっと世の中の全ての人に最低だと言われてしまうのだろう。でもどうしようもない。頭の中をのぞかれたら殺されても文句は言えないくらいに不真面目だ。それは分かっているけれど不真面目さを取り去ることはできない。好きでそうなるわけじゃない、そんなふうにしか思えないんだから仕方ない。

泣いて暴れる彼を無言で見ている不真面目な私だけれど、それなりに心は痛む。こんな可哀そうな状況にさせてしまったのは私なんだから。そして思わず目を背けてしまった。目を背けた先はものがバラバラに散らばった床だった。

するとそこに小さな小瓶が転がっていた。たしかあれは友人に貰った「サハラ砂漠の砂」だ。私はサハラ砂漠には行ったことがないけれど、赤茶けたサラサラの砂が小瓶の中でうねるように小さな砂丘を作ると、その閉ざされた小さな世界に脳波が入り混でいくようで気持ちが良かった。サハラ砂漠の砂が実は猛毒の砂でこれを全部飲みこんで即死できたらいいのにな…と思った。

泣いている男が可哀そうだからじゃない。これから起きる避けられない事態が面倒すぎて、死にそうになったから。

今はこうやって暴れているから彼は気づかない。天井にあるロフトの入り口がさっきからガタガタと動いていることを。彼の気がすんで静かになったら気づくだろう。そうなったらもう終わりだ。面倒すぎる、最悪だ。

ロフトにもう一人、男がいる…。
彼がこの部屋へ乗り込んでくる直前に天井裏のような物置のロフトに隠した男。



その後、私が避けたかった面倒すぎる最悪の事態は予定通りにやってきた。ぐちゃぐちゃのバラバラの部屋では更に乱闘が起き、大金をお支払いして引っ越しもしなければいけないだろう。その前にこの殴り合いでどっちか死んじゃったりしないかな、本当に大丈夫?


私も巻き込まれて、頭の打ちどころが悪くて死んじゃうかもしれない。だけど、そんなつまらない死に方をするんだったらせめて死亡解剖した時の胃の内容物が「サハラ砂漠の砂」だったりしたらちょっとはすくわれるのかな。謎の死になっちゃうかな。調べた人はびっくりしちゃうかな。せめてそれくらいの楽しみを想いながら今、この時を過ごしてもいいかな。

大きな物音は頭の中でだんだんと小さくなってきた。大きい音なのは分かるけれど私の頭の中で遠くの音のように変換されている。そして小さな小瓶のコルクを開け、赤茶けたその砂をじーっと見つめてから上を向いて口を開け、サラサラと静かに口の中に入れた。全部入れた。






うおぇええええええええ。



本当に毒としか思えないほどのまずさ。変な薬品がついているのは確実な味。これは絶対自然の砂の味じゃない。化学薬品の味だ。マジで死ねるかもしれないけど、、、



おえええええっ、うぉえええええええっ



吐き気が止まらずに部屋の隅でゲロ吐きしている私に、もみ合っていた二人が気づき、乱闘騒ぎがおさまった。

その後、大量の水を飲まされ、砂をキレイに吐き出すまで二人の男は私の背中をさすっていた。





終わり(実話)
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| 【短編恋愛】 | 02:30 | comments:2 | trackbacks(-) | TOP↑

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